第6話 浮気男の堀道くんと二股相手の江波さん【二股男の堀道視点】

『堀道くん。それでね、来週の水曜日に友達と自然公園で走り込みをするんだ。ほら、ランニングコースのある……』


 とあるホテルの一室。オレ堀道はベッドに腰掛け、電話越しで明るく声を振りまく彼女三ヶ島陽歩の話に耳を傾けていた。


「あはは、知ってるよ。さっきもメッセージ来てたし。相変わらず陽歩は頑張り屋だなぁ」

 

『うん、秋の大会もあるし練習はサボれないもん。前の試合でも2着だったし、くよくよしてられないから。堀道くんもごめんね、彼女らしいことが出来なくて……』


「気にする必要ないさ。それに、大会が終わった後は落ち着くでしょ? その時に我慢していた分を返して貰えばいいからさ」


『ありがとう。私、頑張るね!!』


 そんなスピーカーが割れてしまいそうな快活な声を陽歩は響かせる。


 チッ……くそ面倒くせぇな。さっさと諦めちまえば良いのによ。

中学生の時から頑張ってるとか抜かしてるけど万年2着だぞ? 

才能ねぇのを自覚しろってんだよ。


 テメェが向いてるのはベッドの上で甘ったるい喘ぎ声を出して男を喜ばす方だろうが。そのデケェ乳は何の為についてんだよ。


 ……っと、いけねぇな。落ち着け。

そりゃあ、無理やり詰め寄って、ヤルくらいなら容易いが、せいぜい1回きりで関係は終わりだ。この手の女は付き合うまではチョロいが、ベッドまで向かわせるまでの手順を慎重にこなさないと逃げちまう。処女って面倒だわぁ〜。


 オレは苛つく心を落ち着かせ、なるべく優しい声色で返答する。


「応援しているよ。それに、ここ最近は元気も増している感じだし。最近、練習に付き合ってくれる友だちのおかげ?」


『うん、稲瀬くんのおかげ。ほら、同じクラスメイトの人だよ。おかげで最近は調子が良いんだ。あ……もしかして、他の男の子と一緒なのは控えた方がいいかな?』


「別に構わないよ。オレだって女友達と交流しているし。……おっと、そろそろ友だちが戻るから切るよ。頑張れ、陽歩」


『またね、堀道くん。ありがとう』


 そう告げると、着信は途絶える。


 はぁ……キープした女の相手をするのも、かったるいなぁ。だけどまあ、我慢した分のお楽しみも増えるってことで。

しかし、陽歩のヤツが調子戻してんの、稲瀬が原因とはなぁ。ぶっちゃけ、同じクラスメイトつってもピンと来ないけどよ。誰だっけ?


「あ~、なんか思い出したわ。体育祭の時に体調崩して保健室に消えた陰キャだ」


 あん時は助かったなぁ~。欠員が出たから代理で出て活躍出来たし。そんな陰キャ君が陽歩へ積極的にアピールしているだなんて健気だねぁ。

あれかな? 一緒に居られるだけで幸せってやつ。童貞はそんなんで幸福を感じられるのが少し羨ましいわぁ。


「つっても、陽歩に近づいているのは確かだしなぁ。念の為に脅しておくか?」


 だが、陽歩のやつは義理堅いからなぁ。オレが脅したなんてバレた時は言い訳がしづれぇ。


 ま、無理に気にする必要もねぇか。相手は陰キャ君だし。陽歩の秋大会が終わった後、接触する隙を作れなくすればいい。


 そもそも1~2ヶ月程度で彼氏持ちの女を横取りするなんて出来るはずがねぇしな。オレみたいな顔の良いハイスペならともかく、クラスの日陰者なんてムリムリ。


「せいぜい、短い幸福を楽しみなよ」


「レオン~、何を楽しむの~?」


 すると、シャワールームから理兎音がバスタオル一枚で姿を現す。

独り言を聞いてんじゃねぇよ股揺またゆる女がよ。


 だが、これから始まるお楽しみ直前でお預けをくらいたくない。


 オレはニッコリと頬を緩ませて返答をする。


「何でもないよ、理兎音」


 そう告げながら、彼女を抱き寄せて、バターブロンドの派手な髪を撫でてやる。焦らず、性欲を抑えつつ、彼女をベッドへと押し倒して、タオルを取る。そして、短いプレッシャーキスをして逃げ場を失くしていく。


「ん……レオン、がっつき過ぎだよ~」


「ああ、悪い。理兎音の髪が濡れていて、とても綺麗だったから」


「んふふ~、レオンはあーしわたしの髪、好きだよね~」


「それだけ理兎音が魅力的だってことだよ」


 そんな褒め言葉を彼女の耳元で囁くと、ビクンッと僅かに体が揺れ動く。おかげで、こちらも下腹部がいい具合に温まってきた。

今すぐにでもソレをブチ込んでやりたい気持ちを堪えて、理兎音の手、唇、足と徐々に触れていき最後に大事な部分へと触れる。


 そうしていると、理兎音が体をよがらせて、荒い息を吐き出しながら甘い声で懇願してくる。


「はぁ、はぁ……ん、レオン、あーし我慢できない。そろそろ良いよぉ♡」


 はぁ、やっと準備が整ったよ。さてと、それじゃあ、ヤルとするか。

やや萎え気味だった下腹部の竿を掴み、それを彼女へと接触させる。


「んんっ♡」


 あとは、相手の反応を見ながら体を動かすだけの簡単なお仕事。

ぶっちゃけ、コイツの弱点は殆どしっているし、飽きてきたんだよなぁ。


 あ~、早く陽歩とやりてぇ。やっぱり、未開発の女子に快楽を覚えさせる時が一番興奮するからなぁ。


「レオン……レオン♡♡」


 しかし、眼前の女はオレの胸中など知る良しもなく、純粋に愛を求めてくる。

別の女のことを考えながら、コイツとヤるのは、ある意味興奮するな。

せいぜい、陽歩とヤルまでの間はオレの処理役として頑張ってくれよ。


「愛しているよ、理兎音」


「あーしもレオンを愛してる」


 そんな言葉を彼女にかけながら、オレは今ある快感を最大限に楽しむのであった。

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