第5話 初めてのダンジョン
冒険者資格を取得してから1週間がたった今日、俺達3人はダンジョンの入り口まで来ていた
この1週間で装備や、回復系ポーションの準備、これから入るダンジョンについての情報収集を徹底的に行った
というのも、資格を取って親たちと話をしていたときに、最低限の準備をするために1週間はダンジョンに入らないという約束をしていたからだ。俺達としても、準備もなしにダンジョンに入るつもりはなかったし、自身のスキルと向き合う時間も欲しかったので、この時間は有効に使っていた
波「さて、いよいよだね」
香「流石に入るってなるとちょっと怖いわね」
蓮「まぁ、今日はいるのは1層だし、安全マージンを取っていれば余程の馬鹿をしない限り怪我しないって言われてるから大丈夫だろ」
波「そういう態度してる人が余程の事をしでかすっていうのがあるあるだよね」
蓮「あぁ!?」
波「それくらい油断は怖いってことだよ」
蓮「わかってるよ!俺は香織を安心させるためにだなー」
香「そこまで心配されるほどじゃないわよ」
と、適当な雑談をしながらダンジョンへの攻略手続きを始める
手続きといっても簡単なもので、ダンジョン端末の所持の確認並びに、冒険者ランクの確認。冒険者が最低限の装備をしていることの確認だけだ
ランクが上がると装着している装備も高級なものになり、はたから見ると私服なように見えるものもあるが、基本的にはプレート装備を付けている人が大半なのでしっかりと確認をする必要がある
それと冒険者ランクについては、個人のみが判断されパーティーランクは表示されない。また、ダンジョンの5層より下にいくためには個人のランクにかかわりなく、役所で特別な許可証を発行してもらう必要があるので、俺達も含めて許可なしで探索を出来るのは5層までとなっている
受付「はい。これでダンジョンに入っていただけます。また、次回以降はあちらにあるゲートを通っていただくだけで、端末の有無や装備についての判断をAIがしてくれるようになっておりますので是非ご利用ください。また、1層での人口をばらけさせるためにこちら側で入る区を決めさせていただきますが問題ないですか?」
香「大丈夫です」
前にも説明したが、ダンジョンというのは植物の根っこのように広がっている。つまり、1層と一言でいっても複数の空間が出来ている。それらの空間を名称で分けるために、”区”として分別している
受付「では皆さんには1層3区に移動していただきます。無理なく探索をしていただくようご協力をお願いします。また、1層に移動でき次第配信を開始してください」
波「わかりました。ありがとうございます」
そうして俺達は案内されるがままに1層3区につながる門まで移動した
覚悟を決めた俺達がその門を開けると、ダンジョン端末を受け取った場所に行った時と同じように門を開ける前からは予想できなかったような景色が目の前に広がっていた
それは草原だった。空、いやダンジョン内だから疑似的な空が広がり、緑がまぶしいほど輝く草原。良く田舎のPRポスターに使われているような鮮やかな緑と言ったらわかりやすいだろうか
分散されてるとはいえ、俺たちのような初心者冒険者もそれなりにいるらしく、ちらほらとモンスターを囲っている姿が見える
ここ1層3区で出現するモンスターは<リトルボア>
簡単に言うとイノシシだ。こいつらの攻撃手段は突進攻撃と後ろ足での蹴り技だ
ただ、リトルとついている通り、そこまで大きくない。といっても現実世界のイノシシと変わらないくらいの大きさはあるのだが
蓮「はえー、すげえな、これ」
香「そうね、配信で見たことはあったけど、実際に見るとまた違うわね」
波「だねー。これにはさすがに驚くね」
一通りダンジョンを見渡したあと、俺達は配信準備を始める
蓮「これの設定ってこれでよかったっけ?」
香「違うわよ!これはこっちだって言ったでしょ!?じゃないと私達3人の端末で共有されないじゃない」
波「終わった?というか、アカウント名というか、活動名どうする?」
蓮「え、俺普通に『レン』にしたんだけど」
香「私も『カオリ』にしたわ」
波「個人情報も何もないね、じゃあ僕も『ハル』でやるか。その方が僕たちも呼びやすいし」
という感じで、どうせ人も3人の親しか来ないと思って、全員がリアルネームをカタカナにしただけというなんの捻りもない名前で活動することになった
波「じゃ、配信始めるよー」
ポチッ―
俺達が配信すると
《カオママ》あら、もうダンジョンに入ったのね、初めてのダンジョンはどう?
カオリ「あ!ママ!もう見てるんだ!ダンジョンはねーすごくきれいよ!」
レン「というか、カオママ見るの早すぎね?無事に入れたし安全に攻略していくよー」
ハル「だね、とりあえずみんなのスキルの試し打ちはしてみたいね。効果を見るのと実際に使ってみるのは全然違うだろうからね」
レン「だな!じゃあ怪我に気を付けて頑張るか!」
《カオママ》がんばってねー、今日の晩御飯はすき焼きにするつもりだから
カオリ「すき焼き!?あんたたち!早くやるわよ!」
カオママの一言によってやる気スイッチが入ったカオリは近くに<リトルボア>を指さした
さっきの門の前で怖がっていた香織はどこにいったんだろうか?
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