【一章完結!】クラスのギャルに『わたしのママになって!』と言われてVTuberのデザインを始めたら、いつの間にか俺も一緒にVTuberになって人気が爆発した件。
25話 はろーはろー。夕凪ほたる、初配信!
25話 はろーはろー。夕凪ほたる、初配信!
マイク良し、配信画面良し、機材トラブルも確認できる限りでは無し。
全てのチェックを終えた彼女は、緊張とともに配信開始のスイッチを押し──
──VTuberとしての彼女の初配信が、スタートした。
『来た!』『Hotaruの配信楽しみ』『歌超上手いけど配信はどんな感じなんだろ』
『というかあのオリ曲は何!?』『オリ曲の女の子の一人がHotaruってことだよね』
『他の子達は何者なんだろ、気になることがありすぎる』
期待と疑問、様々な感情を持って待ってくれているリスナーの前で。
しばしの暗転から配信画面に映り──出てきたのは画面いっぱいの彼女の顔。
画面の半分を顔面で埋め尽くした彼女は、そのまま大きく息を吸って。
「はろ────────!!」
『うぉわ!?』『びっくりした』『すごい声』『一応音量注意ってそういうことか』
『初手ガチ恋距離&鼓膜破壊とはやるじゃないか』
なんともインパクトのある初手挨拶をかましたのち、ずいっとほぼ上半身が映る程度までアバターを縮小、所謂『初配信スタイル』のサイズまで戻してから、改めて。
「というわけで初めまして! 楽曲から来てくれた人はありがと、楽曲込みで完全初見の人はようこそ!
歌い手Hotaru改めVTuber夕凪ほたる、本日デビュー配信です! はろーはろー!」
『デビューおめでとう!』『はろー、ってのが挨拶なのかな、いいね』
『声可愛い!』『歌の時は結構格好良い寄りなのに、配信時の声可愛いの最高』
「わーありがとー! 正直びっくりしてるし緊張してるんだよね、思ったよりもずっとたくさんの人が来てくれたからさ」
『そりゃそうでしょ』『元々歌でも注目されてたししかもあの曲もあるし』
『本当に十五歳なの!?』『あの曲の他の方々はどなた!?』
「うん、オリ曲見てくれてた人も結構いるね! それもこの配信で順番に話していくから、まずは自己紹介からさせて欲しいです!」
明るく言って、用意してきたスライドの準備を開始する。その間にもコメントは流れ続け、『元気系の子なのかな』『陽の気配がする』『普通にいい子?』との、彼女の人柄を推測するものが散見された。
「改めまして、名前は夕凪ほたる! 職業は高校生兼冒険家、好きなものは知らないこと、やったことないことで……そういえば嫌いなもの書いてなかったな、何が嫌いだと可愛いか次の配信までに考えとくよ」
『草』『考えるんかい』『愉快の片鱗を見せてきたな』
「それで、さっきコメントでもちらっと見たけど……年齢は本当に十五歳、今をときめく絶賛女子高生だよ! でも、それを証明しろって言われてもバーチャルだと難しいんだよね……」
『それはそうね』『バーチャルだと年齢自由だから』『信じるよ!』
『ほんとに十五歳でござるかぁ~?』
「信じてくれた人はありがと! でもうんうん、やっぱりそういう意見もあるよねぇ。というわけで……やっぱりある程度の証明は必要だと思って。だからね」
優しい意見もありつつ、いじる系の意見もありつつ。予想通りのコメント欄に感謝しながら、それを受けたほたるはこの上なく明るい声色で。
「証明のために──今からわたしと同い年のアニメを発表していくよ」
『うわああああああああ!』『やめろぉ!』『それオタクの急所!!』
『十五年前って絶妙にクリティカル!』『この上なく自分の年齢活かしてきやがった』
『おい年齢疑ったリスナー出てこい貴様のせいだぞ!』
『今悟ったわこいつやべー奴だな!?』『撤退! 撤退!』
一瞬でコメント欄が阿鼻叫喚の嵐と化した。
「えー帰っちゃうの……? もうちょっとだけわたしと居てよー」
そして咄嗟にブラウザバックしようとするリスナーをここぞとばかりに可愛らしい声で引き止めたのち、一切の容赦なくスライドの発表を開始した。
