第7話 流れ者の小鬼 3

 魔女は流れ者のゴブリンに魔法をかけた。

 人になる魔法だった。

 体が光に包まれると、ゴブリンの体から鋭い爪はなくなり、牙は犬歯に変わり、肌は緑色ではなくなっていた。


 魔女は魔法で水銀の鏡を作ってやると、その姿を見せてやった。


「ありがとう。これで友に会いに行ける」


 そう言って流れ者のゴブリンは魔女の家を後にした。

 人間の体になると、脚力や体力が下がっていた。

 地面を踏む足に小石はズキズキと刺さるし、大きな体は重く重力を大きく感じさせた。

 だが自然と走り続けることができたのは人間の体特有のものだったのだろう。


 それから二週間かけて牛飼いの男のいる人里までやってきた。


「牛飼いの人。牛飼いの人や。流れ者のゴブリンだ。流れ者のゴブリンがまた会いに来たぞ」


「何を言っている。あなたはどこからどう見ても普通の人間だ」


 流れ者の男は少し嬉しそうに、気恥ずかしそうにしていた。


「僕だ。僕が流れ者のゴブリンだ。魔女に魔法をかけてもらって人の姿に変えてもらったのだ」


 牛飼いの男はとても驚いた。


「はっはっは。これはすごい。仕事が終わったら夕飯でも食べていかないか」


 牛飼いの男は仕事が終わると、家に流れ者の男を招待した。

 夕飯はパンや干し肉、卵料理などあまり豪華なものではないが、ゴブリンだった頃に比べて火の入った食事と言うのは新鮮なものだった。


 暖かな食事が口の中に入ると驚いた様子を見せる流れ者の男を見て、牛飼いの男はケラケラと笑っていた。

 食器の使い方を教え、二人で楽しく食事をとっていた。


 日が暮れ、家を後にしようとすると牛飼いの男が引き留めた。


「その姿で夜は危ないだろう。食事に誘ってしまった手前だ。今日は泊っていくといい」


「ありがとう友よ。ぜひそうさせてくれ」


 流れ者の男は満たされた気持ちになり、幸せに眠った。

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