第18話 襲われない?

 臨時の職員会議で、校長に下校中の生徒の見回りを頼まれた俺。1人だと退屈だし俺が不審者に間違われる可能性があるので、早川さんに協力してもらおう。


退勤して家に着いてから、彼女に〇インでその旨を伝えたところ『良いよ~♪』と返事が来た。今度はそれをA組のみんなに伝えよう。



 翌日の朝のホームルーム。俺は教壇に立ってから、昨日の話を切り出す。


「ここのところ、学校周りに不審者が出るらしい。みんな気を付けてくれよ!」


俺が不審者扱いされたショッピングモールの件は言わない。その不審者は2度と現れないからだ。


「磯ちゃん。その不審者の特徴は?」

篠崎さんが質問してきた。


「20~30代の男性で、上下とも黒っぽい服装だそうだ。学校を覗いたり、下校中の生徒をジロジロ見ていたらしい」


「それ磯ちゃんじゃないの? そのスーツ黒いし…」


は違うから!」


「そっち?」


マズイ、みんなキョトンとしている。失言してしまった。


「(咳払い)。この件の対策として、俺が下校中のみんなを見守る事にした。サポーターとして、早川さんにも協力してもらうからよろしくな」


「颯くん、どうしてはーちゃんなの?」


今度は佐宮さんか。普段はみんながいる場で質問するタイプじゃないのに…。余程気になるのか?


「早川さんは徒歩通学してるからだよ。学校から近い人は時間の融通が利くからね」


この説明で文句を言われる事はないはずだ。


つむぎ。先生と2人きりになって大丈夫?」


長田さんは何を気にしてるんだ?


「急にどうしたの? なーちゃん?」


「先生は〇リキュア好きのロリコンじゃん。2人きりになったら何されるかわからないよ?」


俺から手を出す訳ないだろ!? 〇リキュアの件はさっさと忘れて欲しいんだが…。


「心配してくれてありがと。何かあったら、颯君の股間を蹴って逃げるから大丈夫だって」


「遠慮なく蹴るのよ」


女子2人が男にとって恐ろしい話を平然としている。蹴るなんてもってのほかだ! はデリケートなんだぞ!


「とにかく、登下校は不審者に気を付けてくれ。次は…」


それから少し話し、朝のホームルームは終わりを迎える。



 時間はあっという間に過ぎ、帰りのホームルームを終えた。教室に残る生徒がいれば、早々に帰る生徒もいる。そろそろ見回りを始めよう。


「颯君。カバンはどうすれば良いの?」

俺のそばに来た早川さんが訊いてきた。


「持ってたほうが良い。教室に置いておくと盗まれるかもしれないぞ?」

それに戻る手間が生まれてしまう。


「わかった。持ってるね」


「後で校門で待ち合わせよう。…良いよな?」


「もちろん」



 準備をしてから校門に向かうと、早川さんは既にいた。


「すまない、待たせちゃったか?」


「ううん。今来たところ」


「そうか…」


「このやり取り、恋人の定番だよね~♪」


俺は早川さんに何度もしてもらっている。そんな彼女から“恋人”というワードが出ると、色々考えてしまう。


「ここから○○駅ルートを見守るんだよね? 颯君?」


「そのつもりだ。まだ手探りだから、今後は変えるかもしれないが」

校長の思い付きにも困ったものだ…。


「ふ~ん。それじゃ行こっか」



 学校から○○駅ルートは歩道が広いので、俺と早川さんが並んで歩いても余裕だ。前には、話しながらゆっくり歩いている数人グループがあちらこちらにいる。


…さっきから気になるのが、一部の生徒のスカートが短い。どう見ても校則の“膝下”じゃないぞ。学校を出てから短くしてるようだ。


「颯君、さっきからスカートガン見し過ぎじゃない?」


「だってあれ…」


「朝言ってた不審者って、颯君の事じゃないの?」


これ以上俺の株が下がる訳にはいかない! 誤解はすぐ解かないと!


「それは絶対違う。だって俺が帰る時に生徒はいないんだから」

部活がある生徒より退勤は遅いのだ。


「じゃあ休みの日は?」


「買い物はネットで大体済ませるから、休みはほぼ家にいる…」


「それ、別の意味で不審者になりそうだよね」


早川さんの辛口コメントを聴いてすぐ、目的の○○駅に着いたのだった。次の行動は彼女と相談しよう。

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