勇気の魔法

第9話 気弱な子供 1

 近くの村で子供たちが遊んでいた。

 何もない草原を走りあったり、橋から川に飛び込んだり。

 農作業や家の仕事がない時には集まってよく遊んでいた。


 気弱な子供が一人いた。

 消極的で自主性は無くて、それでも誰かと一緒にいたいから遊ぶところまでついてくる。


 面白くないと思う子供たちがいた。

 なんのためにいるのか理解できないそれを面白がるために工夫した。

 

 気弱な子供は抵抗しなかった。

 できなかった。

 すれば仲間外れにされると思ったからだ。


 リーダー気質な子供は言った。

「おい弱虫。虐められるのは嫌か」


「嫌だ。痛いのも嫌だ。なぜこんなことをするんだ」


「おまえが弱虫だからだ。見ろ、お前よりひとつ年下の子供も皆、橋から飛び降りて川遊びをすることだってできる。なのにお前はいつも何もせず、そこにいるだけだ。何も面白くない」


 その言葉を正しいと思った。

 だが、認めたくはないとも思った。


「知っているか? 近くの森には怖い魔女が住んでいるんだと。自分がもし弱虫であることが嫌ならば、虐められるのが嫌ならば、夕暮れ時の探検に参加しろ。そうすればお前も仲間だと認めてやろう」


 この負の連鎖が止まるのならばと、気弱な子供はうなずいた。


 段々と日が落ちていき、暗くなってきた頃のこと。

 子供たちは森の近くまでやってきた。


「これから探検を始める! 弱虫じゃないと思うやつらは付いて来い」


 リーダー気質な子供に発破をかけられ子供たちは後に続いた。

 リーダー気質な子供は勇敢で、遊びの天才だった。

 子供たちから好かれる存在だった。

 何をするにしても彼を起点として、すべてのものがなっていた。

 誰も彼を止めるものなどいなかった。


 少しばかり歩いていくと、子供たちは足を止めた。


「よし! 逃げろ!」


 わー、と声をあげながら子供たちは走って来た道を戻っていった。

 気弱な子供は何が起きたのかさっぱりわからず、茫然としていた。

 はっ、と我に返ると、自分が置いていかれたという事に気づいたのだ。


 待ってくれ。話が違うと叫びたかった。

 だが、一人にされた恐怖から走りを乱し、石に躓いて転んだ。


 ひたすら泣いた。

 みっともなく惨めに泣いていた。

 帰り道かどうかもわからないまま、歩き続けた。


 涙も声も枯れて、心も落ち着いていたころ、周りは木々に囲まれていたはずだったのに、一軒の質素なが目の前にはあった。

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