松風 翔太編 1章

第5話

 翔太しょうた何処なぜか不思議な世界を彷徨さまよっている...歩いていると温かい一筋の光が差していた。其処そこに向かって歩いているとパタリと倒れた...

 次に目を覚ますと、自分が見知らぬ森の中にいることに気づいた。

太陽は空高く輝いているのに、森の中は薄暗く、どこか不気味な雰囲気が漂っていた。

歩き始めると、足元に落ち葉がカサカサと音を立て、背後から風が冷たく吹きつけてくる。

「ここはどこだ?」

翔太しょうたは独り言をつぶやいた。

勿論もちろん答えは返ってこなかった。

しばらく歩くと、小さな池が見えてきた。その水面には不思議な光が揺らめいており、翔太しょうたは思わず足を止めた。

すると、水面から1匹のあやかしが現れた。

それは獅子ししの姿をしており、赤色の目が翔太しょうたを見つめていた。

「お前は誰だ?」

翔太しょうたは警戒しながら問いかけた。

「私はこの夢の世界を支配している者だ」

と獅子は答えた。

「お前はどうやら私の作った幻想げんそうに迷い込んだようだな」

翔太しょうたは恐る恐る尋ねた。

「この夢の世界から抜け出したい。どうすればいい?」

獅子ししはしばらく考え込むと、にやりと笑った。

「それならば、ある試練を乗り越えねばならない。その試練は、この森の奥にある神社に行き、そこで三つの問いに答えることだ」

翔太しょうた獅子ししの言葉を信じるしかなかった。

妖狐に《ようこ》導かれながら、彼は森の奥深くへと進んだ。

道中、幾度いくどとなく奇妙きみょうな生物たちと遭遇そうぐうしたが、妖狐ようこの助けを借りて何とか進むことができた。

やがて、古びた神社が見えてきた。神社の前に立つと、突然、神主かんぬしの姿をしたあやかしが現れた。そのあやかしは、静かな声で言った。

「ここに辿たどり着いた勇敢ゆうかんな者よ。三つの問いに答えよ。まず第一の問い、真実とは何か?」

翔太しょうたは考えた。夢の中の出来事が現実であるかのように感じられたが、やはり夢であると思った。

「真実とは、人が心の中で信じるものである」と答えた。

神主かんぬしあやかしうなずき、次の問いを投げかけた。

「次に、恐れとは何か?」

翔太しょうたは再び考えた。

「恐れとは、未知のものへの不安だ。だが、それを克服することで成長できる。」

再びあやかしは満足げにうなずき、最後の問いを尋ねた。

「最後に、自由とは何か?」

翔太しょうたは深く息を吸い、心の底から答えた。「自由とは、自分自身を知り、自分の選択に責任を持つことだ」

その瞬間、神社の周りの景色が変わり始めた。

光が溢れ、森は消え、翔太しょうたは自分の部屋で目を覚ました。

夢の中での出来事が現実のように鮮明に残っていたが、上手くは話せない。

何処どこからが夢で何処どこまでが現実なのか。

もしかしたら、最初から夢だったのではないかとも思えてきた。

 そう考えていた時だった。

翔太しょうたが起きた事に気づいた母が駆け寄ってきた。

翔太しょうた!!本当によかった。まったく、心配したんだからね!!」

大袈裟おおげさだよ母さん」

「何言ってんだい!!学校で急に倒れたって聞いてそこから3日間そのままだったんだよ!!」

確かに3日間寝てたって考えると相当だ...

考え過ぎて翔太しょうたは混乱した。

3日間も眠り続けていたなんて信じられなかった。

母の言葉が現実感を増していく一方で、夢と現実の境目がますます曖昧あいまいになっていく。

「3日間...そんなに?どうして?」

翔太しょうたは不安そうに尋ねた。

母は心配そうな表情で翔太しょうたを見つめ、

「先生たちも原因が分からないって言ってたんだけど、疲労とストレスが重なったんじゃないかって。最近、学校の勉強や部活で無理してたんでしょ?」

 翔太しょうたはうつむいて頷いた。

「確かに、部活の試合が近かったから、練習も勉強も無理してたかもしれない。」でも、夢の中のことがあまりにもリアルで恐ろしく感じた。

母は優しく翔太しょうたの手を握り、

「大丈夫よ、翔太しょうた。今はゆっくり休んで、元気になってからまた考えればいいわ。」

翔太しょうたは母の温かい手の感触に少し安心した。

しかし、夢の中での出来事が頭から離れなかった。

あの夢が一体何を意味しているのか、そして現実とどう結びついているのかを知りたいという思いが強くなっていった。

 その夜、ベッドに横たわる翔太しょうたは、再びあの夢の世界に戻ることを願って眠りについた。

そして、彼は再び夢の中にいた。

夢の中では、奇妙きみょうな光景が広がっていた。見覚えのない場所に立っている翔太しょうたの前に、一人の少女が現れた。

彼女はにっこりと微笑ほほえみ、

「また会えたね、翔太しょうた」と言った。

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