「えーっとまずは有名どころだとこのアニメだね。後はわたしは見れてないんだけど、こんなのも当時は有名だったみたい。あ、これならわたしも知ってる! 昔のアニメってこんな感じだったんだーでも面白いってなった記憶あるよ!」
『うぐっ、ぐあっ』『分かった、反応の節々から分かったから!』
『間違いねぇこいつは本当に十五歳かとんでもねぇ役者かの二択だ!』
『初見です。当方十五歳ですがこのアニメが十五年前はあり得ませんぞ間違いでござる』
『上コメお前は絶対に十五歳じゃない』『流石にそれは嘘だよホタル』
「続けてわたしと同い年の曲も発表するよ! 流石に曲だと知ってるのも歌ったことあるのも多いね! えっと……この頃の曲って別の動画サイトがメインで投稿されてたんだよね。コメントも横じゃなくて画面に直接流れてくる仕様で、それを利用して画面を彩る職人さんが居た、って先生から聞いた!」
『先 生 か ら 聞 い た ぁ !?!?!?』『俺の青春だったあの動画サイトを、先生から……』
『やめて! リスナーのライフはもうゼロよ!』
『同い年のコンテンツ発表ホタゴンにコメ欄が蹂躙されていく……』
『でも目が離せない』『ここまで分かりやすく“本物“のJKの反応を見せるとは』
『恐ろしい女やで……』『これはとんでもねぇ新人が出てきやがった』
発表している間、コメント欄はこのような悲鳴をあげるリスナーと純粋にそうなんだと思うリスナー、年齢により二極化する大変な盛り上がりを見せた。
……とまぁ、このような感じで。
真面目に可愛らしく自己紹介や挨拶決め等を続けながら、時折このように凄まじくぶっ飛んだネタを盛り込むことで、リスナーからの印象も、
『基本は年相応の明るくて良い子だがちょいちょい狙ってクリティカルパンチを撃つ』
『V特有のやべー要素もちゃんと持ってる可愛い系の正統派』
『時折言動がぶっ飛ぶ陽キャギャル』
辺りに概ね固まってきた頃合いで。
「それじゃあこの辺りで……例の曲と、配信前にもらったコメントに回答していくコーナーに映るよ!」
予定していた次のコーナー……一部のリスナーにとっては知りたかったことを開示するコーナーへと移行した。
まずは、スライドに例のオリジナル曲のサムネイルを乗せて。
「もう聴いてくれた人もいるみたいだけど……昨日、こんな感じのオリ曲を投稿したよ! すごいざっくり言うと、このサムネに居るわたし含めた四人の子が冒険する感じの曲! これからの話にもちょくちょくこの話題が出てくるから、もし気になる人は配信終わった後でもいいから聞きに行ってくれると嬉しいです!」
『はーい!』『やっぱり真ん中の子ほたるか』『曲すごい良かった!』
『絶対聞きたいこと質問で届いてるだろうから待ってます』
期待値の上がるコメント欄に感謝を述べてから、曲のサムネイルを縮小して空いたスペースで、事前にSNSで募集していた質問を並べていく。
「まずは……『なんて呼べばいいですか』ね。基本は悪口じゃなければなんでもいいよ! ほたるでもほたるでもほたるでも!」
『草』『一択で草』『ほたるって名前気に入ってるのは分かった』
『実際良い名前だと思うので遠慮なくほたるちゃんと呼ばせていただきます』
「次に、『どんな活動をしていきますか、ゲームへたっぴ系ですか?』。基本的には普通にゲームとか歌とかかな。定期的に歌枠を取りつつ、やりたいゲームをしていく感じ。わたし自身はゲームそこそこ上手い方だと思うから、へたっぴ要素は……別の方で、かな」
『王道を行く感じね』『さらっと言う感じ普通に上手そう』
『お』『別の方で、とは!?』『あの四人はやっぱり……!?』
そんな感じで一問一答を続けつつ、意図的に最後にした質問二つに取り掛かる。
「それで──実は意外と多かったのが『ガチ恋OKですか!?』系統なんだよね。これね……割と回答に困るんだよね……!」
『まぁ、ねぇ』『マジもんの十五歳だと分かってしまったからな』
『ガチ恋だと知れるとまずそうな年齢層がかなり広くなってしまった』
「そう! 今コメントで言ってくれたような懸念があるから、好きになってくれるのはすごい嬉しいんだけどガチ恋まではおすすめはできないかも……! それと、もう一つ理由があって、次の質問の後にその理由も分かると思う!」
そうして、いよいよ最後の質問。
