第6話 初めての討伐

波「それじゃあ、さっそくだけど、あのリトルボアでスキルの試し打ちをしてみようか」

蓮「だな、俺も試してみたかったし」

香「あらためて今からイノシシを狩ると思うとちょっと怖いわね」

蓮「おい、さっきまでのすき焼きテンションはどこ行ったんだよ」

香「うるさいわね!それとこれとは話が別でしょ!」


ダンジョンに入るまでの1週間で俺達3人は入ったらまずは自分のスキルの試し打ちをするということを決めていた

それは、自身のスキルの感触も知らないで適当に攻略を進めようとすると必ず怪我につながると思ったからである


蓮「それじゃあ、まずは俺から試してもいいか?」


そういって、リトルボアの前に立つと、自身の中でスキルを使用するために集中する

ダンジョンに入ったときに感覚的にスキルを使用する方法は3人ともわかっていた。まるで、久しぶりに乗る自転車のように、スキルを使用することが出来るかという不安と、体が覚えている安心感が自分の体の中にあるのがわかる


(スキル発動!)


レンのスキルは『身体強化』と『クリティカル』、スキルを発動した瞬間に自身の体が軽くなったのがわかる。それに『クリティカル』の副次的効果なのか、敵のどの部位がスキになっているのかというのが感覚で分かる。ただ、そのスキも敵が動いているだけで変わっているので、それに的確に攻撃を当てる難しさを実感する


波「どう?なにか変わった?」

蓮「ああ、すげー体が軽くなった」


そういって軽く反復横跳びと垂直ジャンプをして見せると、蓮自身も予想以上の身体能力の上昇で驚いた。そしてそれはもちろん、他の二人は本人以上に驚いた


香「凄いわね...軽く人間やめてるわ」

波「だね、反復横跳びもおそらく今なら100回はこせるんじゃないかな、それにジャンプにしたって、ぱっと見で5mは飛んでたね」

蓮「じゃあちょっとクリティカルもあいつで試してくる」


そういってレンがリトルボアに突進しようとしたときにハルから待ったがかかった


波「ちょっとまってレン、どうせなら僕のスキルも試してみたいんだ」

蓮「ハルのスキルってバリアだったっけ?」

波「うん。けど、今回試したいのは『鼓舞』の方なんだ」

蓮「あれってハルのステータス依存のスキルだろ?今使うのか?」

波「今どれくらい強化されるのかっていうのを試したいし、さっきの見た限りだとバリアは自分たちにかけて試す方がよさそうだしね」

香「つまり、あんたの速度に合わせてバリアを張るなんて今は無理ってことよ。痛い思いしたくなかったらよけなさい」

蓮「マジかよ」


そう、二人が思っていたよりもレンの速度が上がっているため、今の二人ではレンの動きに合わせることは難しいのだ

ハルのバリアについては対象に付与するのではなく、空間を固定するイメージなので、レンの動きに合わせて設置しないとあまり意味を持たない

それに、カオリの付与に関しては、対象付与ではあるが、レンの動きが把握できない以上、レベル1の付与時間をきっかり合わすのは難しいのだ


波「じゃ、『鼓舞』をかけるよ」


(スキル発動!)


蓮「おお?なんだか、少しだけ体が軽くなったような?」

波「多分、『身体強化』を使ってるから、今の僕のステータス分の15%を上乗せされたところであんまり変わらないんじゃないかな」

蓮「いや、身体能力的には変わらないけど、少し頭の回転が速くなった気がする」

香「ということは、ハルの知力の15%も上乗せされたんじゃない?」

波「確かに、『身体強化』は運動能力系を強化しても、思考を強化することはできないのか」

蓮「じゃ、今度こそあいつを倒してくるな。ちょっと試したいこともあるし!」


そういって今度こそレンはリトルボアに向かって突進する


ちなみに、『身体強化』の強化項目のなかには”視力”も含まれている。つまり、強化後の速度でも、レン本人にはしっかりと相手の姿が見えている。そして、レンの強化された”視力”と『鼓舞』によって強化された”知力”を合わせて、今のレンにはクリティカルの場所がどの位置に移動するかというのがおおまかにわかっていた


つまり、今のレンは発動確率が低い『クリティカル』を発動できるほどには器用になっていた


シュッ―パァン!


レンがこの1週間の間に準備した片手剣を振り切ると、リトルボアの体は粉々に砕け散った


「「え?」」


レンの後ろでは、二人が予想だにしなかった風景に絶句していた


蓮「やっぱり、『鼓舞』がかかってる状態だと出来たな」

香「れ、レン。さっきのなにしたの?」

蓮「ん?『クリティカル』をリトルボアに当てたんだよ」

波「けど、『クリティカル』って発動確率かなり低いんじゃなかった?」

蓮「それなんだけど、『クリティカル』の難しいところって、相手のスキになってるところに攻撃を当てることなんだけど、『身体強化』と『鼓舞』を合わせて相手の動きを予測したら当てれたんだよね」

香「それってかなりのチートじゃない?」


実際、『クリティカル』の通常時の発動確率は35%ほどだ。3回に1回出れば良い方で、不発が65%もあるので、運が悪いときはほとんど発動しない

だが、『身体強化』によって”視力”を強化することで、相手の動きを細かく見ることが出来、『鼓舞』によって相手にとってどう動くことが最適かということを理解することが出来たことが、今回の『クリティカル』の発動につながっていた


蓮「流石にこれは予想外だったけど、『クリティカル』が腐る事は無さそうでよかったぜ」

波「ふう、レンには驚かされたけど、僕たちもスキルのため仕打ちをしようか。特にカオリの氷魔法は試してみたいしね」

香「そうね、とりあえずレンのことは後で考えましょう」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る