第1話 冒険者になろう

日本中の色々な場所にダンジョンが誕生してから3年

俺達は冒険者になるために役所に来ていた


冒険者はダンジョン攻略中、政府から支給される端末で配信しなければならない


このルールが出来てからというもの、ダンジョン攻略配信は若者のトップトレンドになり、冒険者になる条件も16歳以上と原付並みに簡単になれることから高校に通いながら冒険者をするという人も多い


ただ、冒険者になるためにはある程度のダンジョンの知識、そして運動能力がなければなれないので、人によっては学科試験、運動試験のどちらかで不合格になることがある


「流石に緊張してきたな」

「ちょっと蓮!不安になるようなこと言わないでよ!」

「そうだよ!僕だって不安になるじゃないか!」

「わるかったって!香織、波留」


俺達3人はみんなで冒険者になるために今日は役所で冒険者試験を受けて、最後の試験結果の発表を待つだけになっていた


ダンジョンが発生したその年、俺達3人は16歳になれば必ず冒険者になろうと約束をしていた

勿論、このことを親に話したら反対されたが、高校生になるときにしっかりと安全を確保すること、俺達3人の親が誰か一人はかならず監視できる時間帯でダンジョンに入ること、22時までには家に帰ること、一度でも大怪我をしたらその時点で冒険者を辞めることを条件に俺たちの活動に賛成してくれた


「お待たせしました。ではこれより、冒険者試験の結果発表を行います。合格された方は適性検査と専用端末の配布がございますので受付前の廊下の奥までお越しください」


そのアナウンスとともに、俺達が待機していたロビーに設置されている電光掲示板に合格者の受験番号が提示される


「えっと、俺の番号は―あった!」

「僕もあった!」

「私もよ!」


どうやら俺達3人は無事に合格が出来たようだ


「それじゃ!人が集まる前に早く向こうに行こうぜ!」

「「うん!」」


そうして俺達は指示された部屋に向かうとその部屋は異様な雰囲気をしていた

入った瞬間にゾワッと背筋が伸びる雰囲気を感じ、俺を含めた3人はさっきまでの浮かれた雰囲気が一気に消し飛んだ


「ほう、この雰囲気にすぐ警戒するのは感心ですね」


その部屋の入り口近くに立っていた女性が感心そうにつぶやく


「あの、この雰囲気は一体なんなんですか?」


香織が怖がりながらもその女性に聞くと


「実はこの部屋はダンジョンの空間の一つなんです」


衝撃的な事実を告げられた


「「「え!?」」」

「この部屋の扉はマジックアイテムでして、特定の場所とつなげることが出来るんです。この空間はダンジョン内におけるキャンプスポットになっているので魔物はでませんよ。安心してください」


キャンプスポット―ダンジョン内には幾つもの空間があるが、その中にはモンスターが出現しなく、トラップも存在しない休める空間がいくつか存在する


「けど、ダンジョンの空間の一つならほかの人が入ることもあるんじゃないですか?そんな場所に案内して大丈夫なんですか?」


香織が立て続けに質問すると、その女性は優しく笑みを浮かべながら


「このダンジョンは政府によって攻略されたダンジョンなんです。あなたたちも知ってと思いますが、初めに攻略されたダンジョンは全部で3層しかありませんでしたが、その空間の数でいえば50近くありました。そして、一度攻略したダンジョンでは新しいモンスターはポップしませんので、そのまま試験会場として利用されているんです」


確かに、完全攻略されたダンジョンでは新しいモンスターがポップしないということは冒険者講座の中で習った


「けど、なんでまたダンジョンの中なんですか?」


と波留が質問すると


「おや?気づいてないのですか?今のあなたたちにはスキルが付与されてるはずなのですが」

「「「ええ!?」」」


(おい、香織。気づいてたか?)


(気づいてるわけないでしょ!そういう蓮はどうなのよ!?)


(俺も気づかなかった)


(僕も全然気づかなかった)


俺達3人が視線で会話をしていると


「どうやら本当に気づいてなかったようですね。ですが、先ほどの合格発表の時に私はそれとなくほのめかしたんですけど」

「もしかして、適性検査、ですか?」


波留には思い当たる節があったらしい、なんだかんだ俺達3人の中で一番頭がいいのが波留なのだ、違和感として覚えていたんだろう


「そのとおりです」

「そういえば聞きたかったんだが、適性検査ってなんなんだ?」


俺が気になったことを聞いてみると


「適性検査というのは冒険者が取得したスキルからその人のダンジョン内での攻略可能層を判断するというものです」

「スキルの適性、ですか。ということはスキルのものによっては低いものになるんですか?」


香織が不安そうに質問をすると


「そうですね、ただダンジョン内でのレベルアップやドロップ品での強化なども評価されますので、あくまで現時点での評価だと思ってあまり思いつめないでください」

「へぇー、途中で変化することもあるのか」


俺達3人は目を合わせてうなづく

元々俺達は3人でダンジョン攻略をしようという話をしていたのだ

例え誰か一人のランクが高かろうが、低かろうが俺達3人でやることは変わらない


皆で楽しくダンジョンを攻略する


それだけだ


「それではあなた達の3名の適性検査を始めましょうか」

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