小学生が給食に苦悩する話

タヌキング

給仕された食事

私の名前は谷山 瑞樹(たにやま みずき)小学三年生の女子児童である。

自他共に認めるごく普通の一介の小学生だが、一つ他と違う点といえば学校の給食に他人より明らかに不満が多いということである。

だが学校の給食に盾突いて、私個人の力で勝てるわけが無い。もしかすると給食を裏で操る秘密結社に命を奪われる可能性もある。ゆえに今日も不満を心の中で愚痴るのである。


「はい、それでは皆さん。いただきます。」


『いただきます‼』


年配の担任の女教師の号令で、クラスメート達は一斉に給食を食べ始める。皆は何も感じないのだろうか?今日の給食がおかしいことに。

ご飯に牛乳、そしてチクワサラダにひじきの煮物、うんうん、これは良い例題が来たな。だが私からすれば赤点の給食である。


「どうしたの?みずきちゃん食べないの?」


「えっ、あっ、た、食べるよ。うわぁ‼美味しそうだなぁ‼」


隣の由香里(ゆかり)ちゃんに不審がられてしまった。ちゃんと演技でも良いからアホな小学生のフリをして給食を食べねばならんか。

だがしかし、このチクワサラダはなんだ?私は薄く切ったちくわの触感が嫌いである。なんか生理的に嫌なのである。他の魚の練り物は大丈夫なのだがチクワは駄目だ。ギザギザしている部分が舌に触れるだけで不快な感情が私を襲う。

そもそもサラダにチクワを入れる必要が何処にある?酢豚にパイナップル、ハンバーガーにピクルス論争には別に興味は無いが、サラダにチクワを入れて誰が幸せになると言うのだろう。せめて別に出せ。チクワ一本物で出してマヨネーズで食べればいいじゃないか。わざわざ薄く切ってサラダに混ぜる必要が何処にある。

私はイライラしながらサラダをかっ込んだ。


「ミズキはいつも食べるのは早いよな。よぉし俺だって‼」


私の目の前の席の前田(まえだ)がそんなことを言いながらガツガツ食べ始めた。本当にバカな小学生だ。こんなことで張り合ってどうする?汚い食べ方されると、ただでさえ少ない食欲が更に少なくなるじゃないか、やめてくれ。

喉が渇いたから牛乳を飲まないといけないが、これもおかしいだろ?ご飯のお供はお茶に決まってる。牛乳+ご飯なんて、やっている大人を見たことが無い。牛乳飲んで栄養を取らせるのが目的だろうが、それなら給食にチーズでも追加すれば良い。わざわざ飲み物を犠牲にしてまで牛乳を飲ませる暴挙に憤りを感じずにはいられない。

さて、メインディッシュのひじきだが、これに関しては多いとしか言いようがない。ファミリーレストランなんかでひじき出る時、こんなに大量に出てきたとこを見たことがあるだろうか?恐らく無いだろう。ひじきは出て来るなら小鉢で充分。ご飯との相性もお世辞にも良いとは言い難い。正直、こんなに食べると飽きて来るし、私は吐き気を催す。これでご飯を食べろって言うんだから、最早拷問である。

大量に残ったひじきは何処に行くのだろう?恐らく豚などの家畜の餌だろう。

美味しいカレーはメチャクチャ少なくて、かけても白いご飯を隠しきれないというのに、この量の差は一体何なんだ?

あと、これは豆知識だが、ひじき自体には鉄分が無いらしい。鉄分があると言われていたのは、昔は鉄鍋でひじきを煮ていたから、それでひじきに鉄分が出ていただけの話である。おっと、知識のアウトプットに付き合わせてしまって大変すまない。



今日はご飯なのが唯一の救いだ。学校給食にパンが出るのは敗戦後の日本がGHQから命令されてのことだという。アメリカは自国の小麦を日本に使わせたかったのだろう。上手い様に使われているな日本。おかげでご飯派の私はパンが出る度に苦虫を噛み潰したような顔をしなければならない。だが、クラウムチャウダーにパンを浸して食べるヤツは美味しいのを認めざるをえない。なんであんなに美味いのだろうか?


私が長々と給食ディスを決めてしまい、不快に思う方も居るかもしれないが「給食センターの人がアナタ達のことを想って作っているのよ‼」なんてヒステリックに言うのだけはやめてくれ。給食センターのオバちゃん達は金を貰って給食を作っている。だからいくら私達の為と言われてもピンと来ない。大体のオバちゃんが給食を作るのは、自分達の生活の為が第一優先だろ?それが前提であるのに、第三者から如何にも無償で作っている風に言われるのは納得がいかない。

実際に給食のオバちゃんに作る理由を聞いたら「えっ?金の為だよ。」ってラッキーストライクを吸いながら言うかもしれないじゃないか。


よし、そうこう考えている内に今日も食べ終えた。いやぁ、厳しい戦いだった。


「ごちそうさまでした。」

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