第4話

  翔太しょうたが倒れてから数日が経過した。

 優斗ゆうとは、翔太しょうたの居ない学校がどんなに静かで寂しいかを痛感していた。

 いつものように放課後、優斗ゆうとは自転車で学校を後にした。

 心はいまだに翔太しょうたのことでいっぱいであり、翔太しょうたが元気になることを願っていた。

 しかし、その日も何かが可怪しいことに気づいた。

 通学路で普段見かける生徒たちが居ない。

 それどころ人がどこにも見当たらないのだ。

 優斗ゆうとは不安を感じながらも、そのまま翔太しょうたの家に向かった。

翔太しょうた、元気か?」

 優斗ゆうと翔太しょうたの家の前で声をかけたが、返事はない。

 家の中からも一向に反応がなかった。

 何度か呼びかけたが反応はない。

 心配しながらも、翔太しょうたの家の前で立ち尽くしていた。

 家の中からは一向に反応がないまま、薄暗い夕暮れが近づいていた。

 突然、通りの灯りが消える。優斗ゆうとは振り返り、その先に見たものに目を疑った。

 そこで見たのは異形いぎょうの姿をしたモノたちだった。

 奴らはゆっくりと辺りを見回し、何者かを見つけたと思うと、一斉に走り出して行った。

 他の異形いぎょうたちは、ゆっくりと、不気味に優斗ゆうとに近づいていた。

 優斗ゆうとは恐怖に凍りつく。動こうにも腰が抜けて動けない。

 しかし、異形いぎょうたちは近づくスピードを上げ向かって来ている。

 何も出来ない自分になげいていると、一人の少女が優斗ゆうとの前に現れた。

「驚いた!!私以外にも人が居たんだ!!そんなところに座ってると危ないよ?早く逃げなきゃ!!」

「君は?」

「私の名前は舞鶴まいづる 未来みく。気軽に未来みくって呼んでね!!」

 未来みくは手を伸ばし、優斗ゆうとを力強く引っ張って立たせた。

「ありがとう、未来みくちゃん!!」

 優斗ゆうとは言葉どおりに未来みくに感謝の気持ちを込めた。

 彼女の姿が、優斗ゆうとに勇気を与えた。

 未来みく優斗ゆうとを自宅の中に引っ張り込み、玄関を素早く閉めた。

 外の異形いぎょうたちの気配が近づいているのが感じられた。

 しかし、未来みくは冷静に行動を続けた。

「ここは安全だと思うけど、万が一に備えて...」

 未来みくは言いながら、家の窓やドアを確認し、カーテンを引いた。

 優斗ゆうとは初めての恐怖から解放され、未来みくに向かって感謝の気持ちを伝えた。

未来みくちゃん、本当に助かったよ。ありがとう」

 未来みく微笑ほほえみながら、優斗ゆうとの肩を軽く叩いた。

「当たり前のことだよ!!た・す・け・あ・い!!」

 そう言うと未来みくは何か準備を始めた。

「でも、これからどうする?外には...」

 不用意に外に出るとまた奴らに襲われる可能性がある。

しかし、ココが安全とは分からない。

「まずは、この世界から抜け出さなくちゃ!!」

 そう言うと未来みくは人の形をした紙切れの様なモノを沢山取り出した。

「何それ?紙切れ?」

「違うよ!!これはヒトガタと言って身代わりにもなるし、使い方次第では奴らを倒せちゃうんだよ!!」

「もしかして、未来みくちゃんって霊媒師れいばいし?」

「まぁ、そんなとこ!!じゃあ、さっそく使ってみよう!!」

 優斗ゆうと未来みくの手から渡されたヒトガタを取り、未来みくの指示に従った。

 外からは異形いぎょうたちの不気味な声が聞こえ、その姿が窓から見える。

 時間がない中、優斗ゆうとはヒトガタを慎重しんちょうに配置し始めた。

 優斗ゆうとは部屋の周囲にヒトガタを配置し、ヒトガタの一部は自分たちのに変装した。

「これで、少しは奴らをまどわせることができるはず!!」

 未来は自信を持って言った。

 その瞬間、外から異形いぎょうたちの声が一層高まり、家のドアにも衝突音が聞こえ始めた。

 優斗ゆうとは窓の外を見ると、異形いぎょうたちが家の周りに集まっているのが見えた。

未来みくちゃん、時間がない。出口はどこ?」

 優斗ゆうとは焦りを隠せなかった。

 未来みくは落ち着いた表情で答えた。

「裏口には逃げ道がある。私が封印を解けば通れるはず」

「じゃあ、早く行こう!!」

 優斗ゆうと未来みくの後について裏口へ向かった。異形いぎょうたちの群れが家を包み込む中、彼らは最後の希望を胸にして裏口ヘ向かった。

 未来みくは裏口で手を止め、奇妙きみょうな言葉をささやきながら封印を解いていく。

 その間、異形いぎょうたちは二人の姿を追い、ドアを破壊し家の中に集結し始めた。

「もう少し、もう少しで...!!」

 未来みくの声が強くなり、封印が解ける瞬間、裏口が開いた。

 優斗ゆうと未来みくを先頭にしてその扉をくぐり、外の世界へと脱出をした。

 しかし、異形いぎょうたちもそれに気づき、彼らの後を追いかけ始めた...

 外の世界に出ると、さっきまで居た場所なのに奴らは居ない、一つだけ可怪おかしいところがある位だ。

 何故なぜか大きい赤狐あかぎつねが居る。

「わぉ!!久しぶり、火伏ひぶせちゃん!!どうしたの?」

「気づいとらんのか?奴らはお主らを追ってきとるのじゃぞ!!」

 優斗ゆうとは、今行われている光景にえて何も言わないでいる。

 そうこうしていると空間に亀裂きれつが入って、異形いぎょうたちが飛び出してきた。

「うわぁ!!マジで来てるじゃん!!」

「安心せい!!ワシはコヤツらより強いからのぉ」

 そう言って次から次へと出てくる異形いぎょうたちをっていった...

「なんか、世の中不公平じゃね?」

 そう思った優斗ゆうとは考えるのをやめ喝采かっさいした。

「やんや!!やんや!!わぁすごなぁ!!」

 全てが終わる頃には夕方になっていた。

「終わったねぇ~」

「僕たち何もしてないけどね...」

 全てをっていた火伏ひぶせは疲れている様に感じる。すると、ポン!!と音を立てて人の姿に変化へんげをした。

 その姿は、赤髪のロリっであった。

 その姿を見るやいなや、未来みくはロリっに飛びついていった。

「かわいい〜!!流石 火伏ひぶせちゃん、かわいくても頼りになる〜」

 さっきまでのかっこいい未来みくの姿は、何処どこへいったのだろうかというほどの変わり様である。

「それじゃ!!また会える日まで〜」

 そう言い残すと未来たちは、何処どこかヘ向かって行った。

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