第47話 秀頼 大坂に現る 改訂版

※この小説は「続 政宗VS家康 秀頼公諸国巡見記」の改訂版です。実は、パソコンのトラブルで編集中に保存できなくなり、新しいページで再開した次第です。文言や表現を一部修正しております。もう一度読み直していただければと思います。


 空想時代小説


 秀頼らは、伏見の屋敷に荷を置くと、すぐさま大坂に向かった。畿内探題の大野治友(31才)にこたびの伏見屋敷の御礼を言うためである。治友は父治長に似て堅実な性格であった。父の命で若い時に畿内の巡見をしていたとのこと。もちろん身分を隠してである。高取城にも出向いたことがあるという。筒井家の軍勢の中にいたそうだ。大野家の目付飯島弥一には内緒だったので、目を合わせないようにしていたとのこと。城の中だけにいてはわからぬことを身をもって会得したわけである。終始、和やかな雰囲気で大坂城での対面が終わった。

 問題はその後に行く母淀君との対面である。

 淀君(61才)は高齢のため伏せっている。病というよりは気力が衰えているという感じだ。

「秀頼、よくぞ戻ったの」

 その声は弱々しかった。

「母上、ご心配かけ申した。やっと戻ってまいりました」

「心配などというものではない。大助殿から時おり文がきていて、消息はわかっていたが、山賊や海賊と戦ったり、馬小屋で泊まったという話を聞いて、胸を痛めておった。どこにいるかは分からぬので、こちらから文を出すことはできず、やきもきしておったぞ」

「諸国巡見は日の本を見るいい機会となりました。母上の心配はわかりますが、これからの日の本のためには大事なことでござった」

「それは大助殿の文にも書いてあった。それはわかるが、母の気持ちは子にはわからぬのであろうな。それよりも嫁御はどうなった? 孫の顔は見せてもらえぬのか」

「それは、今度伏見の館で祝言を上げまする」

「お相手はどこのご息女じゃ?」

「真田信繁殿のご息女です」

「信繁殿か、すると大助殿とは兄弟になるのじゃな」

「はっ、大助が義兄となります」

 そこで、淀君は笑みを浮かべた。

 その夜は、淀君と一晩を過ごした。かつての気丈な姿はなく、大声を出すこともなく、おだやかな老人になってしまっていた。そういう風にさせてしまったのは自分のせいだと思うと秀頼は心苦しかった。しかし、日の本の平穏のためには、いた仕方なかったのだ。親子の絆よりも大事なことがあると思うしかなかった。あのまま母の下にいたのでは、何もできなかったと思う秀頼であった。

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