第10話 ドキドキの瞬間

 俺が作った炒飯をおいしそうに食べてくれた早川さん。腹ごしらえが終わったので、いよいよサブスクを用いての映画やアニメ鑑賞会が始まる。



 「サブスクって色々見られるけど、颯君は何を1番見るの?」

ノートパソコンを操作中、隣にいる早川さんが訊いてくる。


俺は普段、サブスクを見る時だけモニターに出力する。ノートパソコンの画面で鑑賞するのは辛いからだ。ましてや今回は2人だから欠かせないだろう。


「アニメだな。30分で見られる気軽さが良いんだよ…」

映画は祝日じゃないと観る気がしない。


「それって、萌えキャラがいっぱい系のアニメ?」


彼女はニヤニヤしている。俺をからかう気満々だな。


「…そういうのも観るが、他のも観るからな!」

ここで補足しないと変態と思われそうだ。


「別に強がらなくて良いのに~」


この態度、絶対わかってないな。仕方ないから視聴履歴で証明だ!


「今から視聴履歴を見せるから。……ほら、アニメもあるが洋画もあるだろ? 萌えアニメだけ観てる訳じゃないんだ」


これでわかってくれる事を祈ろう。


「颯君が必死になっててウケるw」


「………」

この空気は困るな。さっさと変えなくては。


「そんな事より、何を見るか決めよう。俺と早川さんが交互に決める感じでどうだ?」


「良いよ~」


話がまとまったので、俺は作品を選ぶ事にした。どれにしようかな…。


少し悩んだが、今クールのアニメ1話を観る事にした。先入観や前知識がない状態なら、早川さんと感想を共有できるだろう。


「これにするよ。良いかな?」

作品詳細とストーリーを彼女に見せる。ジャンルはコメディのようだ。


【女子校に進学した帆水 鈴と染川 風花は幼馴染。同じクラスになって2人はとても喜んだものの、その高校には“変な校則”があって…】


「へぇ~。女子校の話か~。この変な校則って何なんだろうね?」


「俺も気になるからこれにしたんだよ」


「そっか。じゃあ早速見よう」


俺達は隣同士でアニメを鑑賞する…。



 「これ、エロアニメじゃん!」


1話を見終わり、俺も早川さんと同じ感想を抱いた。変な校則の正体は“胸を見せ合う”事だったのだ。顔を赤くしながら胸を見せ合う帆水さんと染川さんに萌えた。


「颯君、A組のみんなにもああして欲しいの?」


「違う! そういう作品だとは思わなくて…」

1人なら喜んだのに、早川さんと一緒だから気まずい。


「あたしはレズに興味ないな~。颯君が気になるならこっそり教えても良いけど…」


「教える? 何をだ?」


「さっきのアニメほどじゃなくても、レズっぽいかも? と思う2人がいるの。颯君がそういうのが好きなら話しても良いよ?」


それを聴くと2人の印象が変わりそうだ。卒業までA組のみんなと過ごすんだから、知らなくて良い事はスルーしよう。


「いや、その話は聴かない」


「わかった。…次は何観るの?」


「次は早川さんが選ぶ番だろ? 遠慮なく選んで良いから」

そういう風に決めたはずだ。


「あたしはパス。だから颯君が選んで」


パスありなんて決めてないぞ…。なんてツッコミは野暮か。


「そうか、だったら今度は洋画にしよう。…これはどうだ? 有名なシリーズでカーアクションなんだが…」


「〇イルド・スピード? 知らないな~」


「そうか…」

女子には厳しいジャンルだったか?


「でも良いや、それにして。わからない事があったら訊くから」



 映画が終わるまで、俺と早川さんは一言も会話しなかった。カーアクションは観てるだけで面白いし、難解な要素がなくてのめり込みやすい。


「終わったか。次は何を観る…」


そう彼女に訊こうとした時、急に俺の肩に寄りかかってきた。


「zz…」


可愛らしい寝息が聴こえる。食後は眠くなっても仕方ない。


これからどうしようかと悩んでる時、ある邪な考えが浮かぶ。


今なら彼女の胸を触れるんじゃないか? 裸はダメと言われたが、触るだけなら…。


“ほんの一瞬ならバレないだろ”という気持ちと“俺から手を出すのはアウトだろ”という気持ちがぶつかり合う。一体どうしようか?

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