八神りなの陰鬱

ようやく説教が終わった。時計の針が一順し次の日の朝を迎えようとする頃。八神りなは自室のベットに寝転んで今日のことを思い浮かべる。狭い室内の中で父に怒鳴られる自分、そして将来の八神が心配だと嘆く一族。口々に漏れ聞こえるため息。跡取りとしての重責。この家にいると全てが窮屈だ。嫌気がさす心を宥めるようにりなは深くため息をつく。ここでは私は、自分という存在ではなく跡継ぎという肩書でしか見られていない。もっと外に、開けた場所に出て誰かに認められ、そして一人の人間として接してもらいたい。そんな孤独にも似た焦燥が自身の心を覆いつくしているのをひしひしとりなは感じる。

「私だって自由に行きたい」

目に涙を浮かばせりなはそっと目を閉じる。その声は誰からも聞かれることなく暗い闇の中に吸い込まれた。



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