2-4

『ええ、それが得策です。

 ちなみにわたしは、薄刃でそこの魔剣よりも一回り小さいようですから、取り回しはしやすいでしょう』


 「そう言うのなら」と男は暖かな光を放つ聖剣を手に取ろうとする。


『おい!』


 魔剣の制止は無情にも無視される。


『さぁ、とりたまえ』


 聖剣から流れ出る光の粒子が、剣を握る男を包んだ。


「これは----

    




   ----なんか気持ち悪いんだが」


 男は剣を地に突き立て、片腹を抑えてうずくまった。


『どうしたのですか!?』


 今まで平静を保っていた聖剣も、男の異変を察知し、ひどく取り乱した様子である。


「無理だ。すまん」


 男は手に持った剣を一瞥し、断りを入れたという言い訳が通用するかどうかの瀬戸際、かろうじて聖剣が耐えうる限界の失礼さで、ぽいとその聖なる剣を地面に投げ捨てた。


『な、なんと無礼な』


 金属の鈍い音と共に、聖剣は地に横たわる。


「とてもじゃないが、持っていられないくらいの不快感が流れ込んできた」


『そんなはずはありません!

 魔を祓い、呪いを消し去り、精霊の加護を与えるこのわたしを!』


 魔剣は離れたところから、その一連の流れを、小気味よさそうに眺めていた。


『テネブラエ、何がおかしいのですか?』


『お前を嗤っているのではない。我の凶運に驚き、呆れておるのだ。

 しかし、人間というのはずいぶんと興味深い種族のようだな。

 とは』


『まさか、そんなはずは』


「いや、その陰湿そうなのが言ってる通り、本当に、こう、体が受け付けなかった」


『正直だな。だが、闇にすまうものはそうでなければならん。

 よい。こちらに来てさっさと我を受け入れよ』


 男はその横暴な指示に腹を立てることもなく、それに従う。身の丈にもなるその大剣の柄を取り、その重さに振り回されるように引き抜いた。


『さあ、闇の力をその身に宿すが良い!』


 聖剣の焼き直しと呼ぶべきか、合わせ鏡のように、ドス黒い闇が男を包む。


「あ〜、これは無理だ」


 先ほどよりも短い間隔で、男は魔剣をぽいと放った。派手な音をたてて、闇の魔剣が倒れる。


『なぜだ!そんなはずはない。

 もう一度、よく握ってみろ!!』


「もう大体分かったから。

 あっちの光っているのと、ちょうど反対側の気持ち悪さだわ」




 


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