3ー2

PM 1:00 探偵事務所 如月


 リリィも事務所に来たので、作戦会議を行う。ラスティアに、札幌の地図を広げさせ、現状の確認を行う。

 美羽は、駒を用意し、現状の確認を視認化させる。

 彼女曰く、黒のチェスの駒が魔術院陣営で、白の駒が『コノートの戦士』みたいだ。


「以下が、我々が把握している現状です。どうやら、『コノートの戦士』は、ここ天神山を本拠地にしているようです。

 しかし、天神山には強力な『ルーン魔術』よって結界が張られている状態で、先駆隊が侵入できていない状態です。

 以上の事を踏まえて、彼らに対しての攻撃がままならないという感じですね」


「なるほど、それじゃ、こっちからは、何もできないって感じか」


「それだけじゃないわ。向こうは大量の咎人を抱えてる上、要注意人物も多数抱えてるわ」


 セシリアは、写真を見せる。その中には、昨日戦った人物が、写されていたのだ。


「『フェルグス・マック・ロイ』!? こいつは確か、昨日地下鉄で!」


「へぇ〜。昨日会ったんだ。それで? こいつは強かったの?」


「他の3人よりはな。しかし、こいつが、『コノートの戦士』のボスか?」


「いいえ。こいつは、No.2らしいわ。転生者と転移者を束ねてるの彼ね。後は、こいつも注意が必要だわ」


 セシリアは、もう一枚の写真を見せる。


「これは?」


「『コノートの戦士』の幹部よ。自らを『フェルディア』と名乗っているから、おそらく転生者ね。

 それに、彼がこの組織じゃ一番強いわ。伝承の通りなら、あの『クー・フーリン』と互角の実力ね」


「そして、彼らを束ねるのは、『女王』と呼ばれている女性。彼女が、『コノートの戦士』のリーダーで、本件の元凶と言っていいでしょう」


 セシリアは、さっきの一枚と一緒に、写真を見せる。どうやら、これが『女王』らしい。


「こいつが、これらを束ねていると。それに、甘い蜜を吸わせた魔術師達に、『転移術式』を使用させたって訳か」


「えぇ。それが現在、天神山を本拠地とし、札幌を征服して自分達の国にしようと計画しているそうです」


「となると、ここも『コノートの戦士』に征服されるのも時間の問題かな?」


「そうなってしまいますね。そこで、ある作戦を立案し、これを持って彼らを全滅させると言う算段がございます」


 セシリアが駒を進めながら、美羽は作戦を言う。


「まず、リリィが大量の咎人と愚者グールを相手にします。その間に、転移者の相手をラスティアさんとセシリアさんにお願いしたい。

 次に、フェルディアについてですが、これに関しては、私が相手にします。おそらく、お二人抜きで台頭に渡り合えるのは、私くらいですね。

 そして、天神山には、キサラギさんを向かわせ、フェルグス・マック・ロイを撃破させていただきます。

 最終的には、『女王』を捕まえるという作戦です。何ご不明な点でもあれば、何なりと」


「間に合うの?」


「余剰戦力をつければ、どうにかなるかと」


「余剰戦力か。とはいえ、他の魔術師達は、ついて来るものかね?」


「……無理ですね。誰も得体の知れない集団との戦いで、命を落としたくないのでしょう」


 リリィの方を見る一同。どうやら、このお子様は人望というのがないみたいだ。

 でも、彼女はそんなのお構いなしのようだ。


「いいよ、僕1人でもどうにかなるだろうし。それに、このような事態に、そのような輩は邪魔でしかないよ」


「頼めるか? 相手は大群だ。君1人では骨が折れるだろ?」


「僕を誰だと思ってるの? 僕も君と『同類』だよ?」


 リリィの声に、私たちはあることを思い出した。


 そう、『リリアンヌ・フィオ・スコットレイ』は私と同様、『特級魔術師イレギュラー』の1人なのだ。

 彼女は、魔術院が出来て以来、最高クラスの魔力量を持つ。その上、稀代の魔術師として、『元老院』でさえ恐れているほどの実力を持つ。

 そして、彼女は『原色フロントカラー』を全て扱うことができる、『7色持ちセブンス』の魔術師だ。

 その為、『色素エレメント』が豊富であり、さらには私に匹敵する『魔素マナ』も持つ。

 私を除き、彼女に匹敵する魔術師が現存していないので、彼女は今日まで魔術院の議長としているのだ。


 ともかく、咎人の群れはリリィに任せることにし、私たちは誰が相手になるかについて話し合う。


「さて、誰が相手になるか」


「どれの骨がありそうねぇ。せっかくだから、この堅いの良さそうな子にしましょうか」


「私は、このヒョロっとしている人にします。なんか調子こいてムカつくので」


 3人は、写真を見ながら相手を決める。残りは2人。残っているのは美羽と私だ。


「私はフェルディアを相手しましょう。そうなると、フェルグスはキサラギさんになりますね」


「気遣いどうも。さて、時間まではかなりある。22時に、ここに集まろうか」


「そうですね。では、各々支度を完了次第、事務所に集合といたしましょう」


 全員が頷くと、それぞれの準備のため一旦は事務所を後にする。

 私も、支度を始める。ラスティアも、戦いのための準備を進める。

 時間はまだある。それまでにやるべき事をしないといけない。

 こうして、私は時間まで支度を進めるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る