「『例のオリ曲、全部ほたるちゃんと同じ高校の人が作ってるってマジですか!?』。
これ、もう一度はっきり言うね。──マジです!!」
『マジなの!?』『すげぇ』『どんな高校だ、芸術系?』
『最近の高校生ってとんでもないんだな……』
「それでね、今余裕がある人はオリ曲の概要欄も見てくれたら分かると思うんだけど」
そこで、再度スライドに戻って──とある、三つの名前を表示する。
「ボーカル:夕凪ほたると……作詞作曲:昼神ユキヤ、キャラクターデザイン:暁原カガリ、イラストサポート:夜紡あおい。ムービー等の電子魔法研は除くとして……名前からしてVのわたしと関係ありそうなのが、わたしの他に『三人』、居るよね?」
『おお!?』『やっぱあの四人はそういうこと!?』『え、同じ学校で!?』
「はい、予想がついたところで──どんっ!!」
最大限まで焦らしたところで、いよいよほたるはそれを表示する。
──ファンタジー背景に、並んだ四人の少年少女。
魔法使いの少女、ローブの少年、冒険家の少女、戦士の少年。
それぞれ下に夜紡あおい、暁原カガリ、夕凪ほたる、昼神ユキヤ。
極め付けは右下に金色で『Alter’d』とロゴ付けされた美麗な一枚絵。
それが何を意味するかは最早明らかで──満を持して、それをほたるが発表する。
「この通り! わたし夕凪ほたるをリーダーとしたユニット、名前はAlter’d!
あの曲に関わってくれた三人も──近日VTuberデビューします!」
『えええええ!?』『マジで同じ学校系VTuberグループってコト!?』
『これはすごい、どんなんになるんだろ』
そこで、ありがたいことに一気にコメント欄が活性化する。
「そゆこと! 基本はみんなわたしの配信に来てくれるレギュラー扱いで、顔合わせ配信もここで行うよ! だからこれからここは、夕凪ほたるチャンネル兼Alter’dチャンネルってことになるね!」
『どんな子なんだ……?』『まだ分かんないけど、この子の仲間ってだけですごそう』
『ガチ恋難しいって理由も分かった、見るからに男もいるもんな』
「身内贔屓かもだけど、みんな個性的で面白い子たちだよ! 具体的にはこんな感じで、ママな男の子と、声がわたしと同じくらい可愛い男の子と、わたし好みの先輩の女の子」
『草』『手書きテロップを足すな』『情報だけでインパクトがすごい』
「正直三人とも個性的すぎてあの……わたしが霞むかもしれないから、何回かソロ配信挟んでわたしを印象付けるっていう姑息な手法を取らせてもらうんだけど」
『更に草』『本当に姑息で草』『今すぐ見せろ』『左端のショタっぽい子気になります』
『さっきちょろっと出したゲーム下手要素絶対右端の魔女の子だ』
「来週には一人ずつ顔合わせ配信を行なって、そっからが本格始動! 同じ高校の創作系高校生VTuberユニットとして……たっくさん楽しいことやってくから!
だから、気に入ってくれた人はまた来てくれると嬉しいです!」
『はーい!』『絶対見る!』『他の子も楽しみ!』
『ほたる単体も勿論気になってたけど、四人組ってので視聴継続決定した』
その後、諸々の告知等を済ませた上で、軽くコメントとの雑談を挟み。
「それじゃあ初配信はこんな感じで! 最後にお決まりの──チャンネル登録高評価、SNSの通知フォロー等々お願いします! それじゃあみんな……ぐっない!」
『ぐっない!』『初配信お疲れ!』『これは楽しみな子が現れた』
『歌も良かったけど配信も面白そう』『まずは他の三人が出るまで正座待機します』
こうして、夕凪ほたるの初配信は終了した。
反応は上々。元々持っていた彼女の話題性に加え、可愛らしく良い子でありそうながら時折何かの片鱗も感じる配信者としての雰囲気、そして何より彼女が発表した同じ学校でのグループVとして四人で活動するというインパクト。
SNSでもちらほらと言及する声が見られ、歌からの固定ファンもつきつつ今後に期待する雰囲気もありつつの、中々に悪くない滑り出しとなった初配信。
──これが、静かな始まりだった。
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