1ー3
PM 10:00 如月邸内 アルトナの工房
セシリアが去ってから数時間が経ち、私は彼女からもらった資料を元に、魔術の解析を行う。
死体の画像を元に、使用された魔術を解析したところ、彼らの魔術はイレギュラーの魔術であった。
どうやら、熟練の魔術師でも使えこなせるのに数年がかかるものを、短期間で習得したものと見て良いだろう。
それと同時に、私はある違和感を覚える。彼らは、どこでそれを身についたのか。熟練の魔術師である私でさえ、どこか引っかかるところが多すぎるのだ。
「どれも高練度の術式だが、これを容易く扱えるとはな。だが、それよりも気になることがある」
私は、さらに解析を進める。だが、それから数十分経ったところだが、何も進展がなかった。
しかし、あることに気づく。なぜ、あの組織は、魔術を容易く扱えるのか。
私は本元について考察していると、真後ろから亜空間が現れる。そして、身に覚えのある人物が、私の後ろに現れた。
「あらあら。どうやら、お悩みのようね」
「『
「あなたにしては、珍しいわね。でも、答えは意外と単純よ」
『
仮面越しではあるが、私が悩んでる姿を見てあざ笑っているみたいだ。
「答えは単純? どういう意味だ?」
「確かに、あなたの考察と解析は、相変わらず素晴らしいわ。だけど、今回はそれだけでは答えにならないのよ」
「なるほど、詰まる所、奴らは論外的なものを使ってるわけっか」
『
「それで? なんのようだい?」
「実は、かなり面倒なことがあってね。あなたに報告しに来たの」
「そうなら早く言ってくれ。これでも、そんな余裕はないんだ」
私がそういうと、『
「奴らは、とんでもない代物を使ってるわ。それも、禁忌のやつね」
「どういうことだ?」
「まず一つ、彼らの兵のほとんどは、アルスターの兵士の転生者よ。彼らは、『女王』の号令によって集まりつつある。放って置いたら、魔術院に匹敵する勢力なるに違いない。
そうなる前に、この国が『女王』のものになる。それを阻止するために、
それともう一つ、彼らの戦力はこれだけじゃない。彼らは、何かしらの方法で戦力を増強してるみたいね。被害者は、それの実験にされたと言っていいわ」
私は、『
「となると、魔術院の中に内通者がいるのか」
「そうね。彼らに協力しているのは、今の体制、
そして、奴らは、ある術式を『女王』に提供した。彼らが咎人になることを対価にね。更には、彼らに術式を付与しているのも事実ね。
これで分かったと思うわ。奴らが、何をしているのかを」
「そうだな。その術式というのは、禁忌に指定された術式だ」
私は、古い魔術書を開く。そして、記されている術式を紙に書き出した。
それを見た『
「『異世界転移術式』だ。術師が咎人になる代わりに、異世界から人間を召喚する禁術だ。これによって、異界から召喚された人物の情報を召喚先の人理に上書きされる。
いわば、ご都合主義の術式さ。こうすれば、無駄の努力無くして力を得れるからね」
「さすが、『
「よしてくれ。しかし、彼らの『女王』というのは、なんなんだ? アルスター神話とはいえど、ここは日本だ。彼らの知名度は、祖国より低いはずだ」
「そうね。彼らは、ここで兵力を増強してるのよ。もう一度、国を作るためにね」
私は、魔方陣を書いた紙をテーブルに置く。『
「でも、所詮は烏合の衆。都合の良い建前が崩れた時には、国も崩れる。今の時代はわからないけど、私が『人』だった頃は、それが常識だったわ。
国王であっても教会とズブズブなら、教会の都合で王なんてすぐに廃されんだから」
「それは中世の話だろう? 今の時代は教会の代わりが財閥だろう。金に物を言わせば、元首なんて簡単に思うようになる。
財閥が潰れたら、国なんて簡単に壊れるさ。内部からね」
「皮肉なものね。国を良くしようと集まったけど、その実は欲のぶつけ合いなんてね」
『
「そろそろ行くわ。それと、あれを見失いことね。
「分かってる。それじゃ、また頼むよ」
私は、亜空間に入る『
壁に手を触れ、レンガの壁が開く。無機質な壁の道を進み、また大きな壁にぶつかる。
そして、パスワードを入力すると、壁が大きく開き、さらに奥へと向かう。灯をつけると、そこには台に乗せられた魔術書が現れた。
「やっぱり、これが一番信用できる」
ここにある書籍は全て、『本物のグリモワル真書』である。大体の書籍は、屋上の本棚に置いているが、『本物のグリモワル真書』はここに置くようにしている。
それを狙う魔術師が多く、仮にここが攻められても良いようにしているからだ。
しかし、まだ4冊だ。9冊ある書籍の内、半分は私の手元にあるだけだ。
そうして、私は『本物のグリモワル真書』を読み漁る。気がつく頃には、もう夜が明けていたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます