14.ノン・エンディング《お題:旅の途中》

 僕たちは魔王を倒した。

 ゲームのプレイヤーはラスボスを倒した。


 そしたらその後、どうしようか?


「どうしようもないよ」


 敵を切り伏せ、自問自答する。

 目の前で倒れた敵は、何度も見たことのあるモンスターだった。もう何度も何度も打ちのめした相手。

 この敵を倒す理由は、もう無い。


『レベルはもう上がらない!』


 システムメッセージが鳴ったが、身体は止まらない。

 自分をコントロールしていたプレイヤーは、既に操作を放棄している。

 最終ダンジョン。光の差さない、石壁に囲まれた空間の中。自分はまだ、プレイヤーが最後に残した命令――「戦って、レベル上げ」をこなし続けていた。


『レベルはもう上がらない!』


 それに意味なんて無いのに。


 辺りを見ると、かつての仲間達が冷え切った地面に倒れている。

 体力が尽き、ピクリとも動かなくなっている彼らも、教会に行けばすぐに復活できるだろう。

 ただ、その機会は二度と無い。それを行えるプレイヤーは、居なくなってしまったのだから。


 羨ましい、と思う心情ごと敵を切り捨てた。

 自分は最強の勇者だった。おまけに装備も手厚く揃えられていた。

 攻撃を受けない、受けても体力はほとんど減らない、多少減っても勝手に回復する。

 だから自分だけは決して倒れない。倒れようがない。……倒れたいと思っていても。


『レベルはもう上がらない!』


 敵を倒しながら駆け抜けていると、空間の突き当たりにたどり着いた。

 漆黒の巨大な大扉。この先には魔王がいる。


 彼の姿は、もう長いこと見ていない。

 一時期は何度も戦っていたが、最後の命令を受けてからはこの扉を開けることすら無くなった。

 彼は、魔王は、まだこの扉の先に居るのだろうか。確かめる機会はもう無いだろう。


 このゲームは、エンディングを迎えるとラスボス前まで時間が巻き戻る仕様になっている。

 プレイヤーにとっての物語はそれで終わり。

 でも、自分たちの旅に終わりは無い。永遠に。


 大扉に背を向け、引き返そうとした時だった。

 不意に身体のコントロールが効かなくなり、困惑する。自分の身体は勝手に、大扉を押し開けようとしていた。


『この先に進むと最終決戦だ!

 もう戻れないが、進もうか?』


 システムメッセージを目にしながら、それでも扉を開ける。

 その先に変わらず居た魔王が、自分に気づいて瞠目した。


『また、現れたのか』


 そうだ。プレイヤーが帰って来た。

 言葉は口に出せず、代わりに剣を握る。

 そしてまた、物語は気まぐれに再開された。

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「書く習慣」の作品集 暁野スミレ @sumi-re

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