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それから半日が過ぎるころ。入り組んだ横穴を歩く1人と2本は、彼らの発った出発地点からまだ幾許か離れただけの場所を歩いていた。
『こんなことを言うべきか、迷ったのですが。少し歩みが遅くないですか?』
その言葉が無惨にも男の足の力を奪う。
彼は背負ったその二振りの剣を横へ置き、膝をついた。
「言わせてもらうが。
これでも体は丈夫な方なんだ。問題は単純で、お前らが重すぎる以外にない」
『当たり前だろう。
軽量で持ち運びやすい魔剣があるか』
『もともと人間が持つようには出来ていませんし』
「頭に来た。
が、同時に閃いたかもしれない」
彼は唐突に自らが纏う衣を、二つ、紐状に引き裂いた。
まず、長身で柄の長い魔剣を下に、魔剣と聖剣の柄を合わせて縛る。
そしてそれを逆手で持ち、さらに握る手を残った襤褸切れで縛る。
「よし」
彼は感触を確かめるように、地面に2、3度魔剣を差し、それが体重を信頼して預けるに足ると分かると、あろうことか杖として魔剣を地面の硬い岩盤に突き刺しながら歩き出した。
『よしではない!』
魔剣は、上位種であったころの名残か、剣として矜持からか、その扱いに対して苛烈に反発する。
『これはいい。
知恵の神、メーティアも驚く才知です。さあ、せいぜいその無駄な頑丈さでわたしたちを楽させなさい』
◇ ◇ ◇
これにより、一行の足取りは軽く、洞窟脱出は大きな進展を迎えたように思われた。
しかし、そんな一行の前に、文字どおり大きな壁が立ちはだかった。
「壁だな」
『ええ、壁ですね』
『おい、なんだこれは』
だんだんと狭まっていく狭隘な横穴を抜けると、広い空間に出た。
そしてそこで彼らの眼前に現れたのは、これまでの道中では見る影もなかった文明的建造物。明らかに知性を持った者が、外敵の侵入を阻むために積み重ねた石の城壁である。
「だから壁だろう」
『それは見ればわかる。
なぜこんな洞窟に、それも行手を阻むようにこんなものがあるのかという意味だ』
「見てわかんないのかと思った」
『恐らく、我々と同じように長い年月をかけて、このような場所にまで。
よく見れば、城壁の一部分だけです。そう考えれば、よくもこれほど元の形を保っていられるものだと驚きではありますが』
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