・・・おかしい。

男はそう感じた。

男は視える側の人間であった。

それ故に気を付けて、行動をしたはずだ。

──なんだ。あれ?

思わず、そう声に出た。

都市伝説。

そういったものは嫌いではなかった。

自分が関わってこなかったから。

いざ関わるとなると足がすくむ。


──菴輔@縺ヲ繧九??


やつはそういった。

男はおかしいと思った。

男が今まで見ていたのはあくまで幽霊であったからだ。

それはちゃんと人の形をしていた。

多少傷などがある霊もいたが、それでも人なのにはかわりなかった。

声も、見た目もこの世のものとは思えなかった。

男はおもわず、目を閉じ深呼吸をする。

そしてゆっくりと目を開ける。

しかし、奴は消えない。

というより、ずっと目線の先にいた。

横を向いても、後ろを向いても常に一定の距離をもって奴はいた。

どの方角に向いてもいるのに動けるはずがなかった。

だが、逆に動かなければ大丈夫だろう。

男がそう判断した時だった。


────驕翫⊂


そう奴が口にした。

「あ、あれ?」

男は急に何も感じなくなった。

目はちゃんと機能していた。

機能していないのは視覚以外の五感と身体。

金縛りというやつだろうか。

さっきまで動いていた気がしていた口も動く気配がない。

男は思う。

これで終わりなのではないかと。

霊らしき何かが目のまえにいて尚且つ、そいつを基準に怪奇現象が起こっている。


────縺倥c縺ゅ?∬。後¥縺ュ


奴がそう言った時、男に近づいていくのがわかる。

できるなら、目を瞑りたい。

ただ、体はそんなことすらさせてはくれなかった。

「大丈夫ですか?」

突然のことだった。

少年の声がした。

その子の声がした瞬間奴が消えているのも感じた。

そして徐々に体が解放されていくのを感じる。

体が動かせるようになった男が最初にしたことはうずくまることであった。

怖い──

そんな男に少年は何も言わずよりそった。

少し時間がたったあとに新しい声がした。

「志郎。いますか?」

その声は中性的だったが、そんなことよりも男はおびえた。

声の先には不気味ともいえる人物がいたからだ。

人の形をしている幽霊なのかと思うが、それは自身の目が否定していた。

でも、その声の人物が到底"人"とは思えなかった。



「・・・へぇ。」

常世は思わず、ほくそ笑んだ。

しかし、その顔をすぐに戻して被害者らしき男に声をかける。

「私、実はこういうものでして。」

そういって名刺を渡す。

相手の男はおびえながらもその名刺をとって名刺を確認していた。

「常世さん?あのー。この人・・・。」

「ええ。大丈夫でしょう。しばらくは印象に残っているでしょうけど。よろしければ、記憶・・・消してあげましょうか?」

常世の提案・・・記憶の忘却は確かに魅力的な案だったが、男はすぐに首を横に振った。

絶対に何か別のことがあると感じたからだった。

そんな男の様子を見て常世は言う。

「そうですね。では、この神社に行ってみてください。それなりに信用できる場所ですので、私からの紹介だと言ってくれれば大丈夫ですよ。」

常世はそう言いながら、別の方向へ向く。

「志郎。行きますよ。彼は少なくとも、今日は襲われませんので。」

「うん。わかってる。」

ついて行けない男を置いて二人は暗闇へと消えるのであった。

男はその日はすぐに家に帰って閉じこもるようにすぐにベットに入り寝た。



「あの、常世さん?」

「はい?」

志郎は思わず、そう声に出した。

先ほどの間に違和感を感じたからだった。

「あの被害者。すごく常世さんに対しておびえてるみたいだけど・・・どういうことなんですか。」

常世は感心するように志郎を見て言う。

「僕はね。少々特殊でね。ああいう風に視えるだけの者が僕を見るとああなることが多いんだ。」

常世はそう言いながら、前を見てどこからともなく書物を取り出した。

────豁サ縺ォ縺溘>縺ョ

奴が現れた。

その姿は黒く。

そして先ほど違い、怒りを表すように頭らしき部分のみでかく膨らんでいた。

「志郎・・・! 」

それは志郎からすれば、珍しい声の出し方であった。

「え??」

べちゃ、と音がなった。

静かな夜だったせいか、音がよく聞こえた。

そして志郎の顔には鉄のにおいがする液体がついていた。

「常世さん・・・?」

志郎の目線の先の常世には体に大きな穴が開いていた。

しかし、常世はそれがなかったように相手に向かって走り出す。

鎖が書物から出てくる。

その鎖は志郎が見たことがあるような色の一般的なものではなく、血のようでいて黒い鎖であった。

────縺ェ繧薙〒?

奴はそう口にした。

そして同じように志郎も口にした。

「なんで?」

黒い鎖で奴を縛った常世の体にはすでに穴はなかった。

それどころか服すらも何もなかったように傷すらついていない。

常世は奴を書物に捕まえることはなかった。

否、捕まえられなかった。

なぜなら、そのときすでに黒い鎖によって霊らしき何かは肉塊へと変わり果てていたからだった。







______________________________________



後書き的なやつ

こんな感じで被害者のあとに常世たちが基本スタイルになると思います。

まあ、被害者シーンがカットされる場合やそもそも常世たちがほとんどでないバージョンも用意するつもりですが。


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