第17話 不審者に用心せよ!
早川さん・佐宮さんに尾行を白状した俺。2人は許してくれたものの、おしおきを考えているらしい。一体どういう内容になるんだろう…?
その日の放課後。帰りのホームルームを終えた俺は、すぐ職員室に向かう。朝の職員会議で、校長が臨時の職員会議をすると言ったのだ。
朝話せば良いのに…。なんて疑問を抱きながら、職員室に入る。
職員室に教師全員集まった。前にいる校長以外は、デスクに座っている状況だ。
「本校近辺で、不審者情報が2件寄せられました。1件は朝の段階で話せたんですが、もう1件の続報が先程届いたのでお伝えします」
「2件…、近頃は物騒ですな」
教頭が独り言を漏らす。
この学校の校長と教頭は共に男なんだが、校長のほうが若いというレアケースになる。校長が50代前半・教頭が60ちょっとだったかな。
「1件目は、この間の3連休の土曜日になります。□☆駅近くのショッピングモールにいたようです」
ん? それってまさか…。
「外見は20~30代の男性で、黒い帽子に白いマスクを着用。女子高生らしき2人を尾行するような不審な動きがあったそうです」
間違いない、俺の事じゃん! 不審者扱いされてるの!?
「まったくけしからん! 磯部先生を見習って欲しいですな!」
教頭が余計な事を言ったせいで、教師全員の視線が一瞬俺に集まる。すごく気まずい。
「2件目は、本校を覗いたり下校中の生徒をジロジロ見ていた事が何度もあったとか…。特徴は先程と同じく20~30代の男性。上下共に黒っぽい服装みたいです」
良かった、それは絶対俺じゃない。退勤する時に生徒を見かけないからだ。
「生徒達が心配ですね…」
俺の隣のデスクの村松先生がつぶやく。
「村松先生のおっしゃる通りです。女子高生は多感な時期なので、男性の視線に敏感になりがちです。生徒を守るのは教師の役目なんですが…」
何か問題があるのか?
「本校は女子校なので、女性の先生が圧倒的多数です。男性も私や教頭のようなおじさんが多く、若い不審者を相手にするには大変でしょうね…」
それはわかるんだが、何で校長は俺を見る?
「そこで、本校唯一の若い男性の磯部先生に頑張ってもらおうと思います」
急に何を言い出すんだ!?
「ちょっと待って下さい校長。俺は何をすれば?」
「本校の生徒の通学方法で一番多いのは“電車通学”です。なので、ここから最寄り駅の○○駅までの間を見守ってもらいます。お願いできますか? 磯部先生?」
再び教師全員の視線が俺に集まる。こんな状況で断れるか!
「…わかりました、何とかやってみます」
自信のなさ・やる気のなさを一応強調しておく。
「ありがとうございます! もし磯部先生お1人で不安なら、徒歩通学の生徒に協力してもらっても構いません。確か…、2ーAには数名当てはまると記憶しています」
俺がわかるのは早川さんだけだが、他にもいるのか…。担任であっても生徒の個人情報は最低限しか知らない。
「磯部先生。任せましたぞ!」
教頭の念押しの後、臨時の職員会議は終わりを迎える。
それから職員室で雑務をこなした後、俺は退勤する。見回りの件は早川さんに声をかけておこう。受けてくれるかはわからんが…。
1人で見回りは退屈だし、また不審者に間違われる可能性があるからだ。あんな風に報告に上がるって事は、あの時の俺は相当怪しかったんだろう。
生徒が見守る俺が怪しまれるのって、“ミイラ取りがミイラになる”みたいなものだ。それだけは絶対に避けないと! ただでさえ、A組のみんなに『〇リキュア好き』扱いされて株が下がってるのに…。
これ以上の汚名は勘弁だ! そう決意しながら帰路に就く。
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