第5話 幼馴染と一緒に寝取り方針会議
「
ツバメは証拠写真に写る江波さんを指先でトントンと叩きながら詳細を語り始める。
「年齢は私達と同じ15歳ね。高校は別で、私達の通う高校から二駅ほど離れた場所にある他校の生徒よ」
「別の学校に通う生徒か。ツバメは凄いな。俺なら同じ高校の生徒かさえ調べるのに苦労しそうなのに……」
「ふふ〜ん、もっと褒めていいのよ? アタシの調査力と交友関係の広さに感謝しなさい。まあ、江波さんはバターブロンドの目立つ髪色だし、格好もメイクも派手だから、他校生でも見つけるのには苦労しなかったけど」
「これを大変じゃないと言えるあたり、流石としか言いようがないよ。でも、このギャルが江波さんだと分かったとして、堀道を陥れる決定打にはならないよな」
「何を言ってるのよ? これほどまでに最高な情報はないじゃない。その前に、三ヶ島さん攻略戦について改めて整理するわよ」
するとツバメはピースサインを作るように2つの指を立てる。
「2ヶ月。これがサクに伝えた三ヶ島さんの攻略期限よ。どうしてか意味が分かる?」
「確か、三ヶ島さんと堀道との関係が発展してしまうから……だよな?」
「それも正解。加えて、サクの賞味期限が2ヶ月なのよ」
「意味がわからんし、人を食品みたいに言わないでくれ……」
「冗談じゃなくて割と真面目な話よ。アンタが三ヶ島さんの相談役ポジションとして立場を確立したのは良いわ。だけど、あまり長い期限を過ごすと『良き友人枠』として成立しちゃうのよ。アタシ達みたいにね」
嘲笑するツバメの表情から、『賞味期限』という言葉の意味を理解する。
なるほど、小学生からの付き合いであるツバメを異性としては見れねぇや。言ったら嬲り殺しにされそうなので言わないけど。
「理解した。確かに長期戦は良くないな。2ヶ月と言わず9月中には攻略したいくらいだ」
「せっかちだとモテないわよ〜。さて……と、話を戻すわ。この2ヶ月の期限はもう一つ丁度いいタイミングのイベントが控えているのよ。文化祭ね」
「あ〜、なるほど。確か開催は10月頃だったよな。堀道が三ヶ島さんとの仲を発展させるのに格好なイベントなわけか」
「ご明察。アンタの言う通り、堀道と三ヶ島さんは文化祭で仲を深めるはずよ。それこそ、堀道が三ヶ島さんに手を出していないのも、“今まで我慢していた分、無茶な要求も良いよね?“って詰め寄るためだろうしね。
だからこそ、二股相手である江波さんの情報は有用なのよ」
すると、ツバメは悪役にも引けを取らない悪い笑顔を浮かべながら、とある提案を口にする。
「堀道に内緒で文化祭に江波さんを招待するわ」
「なるほど。文化祭なら学外の人物を呼べるから、それを利用するのか。堀道からしてみれば、江波さんと三ヶ島さんが同じ空間に存在するわけだ。人の嫌がる作戦をよく思いつくな」
「褒め言葉として受け取っておくわ。だけど、その嫌がらせが有効なのよ。堀道だって二股がバレるのを警戒してるはずだから、江波さんには適当な理由をつけて文化祭には行かせないはずよ」
「逆に俺たちが裏で手引きして招待すれば強襲として効果的。くわえて、文化祭という人が多いイベントで二股証拠写真を叩きつければ……」
「堀道は言い逃れをできない!!」
ツバメは指を鳴らして満足げに頷く。
それこそ、人目がある場所で証拠写真を出せば、証人を大量にゲット出来るし、文化祭中のハプニングなんて噂話として瞬く間に広がりそうだ。
こんな容赦のない作戦を平然と思いつく俺の幼馴染怖いわぁ……。敵に回さんとこ。
そんな悪態を心の内で唱えていると、先程まで乗り気だったツバメが眉をひそめる。
「問題は三ヶ島さんね。アタシ、三ヶ島さんと接点がないのよ。これから先のアクションを考えるとアタシも交友は深めておきたいし」
「俺だけじゃ駄目なのか? 何か不足してるなら指摘してくれれば直すけど」
「足りないのは人手よ。アンタはアンタなりに頑張ってると思うわ。その寝取ってやろう!!……みたいな勢いが1学期にあれば、今頃苦労せずに済んだのにね」
「チキンで悪かったな。だけど、人手が足りないか。それこそ、ツバメが三ヶ島さんとの交流でフォローに回ってくれれば鬼に金棒だ」
「アンタは金棒というよりヒノキの棒だけどね」
「一言よけいだ、鬼さんよ」
しかし、実際のところツバメが居なければ、ここまでスムーズにいっていないはず。だけど、おんぶ抱っこ状態のままというわけにもいかない。
ヒノキの棒ならヒノキの棒らしく、最低限の役に立ってみせないと。
「あ、そうだ……。ツバメ、来週のどこかスケジュールは空いていないか?」
「どうしたのよ、いきなり。えっと、来週なら水曜日ならフリーだけど」
「なら、デートに行かないか?」
「はぁ!? デートぉ!?」
俺からの突拍子もない提案に、流石のツバメも思わず頬を薄赤くして反応する。
変な所で素直だから可愛いんだよな、コイツ。
まあ、恥ずかしさというより、俺からの脈絡もないお誘いに、怒りの感情で顔が真っ赤になっているだけかもしれないけど。
「あ〜、えっとな、ツバメ。デートといっても、三ヶ島さんと一緒にだ。駅に乗って30分ほどの場所に自然公園があるだろ? あそこに大きなランニングコースがあるんだよ」
「つまり、練習と称して三ヶ島さんとデートをしようって魂胆ね。そして、女のアタシが入れば、三ヶ島さんも行きやすいってわけか」
「そういうことだ。ツバメも三ヶ島さんと交流できるし、ベストかなって」
「はぁ……なんか、サクにしては良い提案なのがムカつくわね。アタシが出汁に使われているのも苛立ちを覚えるけど。でも、躊躇する理由もないか。いいわ、アンタと一緒にデートに行ってあげる。ただし、入園料はおごりなさいよ」
「ありがとう、ツバメ。もちろん、費用は俺がもつ。それじゃあ、三ヶ島さんにも連絡いれて予定が空いているか確認するよ」
「そうね。10月の文化祭に向けて1日も無駄にできないもの。堀道が浮気相手とラブホでのんびりしている間に準備を進めましょう」
「いや、そんな毎日性欲を発散しているわけないでしょ。欲情した猿じゃあるまいし」
「そうよね〜」
「だよな〜」
いくらなんでも、それは……ねぇ? とりあえず、今は堀道よりも三ヶ島さんだ。
さっそく、三ヶ島さんに「自然公園でランニングをしない? 友達も一緒だけど」と、お誘いの電話を入れると、食い気味に「絶対に行く!!」と鼻息を粗くしながら了承をしてくれる。
そして、着々と計画が進む中、堀道は浮気相手である江波さんとホテルへ行っているなんて、俺達は知る由もないのであった。
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