第11話 それぞれの課題

「すき焼き祭り」の翌日、三人は各自部屋にこもり、それぞれの課題について考えていた


次のダンジョン攻略は3日後、これは3人の保護者のうちの一人でも休みのタイミングを狙うと、必然的にこうなった


ちなみに、次の監督者は渚(波留の母親)に決まった


◇ ◇ ◇


蓮side

「さて、次からの戦闘をどうすべきかな」


蓮は初日のリトルボアへの「クリティカル」が偶然の産物であるという事を理解していた


というのも、「鼓舞」によって”知力”が上がったところで相手の行動の全てを予知することはできず、ある程度の予想しかできないというのを「鼓舞」の被体験者として理解していた

つまり、初日に出た「クリティカル」は蓮が見た予測と一致していたからこそ発動できたものであり、リトルボアよりも複雑な動きをするモンスターに対しては初日ほどの効果を期待できないものという事も理解していた

だからこそ、蓮は”俊敏性”にステータスを振ったし、「クリティカル」の発動確率を1%でも高めることが出来るように振り分けた


けれど、いくら少し俊敏性を上げたとしても、すぐに「クリティカル」が強スキルになるはずもなく、まだまだ捨てスキルになっている


蓮に関しても波留の「鼓舞」が無い状態では「クリティカル」を意図的に発動させることはできない

それに、「鼓舞」が付与されていたとしても、あの時のような状況に持っていけるかどうかはわからない


蓮達は3人PTだから蓮一人ですべてを出来る必要はない。それでも、一人で出来ることを考えないというわけにもいかない

もし、何かが原因で付与スキルが使えない環境だったら?一人で倒さなければいけない状況になったら?そういった可能性もゼロではないからこそ、出来ることはしなければいけないのだ


「さて、マジでどうしよう」


まだまだ答えは見つかりそうもない


◇ ◇ ◇

香織side


「これからどうしよう」


蓮が一人で悩んでいる時、香織も一人でこれからについて悩んでいた


実際にダンジョンに入ってリトルボアと戦って、香織は自分のどうしようもない弱点に悩んでいた


「やっぱり、怖いわよね」


リトルボアと対面した時、蓮がリトルボアと戦っているのを見たとき、リトルボアが自分に向かって攻撃をしてきている時、香織はずっと恐怖を感じていた


これまでの日常ではなかった、少しのミスで怪我をしてしまうかもしれない状況、それに、最悪の場合では命を落としてしまいかねない状況。これらは香織が恐怖を感じるには十分すぎるものだった


というよりも、蓮と波留が異常なのだ。一般人の感覚で言うと、目の前にイノシシがいて、今にも突進してきそうなときに、性能のわからない猟銃を手に立ち向かっているようなものだ


もしかしたら、今持ってる銃から玉が出ないかもしれない


少しでもその考えがよぎってしまうだけで戦えなくなってしまうのだ

実際、初めて魔法を打った時は一撃で相手を倒すことが出来なかったので内心ではかなり焦っていた。おそらく、あのあと、波留の「鼓舞」が付与されて”知力”が上がって冷静になれていなかったら戦えなくなっていただろう


これからもダンジョンの攻略を3人でしたい


この気持ちに嘘はないが、これからの攻略でもっと怖い場面に出会うことも多いだろう

その時に如何に冷静でいられるようにするか、解決するまで時間がかかりそうなものに香織はずっと悩まされている


◇ ◇ ◇

波留side


「さて、初めてスキルを使って分かったけど、「鼓舞」は便利だね」


2人が悩んでいるのと同じころ、波留も一人でダンジョンを攻略していた時を思い出していた


正直、初めてスキルの内容を知ったときは3人の足手まといにしかならないと思ったし、このスキル達でダンジョン攻略をするなんて無謀だと思っていた


けれど、実際に戦ってみると、どちらのスキルにも使い道があった


特に「鼓舞」については意図していない効果を発揮した


全ステータスを向上させるといっても、それは身体能力や、魔力量、魔力操作くらいだと思っていたが、”知力”という数値で表すのも難しい要素までしっかりと向上していた。それはつまり他の要素、例えば、とてつもなく”視力”が良い人間が「鼓舞」を使用した時、付与された人間はその”視力”の恩恵を受けることが出来る

それは、先天的、後天的に関係がなく恩恵を受けれるということだから波留がこれから何か身体能力を鍛えればそれだけ二人に対して貢献することが出来る


「それに、「バリア」についても使い勝手が良かったな」


元々、波留は「バリア」については割れるものだとという前提の下で使っていた。実際にリトルボアとの闘いでギリギリという印象を感じたので、リトルボアよりも強い敵と接敵した時には攻撃を防ぐという事はできないだろう


だが、波留が気にしたのはそこではなかった

波留は「バリア」が座標設置型であるという事に有用性を感じていた。この性質を上手く使うことが出来れば、これから先、二人を、特に蓮をサポートすることが出来るだろう


「さて、次の攻略の時には試してみたいな」


今波留の中で考えている案は、もし実現することが出来ればかなりこれから先の戦い方が変わるだろう


他2人が悩んでいる間、波留一人だけは次の戦いを楽しみにしていた

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