9-2
「あれは日に3回が限度だ。それ以上やると反動で四肢が爆散するらしい」
「どんな魔術ですか、それ!?もっと早く言ってくださいよ」
左右から繰り出される魔獣の攻撃を間一髪で避けている。というよりも、その風圧で体が押され、まるで宙を舞った木の葉のような不規則さで揺れ動き、魔獣の鋭い爪を備えた前脚は空を切っている。
「た、
イァハは自らが相対する魔獣に背を向ける。当然に魔獣はその隙を見逃さず、狙い定めた一撃で彼に掣肘を加えた。
イァハは棒術における打ちこみの動きを行い、しかし振り下ろした棒をそのまま地面に突き立てる。そのまま、それを起点に棒高跳びのように逆さまに飛翔した。
だが、宙に舞う無防備な彼に、攻撃を躱された魔獣と、あの男に襲い掛かっていたもう一匹が、示し合わせたような狭撃で迫りくる。
彼はそこから静止したまま鷹揚と落下し、魔獣の双爪が彼の纏う外衣に触れる瞬間、背面に体を捻る。そこから、追撃の暇を与えず、着地から前後へ迫った魔獣へ突きを放ち、怯ませる。
魔獣たちはたまらず鈍いうなり声をあげて顔を背けた。そして、先ほどイァハが腹で受けた一撃の再現、魔獣は目の前の鬱陶しいそれを振り払うように脚を横に振る。
「2度も食らうか!!」
膝を落し、体を倒してその忌々しい再現を阻止する。そしてバネのような飛び上がり、
そして地面を這いながらこちらに逃げる男と入れ替わりながら、男を襲う二匹に比べて僅かに小柄なその魔獣の顔に魔力を宿した物干し竿を叩きつける。
『ふん、
『さあ、その腕前でこの男の命を死守しなさい』
「なあ、あの、魔獣の腹を抉った攻撃は出せないのか?」
イァハは硬い外殻を吹き飛ばして魔獣を仕留めたであろう、あの一撃について尋ねる。
もちろん彼はその時、魔獣の反撃にあい実際に目にしたのは赤黒い閃光のみであったが、魔獣のその屍から、男が何らかの魔術を行使したことは分かりきっていた。
男は魔剣に縋りながら起き上がり、額の擦り傷に滲んだ血を腕で拭う。
「どうなんだ?テネブラエ」
『何度も。あれを打つのには同時にアーカーブの加護を盾にしなければならんと言っただろう。
お前の腕ごと腐り落ちていいのなら、幾らでも我を使えば良いが』
「いざとなっても2回しか打てないのか」
『話を聞いていたか?肩から下がなくなるんだぞ?アーカーブの加護なしには、1発も打つんじゃないぞ。絶対だぞ。
おい、聞いているのか?』
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