冒険者少女ヨーコの冒険譚!④
ヨーコがぶち破った扉を直した後、半人の子供達の中で年長者である犬耳少女のハルからなぜ畑泥棒をしたのか理由を聞いた。
「えっ…ここにいる全員が、親や親戚に捨てられたり親が殺されたりして、孤児になった子達ですか…?」
「ええ、そうよ…」
「お姉ちゃんは路頭に迷うボク達を拾ってくれて、面倒を見てくれているんだ!」
「そうだよ!」
「お姉ちゃんはいい人なんだよ!」
「ハルさんがこの子達を…」
「ありがとう、皆。後は私がこの二人と話すから。小さいこの子の相手してあげてくれるかしら?」
«はーい!»
子供達は素直に従い、自分より年下の子守をした。
「あんな素直で良い子達が孤児だなんて…」
「だな…」
「そう思うでしょう、私も孤児として生きてきたからあの子たちをほっとけなかったの…」
「ハルさんも…」
「おめえさんもだったのか…」
「これだけ言えばわかるでしょう、生きるために畑泥棒するしかなかったのよ…」
「事情はよくわかったべ…だけどよ、普通に働けばいいじゃないか?若いんだし仕事ならいくらでも…」
「私達だって普通に働けるなら働いてるわよ、でも半人だから受け入れてくれないの…」
「人間の中には半人を嫌う人もいますからね…?」
「ええ…最初はあの村の村長に働くから村に住まわせて欲しいって頼んだんだけど、おまえら半人など信用出来るかと厄介払いされたの…」
「ひどい…」
「あの野郎、そんなこと一言も言ってなかったぞ…」
「理由は説明した、それでどうするの?あの子達を見逃してくれるなら私を捕まえていいわよ?」
「そんなこと…」
「帰るぞ、ムーン。」
「えっ!あっはい!」
「待ちなさいよ!」
帰ろうとする二人を止めた。
「あんた達、冒険者として引き受けたのは畑泥棒を捕まえる依頼なんでしょう…?だからこうして追いかけてきて…?」
「見逃してやるべ。」
「ヨーコさん。」
「いいの…?あなた達、村の人達に怒られるんじゃ…?」
「そんなもんにビビらねぇよ。」
「私は少し怖いですが、この小屋の事は秘密にします。」
「あなた達…」
「その代わりもう畑泥棒はするなよ、食べ物は自分達でどうにかするんだ。」
「そうよね、わかった…何とかする…」
「ならいいべ。」
「お邪魔しました…」
二人は家を出た。
「ムーン、浮かない顔してるな?」
「畑泥棒をやめさせられたのはよかったですが…もし食べ物が手に入れられなかったら、あの子達は確実に飢え死にしちゃいますよね…?」
「オラ達は所詮はただの冒険者だ、依頼が達成出来なきゃ、宿代や最悪、飯代にだって事欠く職業だぞ?他人にそこまで情ばかりかけられない立場だ、後は本人達に頑張らせるべ。」
「そっそうですね…」
そして二人は村に戻り半人達に逃げられたと話すと、予想通り村長と一部の村達から役立たずと怒られ、依頼は失敗扱いとなり報酬は出なかった。
「村長の言ってたことなんて気にするなよ?」
「そうだぞ?君達のおかげで今回は怪我人があまり出なくて、畑だって大した被害が出なかったんだからな?」
「逃げられたぐらいどうってことないわ。」
「あはは。そう言ってもらえると少しは肩の荷が降りるべ。なっ、ムーン?あれっ?聞いてるか?」
「はっ!すっすみません!」
「なんかまだ心此処にあらずって感じだな?」
「そんなことは…」
村から町に戻り、冒険者ギルドにも畑泥棒を捕まれられず依頼が失敗したことを報告、その場で2人だけのパーティーは解除した。それから次の日の朝。ムーンは大きめの紙袋を抱え、例の半人の子供達が住むボロ小屋を訪ねていた。
「何しに来たのかしら?」
「よかったら、これを。」
「これって食料…?」
「あなた達の人数で2日分は持ちそうなぐらいの食料を持ってきました。」
「頂いちゃっていいの…?」
「はい。皆さんで食べてください。」
「ありがとう…」
「なんーだ、先越されちまったか。」
「ヨーコさん!」
「まさかあなたまで食料を…?」
「そこまで金なかったからあまり買えなくて、こいつよりは少ないけどな?」
ヨーコも食料入りの紙袋を渡した。
「ありがとう…」
「へっへ、いいって。」
「ふーん。ヨーコさん、昨日言ってたのと真逆の行動してますね?他人に情をかけられない立場だったんじゃ?」
「人の揚げ足を取るなよ〜!」
「すみません。」
「ふっふ、二人とも上がって。」
やっと心を開いたのかハルは二人に笑顔を見せた。
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