IRONY BLINDNESS

鳥。

第1話


「おはよう、ゆうちゃん」

「おはようございます…」


 彼はまだ眠そうな目を擦ってゆっくり体を起こす。

 彼は文月 優一郎ふみづき ゆういちろう。率先して仕事をこなしてくれる後輩だ。

 そして僕は水無月 颯斗みなづき はやと。こう言うと毎回ゆうちゃんに汚物を見る目で見られるんだけど、僕は自認の天才。


 僕達は精神科で働いてて、それに伴いカウンセラーもやってる。精神科医とカウンセラーをやる人はごく稀らしいけどね。


 あとは……もういいかな。ゆうちゃんがまた寝そうだし。


「ゆうちゃん、二度寝する気?」

「そんなこと…ないです…よお……」

「もう半分寝てるじゃん………」


 はいはいわかりました、といやそーな顔でベッドから降りた。

 あれでもお昼とかはバリバリ働いてるんだよなあ…と謎のギャップを感じる。


「颯斗さん…歯磨き粉どこぉ…」

「替えのは右の棚だよ〜……」

「あったぁ……」


朝の準備を終え、出勤をする。


「おはよォございます〜」

「おはよけんちゃん」


腕を頭の後ろに組んで呑気に挨拶をしたのは霜月 賢介しもづき けんすけ

マイペースで何事も無関心な子だ。


「けんちゃん、はるちゃんは?」

「晴瑠はァ……どこいったけなァ……」

「困ったなぁ…(´・ω・`)」

「困った?なにかあったんですか?」

「いやぁ…はるちゃんに今日の患者のカルテ預けてたんだけど…」


はるちゃん、というのは師走 晴瑠しわす はる。何事も真面目に取り組む女の子で、けんちゃんとは真反対の性格だ。


「待ってたら来るだろ…どうせトイレだァろ、トイレ」


けんちゃんは…無関心すぎる。逆に心配になってくるくらい…


「ひゃぁ〜っ!!みなさんすみませんっ!ちょっと御手洗に行ってました…、はじめましょう!」

「あ、ほらァ…オレの言った通りだァ、ビンゴだぜ。じゃよろしく」


けんちゃんは足で椅子を回転させ、そのままポケットから携帯を出してゲームをしだした。


「賢介さん、仕事中のゲームはダメと言ったはずです。」

「あァ…?いーだろそんくらい…ログボ回収ぐらいさせたらどうだ?」

「は?ダメなものはダメです。」

「んな本気マジになんなよォ。な、頼むよゆうちゃんセンパァイ」


ヘラヘラしながら携帯を片手におねがいのポーズをとる。


「あなたの方が年上…」

「ウルッセェなコイツッ!!」


ゆうちゃんが真顔で呟いた途端、けんちゃんが大声を荒らげた。


「相変わらず年齢をいじられると怒るんだね〜…(´ω`)」


そういえば〜、今日はわなさんたちが来る日なのかな…確かそうだったはず…。


わなさん、というのは和神木わかなぎわなへる 。

ある1件で僕たちの病院に通うことになったらしい…。

でもわなさんはついでで来てるだけで、本当は四木 龍星よつぎ りゅうせい、りゅうさんがメインなんだけどー…。


「では、私は昨日残ってた仕事に戻ります!失礼しますっ!」


はるちゃんが軽い一礼をしてデスクに戻る。さて、僕も戻ろうかな。


…まだけんちゃんとゆうちゃんは喧嘩してるなあ……。

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IRONY BLINDNESS 鳥。 @Tori0416

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