4ー3

AM 0:00 天神山


 天神山を張る結界のルーンによって、入山口が封じられている。皆の戦況を『仮面の魔女ジャンヌ』から聞きながら、結界の解呪に取り組んでいる。

 しばらく結界の解析を進め、そして結界の解呪を行う。

 すると、私の魔力を込めた術式を持って、その結界は解かされた。


「『グリモワル真書 第48節 術式干渉【構築支配】』」


 術式に干渉されたことで、結界は解呪される。それに伴い、天神山に入ることができる。


「では、お気をつけて。偉大なる我が主よ」


「あぁ。行ってくる」


仮面の魔女ジャンヌ』が私を見送り、私は天神山に入る。コンクリートで舗装された山道を進むと、兵士たちが私の前に立ちはだかる。

 私は、小杖タクトを携え、群がってきた兵士たちを迎撃をする。群がる兵士たちを薙ぎ倒しながら、天神山を登り進む。

 兵士たちの血を被りながら、山頂の周辺まで進む。

 すると、彼らを率いていた人物たちが、山頂の近くで待っていた。


「よく来たわね。待っていたわ、『魔女』さん」


「親切なものだな。指揮官自ら、出迎えに来るなんてな」


「あら? 私はいつも親切よ。まぁ、欲しいものはどんな手を使っても手に入れる主義ではあるけど」


「ほう? それは奇遇だな。お前が私の敵で無いかったら、良き親友でいただろうな」


 私の言葉に、女は言葉を返す。


「へぇ、減らず口ね。それで? あなたは私に服従するの?」


「いや違うな。お前を殺しに来た。ただそれだけだ」


 私の言葉に、彼女は言葉を返す。


「いい度胸ね。この私、『女王メイヴ』に対して、無礼なものね。私に対して無礼を働いた事、冥府まで後悔させてあげるわ!」


「それはこっちのセリフだ。誰の街で勝手をしたか、死んで償わせてやるよ」


 メイヴと私の挑発合戦を続く。私は、両手に白黒の剣を構える。すると、大柄の男が、私の前に立ちはだかる。


「久しいのう。若き『魔女』よ。女王陛下をやらせはせんよ」


「フェルグス! やはりそばにいたか」


「生憎、これも生前からの付き合いでね。忠誠を誓った主を殺させはせんよ」


「そう。なら、貴様を殺してから女王を殺すとしよう」


 私はフェルグス向けて剣を構える。だが、私とフェルグスが戦う前に、メイヴが話し始める。


「フェルグス。今は武器を納めなさい。それより、あなたとは交渉がしたいわ。ここまでやってくれたんですもの、それ相応のものを要求するわ」


「交渉? どういうことだ?」


「それは簡単よ。あなたの持つ『グリモワル真書』を全て私によこしなさい。それで手を打ってあげるわ」


 メイヴの言葉にさらに私はイラつき出す。こいつ、どうやら私が最も嫌いなタイプの女みたいだ。


「――――――――断る。あれは私のものだ。気安く渡せるほどの代物じゃない」


 私がメイヴの要求を断ると、彼女は怒りを露わにする。どうやら、彼女にとって、『グリモワル真書』はどの宝よりも目当てな物のようだ。


「なんですって!?」


「やはりな。史書の通り、我が儘な女王だ。だがな、私もあれが必要なんだ。貴様に渡すくらいなら、リリィに渡してるよ」


「許さないわよ、あんた。この私をコケにしたこと、後悔させてやるんだから!!」


 怒りが頂点に足したメイヴは、フェルグスに命じる。彼女の命令を聞いたフェルグスは、静かに頷いた。


「命乞いしたって、許さないんだから! やりなさい、フェルグス!!」


「女王陛下の命とならば、何なりと。では、始めるとしようか。お嬢さん」


「あぁ。この間のような事はお互い無い」


 私は、グラムとティルフィングを構え、フェルグスはカラドボルグを構える。

 そして、私とフェルグスとの戦いが幕を開ける。


 フェルグスの強烈な一撃と、私の二振りの剣の斬撃がぶつかり合う。その衝突は絶大で、地下鉄で戦った時よりも激しさを増していた。

 それほどまでに両者とも本気なのだ。


「なるほど。それが貴様の本気というわけか!」


「そっちこそ、この間とは比べ物にならんな。手加減してたとは思えないぞ」


「無論だ。あの時は、小僧どもが居たんでな。無用に力を出せんかっただけよ」


 フェルグスの薙ぎ払いを、私は飛んで避ける。フェルグスもまた、私の炎の魔術をカラドボルグの剣圧で振り払う。


「あのガキどもが居たから本気になれなかったっと? それでは言い訳にしか聞こえんな」


「そうとも。戦いにおいて、ガキを殺すほどの趣味など俺には無い。最も俺にとっては誇りなき戦いは誓いゲッシュに反することよ」


「そいつらがいないから、今は存分にやれるって訳か。なら、私も敬意を払わないとな!」


 フェルグスの目に止まらない連続的な攻撃を、私はグラムとティルフィングで防ぐ。フェルグスから出る魔力を感知し、その攻撃を一つ一つを防いでいく。

 だが、グラムとティルフィングでは、フェルグスの攻撃を防ぐには心許ない。私は瞬時にグラムとティルフィングをしまい、眼鏡を外しダーインスレイヴを展開する。

 先ほどよりも魔力がはっきりと見え、フェルグスの攻撃に順応していく。


「やはりそうだ。貴様のその剣、魔力を喰らっているな」


「そうだね。この魔具は他の魔具とは違って、人間の血と魔力を喰らいつくすんだ。そのせいで、所有者は極度の殺人衝動に駆られる。

 私が持つまでは、これまでに何人かが死んだらしい。まぁ、私にはそれが効かんがね」


「それほど、お前さんの魔力は尋常ではないな。さすがは『魔女』よ」


「本来ならぶち殺しているが、歴戦の勇士が言えば、ご褒めの言葉と受け入れよう。

 なら、ここからが本番だ!」


 私は、魔力を全開に解放する。それをみたフェルグスもまた力を解放する。


「行くぞ、――――――フェルグス!!」


「来るがいい!! 現代の『魔女』よ!!」


 両者の戦いはそれぞれが力を解放することで、苛烈さを増していく。その威力は、『虚数空間』を破壊するほどだ。

 こうして、私とフェルグスの戦いはさらに過激になっていくのだった。

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