第8話

 脩吾しゅうご悠也ゆうやは3つ目の七不思議『図書室のあやしいささやき』を確かめるべく、図書室に向かった。

図書室の扉を開けると、そこには静寂せいじゃくが漂っていた。

夜の学校特有の静けさが、不気味な雰囲気をさらに増幅させる中、僕たちは次の謎、『図書室のあやしいささやき』に立ち向かう準備を整えていた。

「この図書室でも、何か不思議なことが起こるんだろうか?」

と僕がつぶやくと、脩吾しゅうごが軽く肯定するようにうなずいた。

「確かに、この学校には不可解な現象がたくさんあるみたいだからな。さて、どんなあやしいささやきが聞こえるのか、楽しみだね。」

図書室の奥に進むにつれて、薄暗い書架しょかの間を慎重しんちょうに歩く。

すると、ふと耳にするかすかな声。

それはまるで誰かが何かをささやいているような気配だった。

「聞こえるか?あれが図書室のあやしいささやきだ。」

脩吾しゅうごの指摘に、僕も耳をませる。

確かに、書架しょかの陰で何かがささやいているような音が聞こえた。

しかし、言葉がはっきりしない。

「これは…本の中の言葉なのか、それとも…」

そのとき、一冊の本が突然にわかに揺れる音が聞こえた。

図書室の中にいるはずの僕たち二人だけだったが、本自体が自然に揺れることはありえない。

「ひょっとして、これもまた幽霊の仕業なのか?」

脩吾しゅうごの問いかけに答える声はなく、代わりに図書室の奥深くから、さらにささやく声が聞こえ始めた。

「…みんな…ここに…来て…」

声は次第に大きくなり、不気味な響きが図書室全体を満たした。

そして、突如として本が次々と落ちる音が聞こえ、それとともに部屋全体が揺れた。

「や、やばいよ!!これはもう逃げた方がいい!!」

悠也ゆうやの叫び声に応じて、二人は急いで図書室を出た。

階段を駆け下り、再び安全な場所へと戻ると、心臓が激しく鼓動していた。

「これも相当怖かったな…」

「確かに…次はもう少し穏やかな不思議に挑戦した方がいいかもしれないな。」

「次に近いのは...1階だから保健室だから、『保健室の影人形』だね。」

「保健室の影人形か。確かに、これまでの不思議と比べると比較的穏やかそうだな。そうだろよ。影人形って、ただの影だからな。動くわけじゃないし、ただの幻想げんそうだろう。」

自分たちは1階の保健室へ向かうため、階段を降りていった。

学校の廊下は静まり返っており、不気味さもまばらになってきたように感じた。

「ここだな。」

保健室のドアを開けると、そこには通常通りの保健室が広がっていた。

ベッドや医療用品が整然と並んでおり、特に異常な兆候ちょうこうはなかった。

「どこに影人形がいるんだろうな?」

脩吾しゅうごささやくように言うと、保健室の中を注意深く見回した。

しかし、影人形の気配はどこにもなかった。

「ねぇ、本当にここに影人形がいるのか?」

不安そうにたずねると、その時、廊下の外から何かが聞こえてきた。

ゆっくりとした足音が近づいてくる音だ。

「何かが来るぞ!」

僕たちはドキドキしながら保健室の中を見渡したが、影人形の姿は見当たらなかった。

しかし、廊下の足音はますます近づいてきて、そのリズムはどこか不気味なものを感じさせている。

「もしかして、影人形の影が廊下に映っているのかもしれない。」

僕がささやくと、脩吾しゅうごも眉をひそめていた。

その時、突然、保健室の中で何かが動く音が聞こえてきた。

「あれ、体重計の影が…!!」

すると、体重計の影が不自然にゆらゆらと揺れているのが見えた。

その影が廊下に映り、影人形のように見えていた。

「まさか、これが『保健室の影人形』ってことか?」

僕が驚きながら言うと、脩吾しゅうごも一瞬、目を丸くしていた。

「うわっ、影が廊下に映ってるんだ。まさに幻想げんそうだな。」

影が揺れる音が徐々に消え、廊下の足音も遠ざかっていった。

「これはちょっと面白かったね。次もこれくらいの不思議がいいかも。」

「そうだな。今度は少しリラックスして探検できそうだ。」

 僕たちは次に『理科室の静かなる叫び』に向かう為、再び階段を上り、理科室へ向かった。理科室は学校の2階にあり、その独特な雰囲気が少し不安をかき立てた。

「ここか...」と脩吾しゅうごつぶやく。

僕たちは理科室の扉を開け、中に入った。理科室は実験道具が整然と並んでおり、独特の化学薬品の匂いが漂っていた。

「夜の理科室って、やっぱり雰囲気あるね。」

「確かに。さて、叫び声が聞こえるってのはどういうことだろうな」

僕たちは理科室の中を歩き回り、耳をませた。

最初は何も聞こえなかったが、しばらくすると、かすかに何かが動く音が聞こえ始めた。

「聞こえたか?」

「うん、何かが動いてるみたいだけど...」

その時、突然、「キャー!!」という叫び声が響き渡った。

僕たちはびっくりして一瞬立ち止まったが、声の主は見当たらなかった。

「誰かいるのか?」と脩吾しゅうごが叫ぶが、返事はなかった。

再び静けさが戻り、僕たちは慎重しんちょうに声の方へ近づいた。

叫び声は再び響き渡り、その度に僕たちは緊張感を高めた。

しかし、叫び声の主は一向に見つからない。

なので、叫び声に応えようとこちらも叫ぼうと考えたが、もしこの声が僕らにしか聞こえてなくて、ここで人間の僕らが叫んだら、もっと問題になりそうだったのでやめた。

「ねぇ脩吾しゅうご、これって、本当に幽霊の叫び声なの?」

「かもしれないな。でも、叫び声の主が見つからないのは確かに不思議だ。」

僕たちはさらに理科室を探し続け、叫び声の原因を突き止めようとしたが、結局、何も見つからなかった。

「もうこれ以上探しても無駄かもしれん」

「うん、確かに。この叫び声は本当に謎のままだね。」

僕たちは理科室を後にし、次の七不思議に向かった。

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