第10話 気弱な子供 2

「どうした子供。こんなところまでやってきて」


 黒染めのワンピースを着た白髪の少女がそこにはいた。

 無表情とも言えないような顔で気弱な子供に問いかけた。

 

「お姉さんは誰?」


「私か。私は他人から『永遠の魔女』と言われている。森に住む魔女だよ」


「帰り道がわからない。どっちか教えてほしい」


「それが君の望みか?」


 はい、とそう答えようとしたはずだったが言葉が出てこなかった。


「どうした子供。家に帰りたいのではないのか?」


「わからない。家に帰ったら友達にまた虐められる。いつも虐められるんだ。僕が弱虫だからみんなに虐められる」


「そいつらにいなくなってほしいと思うのか?」


「わからない。虐められたけれど、苦手だけど、いなくなってほしいと思ってるわけじゃない」


 困ったというポーズを見せるように、魔女は腕を組み顎に手をやった。


「私はここに来た人間の願いを叶えることを趣味としている。いくつか叶わぬものもあるが、ある程度であれば君たちの願いを叶えてやろう。子供。何か願いがあるからこの地にやって来たのではないのか?」


「わからない。僕は何をしたいのだろう」


 では、と魔女は提案した。


「人里に降りるまでの道を教えるのは簡単だ。魔法を使わないからそれは願いとして数えないようにしよう。今日はもう遅い。空き部屋に泊っていくといい。夜は魔物が出るから危険だ」


 気弱な子供は諭されるように、その日魔女の家に泊ることにした。


 朝になり、気弱な子供は家に帰ることにした。

 魔女は方向だけ教えて、後は一人で帰ることになった。


 言われたとおりの方向をひたすらに歩いていくと、森を抜けて村に帰れる。


 だが、帰りたいと思っていた村はなくいなっていた。


 焼け焦げた家や畑と無残に散らばる人々だったもの。

 大きいものから小さいものまでいろいろあった。


 衝撃が大きすぎた。

 涙なんて流れる隙もないほどだった。

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