第17話 別世界へ隔離される
「聞いてないんだが。あの迷宮が目標達成のための神から踏破指定された迷宮より最終エリアの難易度が高いという話は」
「そういえば言ってなかったな、と生徒にはきちんと説明しましたよ。最終エリアは非常に危険だ、と。まあその前の中間エリアを踏破できるかどうかをまず考えないといけないんですけど」
「閉鎖するよ。危険だ。ついでに我々の最大目標は指定迷宮を踏破して神々による人類の滅びを回避することだ。なのにあそこより難しい迷宮の存在に夢中になって目標迷宮に人員を割けなくて期限までに踏破間に合いませんでした、となったら困るんだよ。だからその意味でもあの迷宮は危険だ。迷宮そのものを完全封鎖する」
「まあそれもありかもしれませんね。いや、てっきり求められていた役割はあの迷宮を引率して体験させることだと思ってたんですが意図を読み違えたようで申し訳ないですね」
「意図はあっていたさ。だが君があの迷宮で重要なことを話し忘れていた、というだけだ。おかげで変にあそこに心を捕らわれる生徒が出てしまった。クラス全体が大幅にレベルアップしたという報告もあるがそれをなかった事にしてでも君に依頼したという事実はなかった事にしておきたいね」
「はぁ」
そんなやり取りをしたのを思い出した。
あそこを封鎖するという話についてはまあもう俺も潜る気なかったし別にいいと言えばいいんだがあそこに夢中になる生徒はいるんだな。心折れたかと思ったが案外気骨があるじゃないか。探索者としては良いことだな。よその迷宮でも修行しながらやれば中間迷宮までは案外やれるかも。あとは……
一人の少女を思い出す。迷宮接続の権能を持った少女だ。ソロで活動しているらしく周りには誰もいなかったが一人異彩を放っていた。
あの迷宮に愛された少女が目覚めればあるいはもっと早くさらに奥の最終エリアも……まあその時は超越者認定食らって終わってしまうか。出来ればあの子には先に指定迷宮の方に目を向けてほしいな。多分間に合うとは思うけどギリギリかもしれないと直感が言っている。
まあ、そういう生徒のケアは先生たちがやることだろう。俺が後は何かやるということはない。
「さて、と」
一応うちの教室によってみるかな。特に何があるわけではないけど。
「やあ、化け物君。色々大変だったそうじゃないか」
「いやいや、ここでダラダラするのをお仕事と呼ぶ苦行よりはマシですよ。無能から化け物と呼び方の振れ幅大きいですね。自分より上も嫌い、無能も嫌い。先生許容範囲狭くないですか?」
「ははっ。私は好き嫌いが激しいんだよ。君は無能だろうと化け物だろうとどっちでも嫌いだという話なだけさ」
「そこはお互い好感度一致してていいですね。距離感分かりやすくていいです。じゃ、おらが教室も見たし帰りますね。これからもここに張り付くお仕事お疲れ様です」
「はっ、本性表したじゃないか?」
「最初に生徒の立場として接しなくていいとお許しが出たので。配慮を消しただけですよ、では」
特に何もなくいつも通り、と。まあ何かあっても困るわな。
でもまあ、どうするかな。最近は学生生活優先しろとばかりに仕事も来ないし困る。自分のやらかしでしばらく学園には居づらい。
「どうするかな……」
<ふむ、丁度良いか>
? 今の結構上位の神のつぶやきだったような
視界が急に切り替わった。
「は?」
「は?」
? ついさっき聞いた声が隣から聞こえた気がする。隣を見ると名前も覚えていないEクラスの担任が立っていた。
そして魂が感じている。
現代っぽいけどここ、さっきまで自分がいた世界と別の世界だ、と。
<ここは試練達成が失敗濃厚な世界だよ。違いを見比べてみると良い>
「俺がいたら都合の悪いイベントでも起こしたりする?」
<それ以外にここに飛ばす理由もないだろう>
マジか。おそらく大規模スタンピードでも起こすな。俺がいたら助けて回る可能性が高いから世界から隔離処置しやがったな……
隣の女がどうしてついでに連れてこられたのか分からないけど。
<足手まといがいる方が行動制限出来るからな。出来るだけ生かして帰らせてやれ>
俺の行動を制限するためだけに呼ばれたのか。いや、少しだけ同情した。
「なんで化け物君と一緒にここに私は立っている。どうせ君のやらかしが原因なんだろう? 説明を要求する」
「まあ、事情を知らないのはさすがに酷いか。分かりました。説明します。落ち着いて聞いてくださいね」
「は!? ここは神によって飛ばされた別世界!? 元の世界ではたぶん大規模スタンピードが起きているかもってそれで救助して回るだろう君をあらかじめ隔離するのが目的!? ついでに私は行動を制限する足手まとい扱いか! クッソ腹立つな」
「まあ先生がいるだけでだいぶやりにくくはなるので。死なないようにするのも手間がかかりますし」
「手間? 君の事情に巻き込まれた被害者の私の安全は普通に優先する事項だろうよ! そんな面倒みたいな扱いをするな!」
「でもむこうは結構きつい状態になっている可能性が高いぶん安全さで言えばこっちのほうがずっとましだから巻き込まれた方が命の安全的にはよかったと言えるんじゃないでしょうか?」
「心の健康的にはこっちの方がよほど悪かったと断言できるよ。友人と苦難を乗り越えるのと嫌いなものとの安全ではあるが強制で同行させられるのとでは私は前者を選ぶたちでね」
俺と大差のないめんどくさい奴だな、と思った。
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