第11話 気弱な子供 3
「どうした子供。また出会ったな」
気弱な子供は魔女のもとに訪ねてきた。
「魔女のお姉さん。僕の村はなくなってしまいました。きっと魔物に襲われたんだと思います」
「そうか。それは災難だったな」
「お願いです。村の人たちを生き返らせることはできませんか?」
「できない。死者を蘇らせる魔法は実現できないと、五〇年前に自分で証明してしまった」
気弱な子供は落胆した。
「父も母もいなくなってしまいました」
「そうか」
「虐めてきた子供たちも」
「そうか」
気弱な子供は考え答えを出した。
もっと早く行動するべきだったと思って後悔もした。
「僕の大切なものを奪った彼らを倒したい。でも、怖いんです。だから、どうか私に力をください。魔物に復讐をすることのできる力を」
「それが君の望みか?」
「はい」
気弱な子供の頭に掌を置くと、光が子供の体を覆い、魔法がかけられた。
「君は強靭な肉体を手に入れた。もし魔物を狩りたいというのであれば、夕暮れにこの森の前を通る荷車に乗せてもらい、王都まで行くといい」
「ありがとうございます」
それから月日は流れ、ギルドに所属して傭兵として魔物達や魔族と戦う冒険者となる。
多くの武勲を立てた彼を勇者に推薦する声も多く、やがて王から勇者として魔王を倒し人の世を守る使命を授けられることになった。
「お見事です勇者様。此度の遠征も大勝を収め、さぞ国王陛下はお喜びになることでしょう。魔族の腕をへし折る筋力に、トロルの大木のような胴を一撃で切り裂く剣技、いかなる敵であれ撃滅する姿はまさしく人の希望と言えるでしょう」
「それもこれも永遠の魔女様のおかげだ。それまで私は川遊びもできない気弱な子供だったのだ」
「御冗談を。今のお姿からは全く予想できません。何より永遠の魔女はおとぎ話の伝説の存在です。天使に出会えたという方がまだ現実味がありましょう」
仲間の牧師はケラケラと笑っていた。
勇者の言葉を全く信じてはいない様子だった。
「さて着きました。ここが魔王軍配下の魔族達のキャンプ地です。私達はここで魔王軍への物資供給ルートとその人員たちの無力化をすることです。どのように無力化しましょうか」
「簡単だ牧師。皆殺しだ」
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