幕間3 Alter'd雑談リレー配信 夜紡あおい

 Alter’d、他メンバーが絶対聞かない雑談リレー。

 三番手となった夜紡あおいは、唯一の先輩枠かつ後半ということもあってか比較的慣れた様子で質問を捌いていった。

 ……とはいえ、彼女もAlter’dの一員。質問の回答自体では個性を隠せるはずもなく。


「『なんでそんなにチョロいんですか。何か特別な理由とかあるんですか!?』。ぶっとばすわよ? 特別な理由も何も……そもそもそんなものある方がおかしいわよ!」


『ほうほう』『というと?』


「だって──普通褒められたら嬉しくなっちゃうでしょ!? それが誰からだろうと何度だろうと! 慣れるとか受け入れられないとかの方が私には分からないの、作品はもちろんだけどそれ以外でも褒められたらなんだって喜んじゃうのよ私は!」


『草』『かわいい』『幼女かな……?』

『あおい先輩、経験的にも立場的にも四人の中で一番上なのに一切そんな感じがない』

『間違いなく原因はこれやろなぁ……』

『褒められ慣れてるはずなのに初心な反応しちゃう先輩、これは愛される』


 ユキヤのポメラニアンに並んで彼女がチワワと評されるのはこの辺りが理由だろう。


「はい次! 『なんでそんなにゲームが下手なんですか!? 天才的だと思います!』。私の質問こういうやつしか無いの!?」


『きっとそうだと思うw』

『多分こういうやつしかない、こういう突っ込みどころがありすぎるんじゃ……』


「私が下手なんじゃない、私以外が上手すぎるのよ! そもそも人間なんて自分の指すら精密には動かせないのにあろうことかコントローラーを握ってとか! 自分以外の道具を握って精密に操作できる人の気が知れないわよ!!」


『あの先輩、漫画家ですよね?』『ペンを精密に操って絵を描くお仕事ですよね?』

『しかも高校二年で連載経験ありっていうどう控えめに見ても超天才有望株ですよね?』

『マジで先輩にとってはペンだけがバフアイテム説、信憑性出てきたな……』


 主に彼女の見せた日常をいじる系統の質問が今回は多い。『存在が漫画のキャラ』と呼ばれるほどの尖った得意不得意を持つ彼女ならではだろう。

 ゆるい雰囲気で進みつつ──こちらも本命の結成経緯へと移る。



「ここからはAlter’dの話ね。私にきてた質問は……『まず弟子のカガリくんとの馴れ初めをお願いします!』。……まぁこれ関連よね、ていうかこれ関連異常に多かったわ」


『まぁそうなるわな』

『このチャンネル、メインだと基本的にほたるが回すからね』

『必然的にこういう場ではほたるが絡まない関係性を聞きたい人が多くなるのよ』

『特にその中でも一番色々ありそうなカガあお師弟は尚更ね』


 視聴者の言葉にも納得しつつ、彼女も質問に答え始める。


「一応カガリから聞いてるとは思うけど、最初はあの子が私のいる漫研部室に突撃してきたところからね。そんでいきなり『二ヶ月でほたるのキャラデザできるようになりたいんで教えていただけませんか』って頼み込んできて」


 その時の素直な感想を、にっこり笑顔であおいは語る。



「──とりあえずぶん殴ってやろうかと思ったわね」



『草』『そりゃあねぇwww』

『本職からすればそりゃ舐めてんのかってなるわなw』


「ま、と言っても私もやる気のある新入生なら教える気はあったし、ちゃんと諸々伝えてもめげずに頼んできたから教えることにはしたわ。……正直その時も、あんまり期待してはいなかったんだけど」


『でもしっかりついてきたのよね』

『頼むまでならできるかもだけど、しっかり喰らいつけたのがカガリのすごいとこ』


「ええ、そこからの粘りは私も驚いたわ。今まで教えてきた子たちの誰よりも頑張ってた。それは認める。でも……」


 そこで、一旦言葉を区切った上で一言。


「……やっぱり、やる気それだけで全部補えるほどあの子の目標は甘くなかった」


 目標とする二ヶ月の半ばを過ぎてから起こった例の件を思いつつ、あおいはそう述べる。

 が──そこで、コメントが予想外の動きを見せた。


『そう、そこから聞きたかったの!』『そこから詳しく!』

『その後の件普段の配信でも聞かなかったし、カガリからも聞けなかったし』


「へ?」


 驚きに目を見開いた。

 普段の配信で聞かないのは分かる。だが──カガリから聞けなかった、とはどういうことだろう。それこそ彼のリレー配信で語るべき結成の話なのではないか、と。

 そう思ったが……疑問の答えも、即座にコメント欄からもたらされた。



『カガリが、そこから先はあおい先輩から聞いてほしいって言ったのよ』

『あおい先輩に語ってもらうのが一番適任なんでごめんだけど二日待って、って』

『そう! だから二日間正座待機してた!』



「──」


 彼が、そうした意味。

 このリレー雑談配信は各々が同じ結成秘話について語る以上、どうしても後の方が内容被りのリスクが大きくなる。それに対する配慮……に、加えて。

 そこから更に踏み込んだ、カガリのあおいに譲った意図も正確に理解する。


「……あは。ほんと、生意気な後輩ね」


 呆れの混じった笑い声と共に、あおいはそう告げて。


「そ。じゃあ、後輩のパスに答えてお話しさせていただくわ。カガリが修行を続けて一月ちょっとの後に起こったこと、そして──」


 その件を包括するこの一言から、語り始めるのだった。


「──私が、ちゃんと『先輩』になった時の話から」




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


次話より、一章結成編後半に入ります。話も動くので、ぜひ読んでいただけると!


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