第6話

 夢の中で出会った少女は、

「また会えたね」と言っている...何処どこかで会った事があるだろうか。

翔太しょうたは不信感とともに、

「君は誰?ここは何処どこ?」と尋ねた。

少女は静かに答えた。

「私は夢の案内人。そしてここは、君が心の中で迷子になっている場所。この夢の中で答えを見つけることができるかもしれないよ」

翔太しょうたはさらに混乱したが、同時に強い興味を感じた。夢と現実の境目を越え、彼は自分自身の真実に迫ろうとしていた。

「教えてくれ、どうすればこの夢の中で答えを見つけられる?」

翔太しょうたは少女に真剣な眼差しを向けた。

少女は優しく微笑み、

「まずは、自分自身と向き合うこと。夢の中に隠されたヒントを探して、心の声を聞くんだ」

翔太しょうたは少女の言葉に深く頷き、心の中で迷子になっている自分と向き合う決意を固めた。

「どうやって自分自身と向き合えばいいんだ?」

翔太しょうたは少女に尋ねた。

少女は静かに言った。

「ここには君の記憶きおくや感情が形となって現れる場所がある。それらに向き合い、受け入れることが重要なの」

翔太しょうたは不安を感じつつも、少女について行くことにした。

二人は静かに歩き始め、やがて彼らは広大な図書館のような場所にたどり着いた。

本棚には数えきれないほどの本が並んでいる。

「これは何?」

翔太しょうたは不思議そうに尋ねた。

少女は答えた。

「ここには君の記憶きおくがすべて詰まっている。過去の出来事や感じたことが、本という形で残されているの。君の心の一部だよ」

翔太しょうたは一冊の本を手に取り、開いてみた。

そこには小学校の頃の思い出が描かれていた。

友達と遊んだ日々、初めての挫折ざせつ、そして成功の喜び。

それらの記憶きおくが鮮やかによみがえり、翔太しょうたの心に響いた。

「これが僕の記憶きおく...」翔太しょうたつぶやいた。

「でも、どうすればこれを通して自分と向き合えるんだ?」

少女は微笑ほほえみながら言った。

記憶きおく辿たどることで、君が何を大切にしているのか、何を恐れているのかが分かる。まずは、自分の本当の気持ちに気づくことから始めよ」

翔太しょうたはさらに本棚を探し、次々と本を開いていった。

中には苦しい記憶きおくもあった。

中学時代のいじめや、失恋の痛み。

しかし、彼はそれらの記憶きおくにもしっかりと向き合った。

「こんな事もあったんだな...」

翔太しょうたつぶやいた。

「辛いこともあったけど、それが僕を強くしてくれた。」

少女は翔太しょうたの横に立ち、優しく言った。

「そうだね。過去の出来事はすべて今の君を形作っている。どんなに辛いことも、それを乗り越えてきた君がいる。」

翔太しょうたは深く息を吸い込み、自分の心が少し軽くなった気がした。

そして、翔太しょうたはふと、最近の出来事を思い出した。

部活のプレッシャー、勉強のストレス。

それが積もり積もって、倒れてしまったのだ。

「最近、無理しすぎてたんだな...」翔太しょうたは認めざるを得なかった。「自分に厳しすぎたのかもしれない。」

少女はうなずき、

「自分を責める必要はないよ。大切なのは、今ここで気づいたこと。そして、これからどうするかだよ。」

翔太しょうたは決意を新たにした。

「ありがとう、君のおかげで少し分かった気がする。これからはもっと自分を大切にしよう。」

少女はにっこりと微笑ほほえみ、

「それが答えだよ、翔太しょうた。自分を大切にし、自分の気持ちに正直に生きること。それが君の心の迷子を解く鍵なんだ。」

その瞬間、翔太しょうたの視界がけ始めた。

「最後に一つ良いかな?君と何処どこかで出会った事があったかな?」

「キツネ...と言っておきましょうか...」

夢の世界が薄れていく中で、翔太しょうたは少女の微笑ほほえみを最後に目に焼き付けた。

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