第11話

 ある日、好奇心旺盛なあやかしが話しかけてきた。

見た目は手のひらサイズのツルピカ頭で小人の様な奴だ。

「ヒトの子...話そ?」

俺はその好奇心旺盛なあやかしに向かって微笑ほほえんだ。

「もちろん、話そう。」

あやかしは嬉しそうに近づき、キラキラした目で見上げた。

「俺の名前は塩谷しおや 海人かいと。君は?」

あやかしは少し戸惑いながらも答えた。

「オレはツクモ。ここら辺をいつもウロウロしてるんだ。」

「そうか、ツクモ。俺、あやかしと話す力を手に入れたんだ。でも、まだどうすればいいかわからなくて。」

ツクモは首をかしげた。

「そりゃ大変だな。でも、話せるだけで大きな一歩だよ。オレたちあやかしもいろんな悩みがあるんだ。」

「悩みって、どんなこと?」

「例えば…この近くの大きな木が最近枯れ始めてて、そこに住んでるあやかしたちは困ってるんだ。あの木がなくなると住む場所がなくなっちゃうからさ。」

俺はその話に興味を持った。

「その木、俺も見てみるよ。何か手伝えるかもしれない。」

ツクモは嬉しそうに跳ねた。

「本当か?じゃあ、案内するよ!!」

ツクモに導かれて、俺はその木の場所に向かった。

そこには、下にいる俺たちに光を届けないほど立派な大樹があり、確かに葉が枯れかけていた。

周囲には不安そうなあやかしたちが集まっていた。

「これがその木だよ、カイト。どうする?」

俺は木に手を触れて、静かに考えた。「何故なぜこの木に何か異変が起きてるんだ?俺もどうしてか分からない。」

その時、木の近くにあやかしが現れた。

「若者よ、この木には長年の精霊が宿っている。しかし...」

俺は木のあやかしの言葉に驚きながらも続けて聞いた。

「しかし、何が起きているんですか?」

木のあやかしは深い溜息をつきながら答えた。

「確かにヒトの活動が影響を与えることもあるが、この木の異変はそれだけではない。この地のバランスが崩れた原因が他にあるのだ。」

「他の原因…?」

木のあやかしはゆっくりとうなずいた。

「ここ数ヶ月、強力な妖力ようりょくがこの地に流れ込んできている。その力がこの木の精霊を弱らせているのだ。」

俺は眉をひそめた。「強力な妖力ようりょく?それはどこから来ているのですか?」

「おそらく、遠くの山々から流れ込んでくるものだろう。この地のあやかしたちもその影響を受けて、次第に力を失っていく。」

「じゃあ、その原因を突き止めて、対処しないといけないんですね。」

あやかしうなずいた。

「そうだ。私は、木の側を離れられない。お前があやかしと話す力を持っているのなら、その力を使ってこの地のあやかしたちと協力し、原因を探し出すのだ。」

「分かりました。俺、全力で頑張ります。」

ツクモが隣でうなずいた。

「オレも手伝うよ、カイト。オレたちあやかしもこの地を守りたいから。」

「ありがとう、ツクモ。みんなで力を合わせて頑張ろう。」

その後、俺とツクモは周囲のあやかしたちと協力して、異変の原因を探し始めた。

中には、俺の話を聞いたのか、最初は怖がってたあやかしも段々と心を開くようになっていた。

あやかしたちの知識や情報を集めながら、俺たちは少しずつ真実に近づいていった。

ある日、俺たちは山の奥深くで異様な気配を感じ取った。

その場所には巨大な岩があり、そこから黒い煙が立ち上っていた。

「これは...絶対そうだ...」

俺は慎重しんちょうに岩に近づき、その周囲を調べ始めた。

すると、岩の裏側に大きな裂け目があり、そこから強力な妖力ようりょくが漏れ出ているのを発見した。

「恐らく、この裂け目が原因だ…」

ツクモが何かを知っているのか言った。

「その裂け目を塞ぐためには、強力な封印の力が必要だよ。カイトがそのチカラを持っているのなら、試してみたら?」

俺は深呼吸をしてから、手を裂け目に向けて集中した。

「封印の力よ、集まれ!!...こんなので良いかな?」

すると、俺の手に模様が現れそこから光を放ち、裂け目を覆い始めた。

光は次第に強くなり、ついには裂け目を完全に封じ込めた。

裂け目が封じられると、周囲の空気が一気に軽くなり、黒い煙も消え去った。

「俺にこんな力が...ありがとう黒狐くろぎつね...」

問題の木に戻ると木のあやかしが静かに言った。

「これで一安心だ。しかし、これからも気を抜くな。あやかしと人間が共存するためには、お前の力が必要だ。」

「分かりました。これからもあやかしたちと協力して、この地を守っていきます。」

ツクモが嬉しそうに言った。

「オレたちも一緒だ、カイト!!」

「ありがとう、ツクモ。これからもよろし...」

安心したのか、ふと気が抜けて俺は倒れた。

木のあやかしあきれて言った。

「まったく、世話の焼ける小僧だ...ありがとう、海人かいと...」

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