暴言サポーターとの出会い
第2話 木原進【Walker】1
高校に入学してからというものの、受けるテストで総合一位を取るのは当たり前。
十分すぎるほどの自信と実績を持つ彼は、勉強が特技と言って差支えなかった。
そんな彼の学園生活はというと、まったくもって充実していなかった。
「おかしい! これだけの偉業を成しているのに彼女の一人も作れないなんてどうかしてる。これは秘密結社の陰謀なのかもしれない!」
「何バカなこと言ってやがる。一年の中間テストが終わってすぐのことを思い出せ」
「たしか総合一位を取って周りのみんなから『すごい!』とか『勉強教えて!』とかチヤホヤされていたはず……」
「その後だよ。水泳の授業で溺れた上に、水着のまま担架で保健室まで運ばれたことを覚えてないのか」
「覚えてない。それどころじゃなかった」
「あの時人手が足りなくて教頭先生が一緒に担いでたんだぞ。夏休みに入るときの先生の言葉で『これから皆さん市民プールや海水浴などに行かれることもあると思いますが、身の安全を第一にしてください』って話してたもんだからクラス全員で爆笑してただろ」
「やめろ! 人の黒歴史を思い出させないでくれ!」
勉強は目に見えない努力の結果、運動は目でわかる努力の結果。
認めたくない気持ちがありながらも、進も自分の得意分野が他者から評価が得にくいものだということは理解していた。
「部活の一つでもやればいいのに」
クラスで唯一、話しかけてくれる陰キャ友達の
なぜなら家に帰ってゲームをやって、配信を見たいからだ。
中でも
「やっぱFPSは最高なんだけど! 結果がすぐわかって、対戦スコアで振り返れるとか本当によくできてるよな~」
最近は『ベータ・リンクス』というゲームにはまっていた。
長い時は休日に八時間以上やり込んでいることもある。
そんなある日の土曜日の一戦のことだった。
Tank:
試合が始まって間もなく自分達のチームからとんでもないチャットが飛んできた。
「はぁ? なんで!」
急いでスコア画面を見てみるが、理由がわからなかった。
味方は続けてチャットをする。
Tank:
Tank:
確かにタンクのキルデス比は一を割っており、死にすぎている印象はあったが、
「いやいや何言ってるんだよ。だってお前、一人で全員からフォーカス食らって死んでるだけじゃん! 暴言吐くなよ楽しくやろうよ!」
タンク自身の自業自得だと、進は思っていた。
「あーもう、ちょっと民度悪いゲームだって言われてるのにこれじゃあまた悪い噂たっちゃうじゃん! サポートとかみんなやりたくないロールなのに、引き受けてるんだから、これじゃあサポートさんかわいそうだよ!」
擁護しようとチャットを打ち込もうとすると、先にチャットが打ちこまれていた。
Sup2:
「サポートがケンカ買っちゃった!」
Sup2:
Tank:
Sup2:
Sup2:
Sup2:
「しかもめちゃくちゃ口が悪い!」
その後はチャットバトルが始まり、試合は見事敗北。
タンクはプレイすることなくキャラの放置状態で幕を閉じた。
「一戦目からこれは気分が悪すぎる」
FPSゲームが浸透してからもう何年も経つが、競争をするゲームである以上熱くなってしまう輩が一定数いるのも事実だった。
それでも気を取り直してと自分に言い聞かせ、二戦目のゲームがスタートした。
「マジかよ」
なんと、さっきの試合で一緒になった暴言サポートが一緒のチームにいた。
そして敵方のタンクには、さっきの試合で利敵宣言をしたタンクがいたのだった。
Tank:
Sup2:
全体チャットで再度ファイトが開催される。
今度は敵同士となって試合がスタートした。
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