第16話 トロルトゥース鉱山へ

 ヘッテピさんと合流して、トロルトゥース鉱山へ。


「ヒューゴ。なんか、フルドレンが潜んでるらしいじゃねえか。いいねえ」


 ヘッテピさんは、楽しそうだ。


「セーコ・タンバだ。よろしく頼むよ」


「ドワーフの、ヘッテピだ。伝説のニンジャと組めるなんて、夢のようだぜ」


 セーコさんとヘッテピさんが、握手を交わす。


「長旅だぜ。チビちゃんはいいのかい? 一度、襲われたんだろ?」


 ここから鉱山まで、数日はかかる。一晩では、帰れない。

 

「あの子には、ボディガードを頼んでる」


 前に助けてくれたチンピラ風のレンジャーが、セーコさんの息子を護衛してくれている。セーコさんはちゃんと、依頼料も払っているのだ。


「とにかく、あの鉱山への道を塞がれたら、国交にも響く。一肌脱ごうじゃないか」


 セーコさんが、ナイフを二本抜き出す。


 馬車や徒歩で、鉱山へ向かう。


 途中、鉱山近くの宿で一夜を明かした。


「フルドレン族のめぼしい情報は、得られなかった。しかし、やはり鉱山道を塞いでいる魔物がいるらしい」


「冒険者に魔物の討伐をさせないように、身内を拉致していたようだね」


 宿一階の酒場で、セーコさんとヘッテピさんが情報を話し合う。

 

 鉱山近くの村にある冒険者ギルドも、おとなしくしていたようだ。身内がオークから解放されたことで、活性化しているという。

 ボクたちも、役に立てたのかな。



 翌日、鉱山の中へ。


 鉱山内はトンネルになっていて、広い道の方は王都へと繋がっている。だが、魔物が行く手を遮っているらしい。

 

「そっちは、冒険者に任せるかね」


 ボクたちは、ヘッテピさんの依頼を優先することに。


「ここから先は、地下を根城にするモンスターが多い。不意打ちに気をつけるんだぜ」


「任せてよ。そのための【ファミリア】よ」


 ソーニャさんがペンダントから、ファミリアを呼び出した。


『まぶしいぜー』

 

ファミリアが、全身から光を放つ。


 ダンジョンが光に照らされたことで、魔物たちが姿を現した。

 スコップを持ったモグラや、オオコウモリ、ミミズの化け物がウジャウジャいる。人からすると、悪夢にうなされるかも。

 

「いるな。ゾロゾロと」


 ヘッテピさんが、両手斧を構えた。


「私から、やっちまうよ。【分身】!」


 セーコさんが、魔力で幻影を作り出した。幻影は、一〇体以上いる。それぞれが、分厚いナイフを持って、魔物を斬って捨てた。


 ヘッテピさんは、人よりでかいサソリを相手にする。


「ふん!」


 サソリの分厚い装甲もものともせず、斧の一撃で頭部を粉砕した。


「ゾンビまでいるわね。こちらは任せて。【ブレイズ】!」


 ソーニャさんが、ゾンビの大群を炎の竜巻で焼く。


 ボクも、コウモリやワームの集団を斬り捨てていく。


 だが、ボクの剣は金属製の武器によって阻まれた。

 

「野盗がいますよ!」


「違うわ、ヒューゴ。そいつは、スケルトンよ!」


 ソーニャさんが、野盗の顔面にファミリアを寄せる。


 野盗が被っていたフードから、ガイコツの顔面が覗く。


 スケルトンとなった野盗が、ボクに剣を振り上げた。


 ガイコツなのに、結構強いな。


「どきなさい! ブレイズ!」


 ソーニャさんが再度、印を結ぶ。炎の竜巻でスケルトンを排除しようとした。


 だが、スケルトンは身をかわす。ダメージを負っていない。


「あのフードに、炎防御効果があるわ!」


 そんなすごい防具まで持っているのか。


「だったら、ボクがやります!」


「気をつけるんだよ!」


「はい。【爆炎撃】!」


 ボクは、炎属性の攻撃を敵のフードに叩き込んだ。炎属性といっても、ボクの攻撃はあくまで「爆発」である。

 爆発によって、フードが翻った。


 そこへ、ボクは炎属性の魔法を剣に付与し直して、再び剣をふるう。剥き出しになったスケルトンの身体を、剣で切り裂いた。


 急に、スケルトンの身体が壊れる。

 ボクの足元に、紅色の球体がボトリと転がった。球体には、剣の傷がついている。


 スケルトンをコントロールしていた核に、傷をつけたようだ。

 

「そのフードは、もらっておきなさいよ」


 ソーニャさんが、スケルトンのフードを杖の先ですくい上げる。汚物を押し付けるかのように、ボクへとフードを差し出した。

 

「えーっ。人が使ったアイテムなんて、使いたくないよ。ソーニャさんが持ったら?」


「あたしだって、イヤよ。どんな呪いがかかっているか、わかったもんじゃないわ」


 見かねたヘッテピさんが、「どれどれ」と品定めをする。


「なんの問題もないぜ。アイテムってのは、装備者が死んだら、相手の魔力を吸って新品同然に変わるんだ」


「そうなの?」


「ああ。だからこれも、さっきのスケルトンの魔力を吸ったから、真新しくなってる。安心して身につけなよ」


 それならばと、ボクはフードを拝借した。マントのように、首へかける。


「似合ってるわよ」


「まるでスケルトンになる運命みたいに、言わないでよね。ソーニャさん」


「冗談。ホントにカッコいいから言ってるの。さっきのスケルトンより、断然似合ってるわ」


「あ、ありがとう」


 ソーニャさんが、人を褒めるなんて。


「それにしても、あんたの攻撃よ。応用を利かせるなんて」


「まぐれだよ。別に、狙ってたわけじゃない」


 竜巻でフードが浮き上がっていたから、爆風だともっと翻るかもって考えただけである。


「だが、油断はできねえ。こんなアイテムをスケルトンに使わせるなんてな」


「やばいやつが、この鉱山には潜んでいるかもしれん」

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