4ー2

AM 0:00 テレビ塔


 テレビ塔広場にて、フェルディアと私による一騎打ちが激しさを増す。剣と剣がぶつかり合う衝撃により、無人の公園には衝撃による突風が吹き荒れる。

 だが、劣勢に立たされているのは、意外なことに私の方だった。いくらレーヴァテインを持っているからといい、男女の力加減では女は劣るのだ。

 しかも、相手は英雄。力が物を言う時代において、彼はその中でも上位に位置するほどの実力者だ。


「はぁぁぁぁぁぁ!!」


 レーヴァテインをフェルディアにぶつける。しかし、フェルディアは黄金の剣を用いて、私の攻撃を防ぐ。

 その度に、私は後ろへと下がる。フェルディアもまた、若干ではあるが怯み出す。

 どうやら、力の差は杞憂であったらしい。私とフェルディアは、実力差は互角のようだ。


「これほどの戦い、クー・フーリンとの死闘以来だ! この死闘こそ、戦士としての誉!!」


「私としては、もううんざりしているわ。ここまでタフとは、思ってもいなかったもの」


「フハハハハハ!! そう言うな! まだ戦いは始まったばかりよ!!」


 フェルディアは、ここぞとばかりに魔力を解放する。すると、さっきとは比べ物にならないほどの威力を誇る攻撃を繰り出してきた。


「さっきとは嘘みたいに強い! 隙を見せたら一溜まりもないわね!!」


 フェルディアは、ルーンを込めた魔術を剣に宿し、その一撃を私に向けて放つ。危険を察知した私は、レーヴァテインを振い、核の炎で迎撃する。

 二つの魔術がぶつかり合い、そして爆発を起こす。その衝撃波により、周囲のベンチなどが、薙ぎ倒されていく。

 だが、それでも私たちの戦闘が終わることはなく、爆煙の中でも剣を交える。


「いいぞ!! これでこそ、決闘!!」


「これ以上は、危険ね。であれば、即急に終わらせるわ」


 私は、柄のペダルを回し、レーヴァテインの形態を変形させる。刀身が赤く染まり、両刃の刃は片刃に統一される。


「行くわよ!」


 私は、レーヴァテインを振り回し、フェルディアと互角に張り合う。フェルディアもまた、驚異的な身体能力を用いて、迎撃する。

 核の炎で形成された剣を放出するが、フェルディアはそれをいとも容易く受け流す。

 

「魔術で出来た剣か? いや、これは余剰に溢れた熱量で形成されたものか?」


「レーヴァテインから溢れた魔力の塊。私はこれを『エネルギーブレード』を呼んでるわ」


 この形態のレーヴァテインでは、核の魔力が溢れる。その余剰に溢れた魔力を、剣として放出することで、無駄に魔力を消失することなく扱えれる。

 これに関しては、リリィの入れ知恵である。魔力のコントロールをする際、余分に溢れた魔力も支配下に置くことで、その溢れた魔力を魔術として扱う術を教え込まれているのだ。

 それに、魔力の剣を作るのは、キサラギさんのやり方を参考にしている。あの人は、自身の血に魔力を宿らせることで、血の剣を形成したり、炎の剣を触媒である可燃物から作ることもできる。

 彼女達には及ばないけど、私も放出された魔力を造形して使役する術がある。それが、私をS級魔術師スペシャルに至らしめる要因だ。


 だが、相手は英雄。力では負けるので、手数で攻めるしかない。レーヴァテインをフェルディアに向けて斬り、その溢れた核の炎を剣に変形して追撃をかける。

 しかし、フェルディアは私の攻撃を受けつつ、核の炎の剣を斬り払う。

 あれだけの攻撃をしておいて、まだこれほどの体力があるとは。だが、私がここで苦戦しているわけにもいかない。

 まずは、この拮抗した状況を打破しないといけない。そう思い、私はレーヴァテインの出力を最大まで引き上げた。


「終わらせるわ!!」


 レーヴァテインの刀身を、核の炎に包ませる。そして、その一撃をフェルディアに向けて放つ。


「『出力最大! 『α・ブレイズ』』!!」


 レーヴァテインの最大出力を、フェルディアに向けて放つ。フェルディアは、守りのルーンを全開で展開し、黄金の剣でそれを防ぐ。


「はぁぁぁぁぁぁ!!」


「――――――――ふん!!」


 レーヴァテインと黄金の剣がぶつかり合う。その勢いを苛烈を極め、衝突によって発せられる熱風によって、『虚数空間』が破壊されそうだ。

 お互いの全力を込めた鍔迫り合いは、拮抗を極める。だが、それは一瞬で雌雄を決する。

 なんと、フェルディアの黄金の剣に亀裂が入る。それによって、フェルディアの剣は砕け散った。

 そして、レーヴァテインの斬撃が、フェルディアの体を斬り裂く。


「これで、終わりよ!!」


 フェルディアの体を、レーヴァテインによって横に両断する。その時に吹き出た血が、私の顔にかかってしまった。

 そして、レーヴァテインの鍔から薬莢が吐き出され、レーヴァテインは元の両刃の剣に戻る。


「見事だ……。ここまでとはな……」


「あなたの方よ、フェルディア。ここまでの強敵、久しぶりだったわ」


「そうか……。だが、これでいい。奴が、後悔することなくて済む」


「親友を後悔させないのが本望?」


「そうだ。今世は、奴と剣を交えなくて済んだ。それだけでよかった」


「では、もう逝くのね?」


「あぁ、感謝するぞ。現世の戦士よ」


 フェルディアは、そう言い残し、息を引き取った。テレビ塔の激戦は、私が制した。これで、都心での総力戦は終焉した。

 だが、まだやるべきことは残っている。押し寄せる咎人の群れを抑えているリリィの元に行かないといけない。

 そう思い、私は足早に中島公園に戻るのだった。



 ――――――――――――――――――――――


AM 0:00 天神山前 アルトナ視点


 それぞれが戦いを始めている今、私は1人天神山に来ている。リリィの展開した『虚数空間』は範囲が開く。澄川の方まで展開されていたようだ。

 私は、天神山の駐車場の前にいる。山に入るには、結界を解呪する必要があるからだ。


「各々が戦いを終えつつあるわ。残るは、あなただけよ」


「そうだね。今頃、セシリア達がリリィと合流している頃合いだろう」


「そうね。それで、結界は解けるの?」


「もう解いてる。後は、魔力を注ぐだけだ」


 私は煙草を結界の前に投げる。すると、結界が砕け、天神山に入れるようになった。

 天神山に入る。後ろを振り向くと、『仮面の魔女ジャンヌ』が見届けていた。


「どうかお気をつけて。偉大なる我が主よ」


「あぁ、行ってくる」


 小杖タクトを右手に携え、天神山に入る。すると、『コノートの戦士』の兵士たちが、私を止めんと立ちはだかる。


「やはり来たか。なら、蹂躙するとしようか!」


 私は、『コノートの戦士』の兵士たちを前に小杖タクトを向ける。

 こうして、『コノートの戦士』との最後の戦いが幕を開けたのだった。

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