失踪樹海


とある樹海には警察などの捜査員であふれていた。

なぜ、この場にここまで人がいるのか。それにはちゃんとした理由があり、この樹海に入っていったとされり人々が次々に行方不明となったのだ。

だが、捜査も終わりを迎えようとしていた。

なぜなら、捜査員の複数が行方不明になったためである。

そしてこの樹海は封鎖されたのだった。


そんな中まだ樹海で動く者がいた。

「・・・濃いね。」

謎の人物・・・いいや、私立探偵"常世"は行方不明者についての依頼を出されたので駆り出されたのだ。

ただの探偵では何もできないだろう。だが、この探偵はこういう類いのものを主に活動していたのだ。

「せめて死体でもいいから確認したい、か。この気配じゃ、残ってるかわからないね。」

独り言ように常世は言う。

それは依頼主の願いであり、まだあきらめていない恋人だった者の願いであった。

常世は睨むように前を見る。

その目線の先にはまさに異形ともいえる腕を体中に生やした化け物であった。

だが、初めは睨んだ常世であったがすぐに視線を戻し前を歩く。

何もきにしない。

一般の人であれば、このような行為は難しいかもしれないが常世にとっては難しいものではなかった。

だが、一般的に怪異又は妖とされるこの化け物は歩く常世の後ろについて言う。


『私、生きてる?』


見た目の異形からして生きているとは言いがたいものの常世が反応することはなかった。

反応をする利点がないからだ。

狙っているのはこの化け物ではない。

なにせ、気配の主ではないのだ。ただのお邪魔虫である。

だからと言って常世に戦闘アニメや戦闘漫画のような戦闘ができるほどの戦闘力などは存在しない。

何も運動をしていない人よりかは動ける自信こそあるものの常に運動をしている人々と比べたら数段劣ると思われる。

では何か超能力的なのもっているのか。答えはもってはいる。だが、それは地形を破壊できるようなそんなものではなかった。

しかし、邪魔なものは邪魔である。

常世は書物を取り出す。

「・・・空いてるね。」

常世はそういうと"目"を見開く。

"目"常世が化け物を視認すると同時に変化していていく。

不気味ともいえた摩訶不思議な黒い"目"に次第にバツのような線が現れる。

すると、"目"からは泥のようなものが溢れてくる。


『・・・あ"?』


いつの間にか常世の目の前にいた化け物は消えていた。

すると、今度は書物の一つのページが歪んでいく。

そこには先ほど、常世の目の前にいた化け物がいた。

「これでよし。・・・やっぱりこっちの"目"を使うのは控えた方がよかったかな。」

"目"は消耗が激しいのか代償があるのか。それは常世以外わかるものではない。

だが、"目"にはこれ以外にも何かしらの"力"をもっているのは明らかであった。

だが、それを気にすることはなく常世は奥へと歩いていく。

数分

数十分

数時間

ひたすらと歩いていく。

だが、景色がかわることはない。

「すでに招かれたかな。」

常世はそう言いながら書物を開く。

ページを開いていく中でそのほとんどが鎖のようなもので防がれていた。

だが、中にはその鎖がないものがいた。

その鎖がないページに常世は手を入れる。

出てきたのは小さな鬼。

わかりやすくいうと餓鬼や小鬼だろうか。

その小さき鬼は常世を見るとまるでなついた犬のごとく常世にすり寄ってくる。

それを見た常世は小さき鬼の頭を撫でながらいった。

「出口を探して。」

ただその一言である。

だが、通しているのか意図を理解したらしき小さき鬼は常世を案内するように歩いていく。

常世は小さき鬼について歩く。

しばらく歩けば、先ほどまで日が差し込んでいた木々の姿はなく。

月光の下の木々で人々が首を吊っている場所に行きついた。

常世はその風景に表情を崩すことなく歩いていく。

依頼主の相手を探すためだ。

常世にとってそれ以外はどうでもよかった。

生きていれば、注意が惹かれるかもしれないが、首つり死体である。

死人に口なしとはこのことだろうか。

いわば、樹海の奥の首つりスポット。

そんな空間である。

「妙・・・だね。」

濃い瘴気と気配の大きさから十中八九この周辺にいると常世は確信していた。

それなのに見当たらない。

すぐさま書物を出し、小さき鬼を回収する。

場合によってここで消滅してしまう可能性があったからだ。

小さき鬼に悪霊や大妖というほどの力はないからだ。

首つり死体が並んでいる道を歩く。

誘われていることは明らかである。

だが、道の中の死体には依頼主の探し相手はいなかった。

なら、まだ生きているの可能性があるのでは?と思いながら進む。

進んでいくにつれ首つり死体が少なくなっていく。

幻覚なのだろうか・・・気が付けば、残った数少ない首つり死体全てが片目がかけており、そして何よりも笑っていた。

常世は自身に異変を感じる。

息がしにくいのだ。

まるで縄で首を絞めているのかのような。

気が付けば常世は首を吊っていた。

いつからかはわからないだが、少なくとも一般の人であったら気づかずに死んでいたものがほとんどであっただろう。

急いで縄を解こうとする常世であったが縄に力をいれればいれるほど首を絞める力は強くなっていく。

そして気が付けば、腕の感覚がなくなっていた。

手先から肘までの感覚がなくなる。それは動かせなくなったことを意味し、いうなれば絶体絶命であろうか。

だが、首が締まっているのにも関わらず常世は冷静であった。

奥から気配の主が現れたからだった。

一言で言い表すのならてるてる坊主だろうか。

しかし、顔と言えるようなものは血で滲んでおりさらにいえば、大きさは三メートルくらいに及んでいた。

妖や怪異よりも怨霊に近い存在だろうかと常世は思いながらてるてる坊主を見る。

そして"目"を使う。

だが、今度は"目"の中にバツの模様が浮かぶようなものではなかった。

"目"に渦が巻いていく。

それに驚いたのかてるてる坊主は後ろに下がっていく。

「・・・もう遅い。」

常世を縛っていた縄はいつの間にか消えていた。

そして腕の感覚も戻っており、常世は書物を取り出す。

一方てるてる坊主の方は逆に縄で首のようなものを縛られており、抵抗ができずにいた。

先ほど使った"目"の力はいわば、呪詛返しである。

だが、その代償か常世の耳や口からは血のようなものが出ていた。

「やっぱり、何も備えなしでいくのは無茶だったかな。・・・せめて何かしら情報はもっておくべきだった。」

そういいながら、てるてる坊主を書物の中に入れた。

そう言いながら常世は歩いていく。

「いた。」

もらった写真と一致する人物を。

死体としてはそこまで時間がたっていないようで まだ真新しさがあった。

そして樹海を出る時てるてる坊主がいるページを開く。

そしてそのページを常世は睨む。

その目線の先ではてるてる坊主のページがガタガタと震えていた。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

常世帰らぬ、鬼灯鳴るまで ロールクライ @hedohon15zzz

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