日本でカツ丼を食べる3

 店に飛び込むように急いで入って来たアグリさんが、俺の目の前までやってきた。


「知ってますかオダナカ殿!」

「知りません。あ、新作そばとおにぎりください」

「大将、このシャークフライ丼ってのを1つ。あと塩そばもな!」


 ここはいつもの大将の新店舗が完成したので、お頭と一緒に食べに来ていた所だ。アグリさんの合流したので注文を始めていく。


「あっ私もオダナカ殿と同じやつ――ここだけの話」


 注文を終わらせて隣の席に座る彼女。


「魔王国側がコメを探しているという情報を耳にして……オダナカ殿が仕入れているという農家さんが狙われてしまうかもしれなくて……」

「いやまぁ。仕入先は大丈夫ですよ」


 この世界の事はほぼ知らないが、米に似た作物を育てているという話は聞かない。

 自分が卸しているのはこの国の、しかもこの町の2人だけだ。

 魔王とやらが日本に直接来れる訳でも無いし、その米探しも徒労に終わりそうだ。


「今は休戦していますけど……魔族ってのは凄い傲慢で、上から目線で、とにかく嫌な奴らなんですよ。オダナカ殿も、気を付けて下さいよ」

「……分かりました」


 いつかは魔王国にでも飯を食べに行く事もあるかもしれない。

 願う事なら、このまま平和になってくれたら面倒が無くていいのにな――。


「あ、後! 私の食べる分のコメ、売ったりしないで下さいよ!」

(こっちが本音だな……)


「あいよ、新作そば2つと塩1つね!」

 

 俺はいつものように麺をすすりながら、大将の新作ラーメンを味わうのであった。

 

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