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『ええ、それが得策です。
ちなみにわたしは、薄刃でそこの魔剣よりも一回り小さいようですから、取り回しはしやすいでしょう』
「そう言うのなら」と男は暖かな光を放つ聖剣を手に取ろうとする。
『おい!』
魔剣の制止は無情にも無視される。
『さぁ、とりたまえ』
聖剣から流れ出る光の粒子が、剣を握る男を包んだ。
「これは----
----なんか気持ち悪いんだが」
男は剣を地に突き立て、片腹を抑えてうずくまった。
『どうしたのですか!?』
今まで平静を保っていた聖剣も、男の異変を察知し、ひどく取り乱した様子である。
「無理だ。すまん」
男は手に持った剣を一瞥し、断りを入れたという言い訳が通用するかどうかの瀬戸際、かろうじて聖剣が耐えうる限界の失礼さで、ぽいとその聖なる剣を地面に投げ捨てた。
『な、なんと無礼な』
金属の鈍い音と共に、聖剣は地に横たわる。
「とてもじゃないが、持っていられないくらいの不快感が流れ込んできた」
『そんなはずはありません!
魔を祓い、呪いを消し去り、精霊の加護を与えるこのわたしを!』
魔剣は離れたところから、その一連の流れを、小気味よさそうに眺めていた。
『テネブラエ、何がおかしいのですか?』
『お前を嗤っているのではない。我の凶運に驚き、呆れておるのだ。
しかし、人間というのはずいぶんと興味深い種族のようだな。
地上の生物でありながら、聖魔力を受け付けないとは』
『まさか、そんなはずは』
「いや、その陰湿そうなのが言ってる通り、本当に、こう、体が受け付けなかった」
『正直だな。だが、闇に
よい。こちらに来てさっさと我を受け入れよ』
男はその横暴な指示に腹を立てることもなく、それに従う。身の丈にもなるその大剣の柄を取り、その重さに振り回されるように引き抜いた。
『さあ、闇の力をその身に宿すが良い!』
聖剣の焼き直しと呼ぶべきか、合わせ鏡のように、ドス黒い闇が男を包む。
「あ〜、これは無理だ」
先ほどよりも短い間隔で、男は魔剣をぽいと放った。派手な音をたてて、闇の魔剣が倒れる。
『なぜだ!そんなはずはない。
もう一度、よく握ってみろ!!』
「もう大体分かったから。
あっちの光っているのと、ちょうど反対側の気持ち悪さだわ」
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