冒険者少女ヨーコの冒険譚!⑤

それから毎日、犬耳少女ハルと半人の子供達のために食料を届けるムーンとそれに同行するヨーコはすぐに子供達や最近ではハルとも打ち解け合い、一緒に遊んだり、小さい子をお風呂に入れてあげたり、ご飯作りを手伝い一緒に食べたりまるで家族のように過ごした。そんな日々が三日経って、いつものように食料を買って届けに行く途中…


「オラ、そろそろ次の町に旅に出ようと思う。」


「そんな寂しいです!せっかく仲良くなれたのに!ずっとこの町に居てくださいよ!」


「気持ちはありがたいべ。でもな、オラにはSランク冒険者になるっていう夢があるんだ。」


「夢ですか…?」


「そいつを叶えるには難しい依頼をいっぱい達成する必要があるべ。だからいつまでも同じ町にとどまっていられないんだ。」


「ヨーコさんは勇気がある方ですよね…羨ましいな…」


「ふふん、まぁな。」


「私には到底出来そうにありませんよ…」


「ムーンには夢はないのか?」


「冒険者として色んな町へ旅に出てみたいです…」


「なんだすぐにでも叶えられそうだべ、やればいいじゃんか?」


「父様や母様が許してくれませんよ…」


「父様?母様?」


「あっいや!」


「ずっと気になってはいたんだ、10人分の食料をいつも買って届けられるぐらいだし、おめえさん、どこかの金持ちのお嬢さんなんじゃないか?」


「そっそれは…」


「まぁ、言いたくなかったら無理に言わなくていいべ。」


「すみません…」


「謝ることはないだろ。」


「将来の事で両親と喧嘩して家を出たので…あまり家のことは話したくなくて…」


「ふーん。つまり家出だべか。一人暮らししてる理由はそれだったんだな?」


「はい…両親からはどうにか18歳になるまでは一人暮らしをすることを許可してもらったんです…」


「つまり18歳になったら連れ戻されるのか?」


「はい…一時の自由は認められたって感じです…家に連れ戻されたら、きっと…」


「オラから言えるアドバイスがあるとしたら、自分の人生は自分のもんだってことだべかな。」


「自分の人生は自分のもの…」


「自由に生きてもいいんじゃないか。」


「ヨーコさん…」


「あーあー。でも残念だべ。せっかくムーンをパーティーに誘うつもりだったんだけどな?」


「本当ですか!」


「でも町から出るつもりないんじゃ、誘っても仕方ないか。」


「もう〜ヨーコさんの意地悪〜!」


「あはは、わりぃ。わりぃ。」


「私が18歳の誕生日が来るのは2ヶ月後です、それまでにハルさんや半人の子供達が食うに困らない暮らしが出来るようにしてあげたいんですが…」


「なんだ、そんな心配か。」


「そんな心配って…?」


「安心するべ。オラが旅に出る前にちゃんと解決するつもりだから。」


「どうやってですか…?」


「小屋に着いたら話すさ。」


小屋に着いて、その話をハルや子供達を交えて話した。


「私達が冒険者に…?」


「ああ、そうだ。お前達ぐらいの強さがあれば十分、冒険者としてやっていけるはずだ。依頼をこなせば安定した稼ぎになる、町でも暮らしていけるはずだ。」


「なるほどその手がありましたね!冒険者には年齢制限もないですし!」


「冒険者って何?」

「私も知りたい!」

「ボクも!」


「えっとね、冒険者はね。冒険者ギルドって所から自分に合った依頼を探して受けて、依頼が達成出来たら報酬が貰える仕事だよ。」


«そうなんだ!»


「でも冒険者になるには身元がはっきりしてないと駄目なんじゃないの…?孤児で家族のいない私達じゃ…?」


「なーに心配いらないべ。Bランク冒険者のオラが紹介するんだぞ。身元がはっきりしなくったって信用してもらえる。万が一にも何か文句言いやがったら怒ってやるからさ。」


「ヨーコ、そこまで私達のことを…」


「どうだ?なってみる気ないか?」


「いい話だけど…」


「ねぇ、ヨーコお姉ちゃん?」


「何だべ?」


「私達が冒険者になったらハルお姉ちゃんに楽させてあげられるようになる?」


「ミイ…あなた…」


「ああ。頑張ればなるぞ。」


ヨーコは頭を撫でた。


「じゃあ、私、なるよ!」

「ボクもなる!」

「私も!」

「オレも!」


「皆まで…」


ハルは涙を流した。


「だってよ。どうする?」


「なるわ。冒険者に。皆で頑張って、いい暮らしするんだから。」


「よく言ったべ。協力するぞ。」


「私も微力ながら応援します。」


「ありがとう。二人とも。」


「明日、朝早くに迎えに来るからな。一緒に町まで行って冒険者登録しに行くべ。」


「わかったわ。」


次の日、ヨーコとムーンは小屋に向かった。


「一応ですが。ハルさん達に必要な大勢で住めて安く借りられる借家を何件か調べておきました。」


「おっ。準備がいいべ。」


「でも不安もあります、町の人達はあの子達を受け入れてくれるでしょうか?」


「くれるさ、たまに町で半人も見かけるだろう?」


「でも以前よりは少なくなってるんですよね?」


「そうなのか?」


「理由はわからないんですが…」


所がすぐにその理由を知ることになる!ヨーコ達が小屋に着くと小屋が燃えていたのだ!


「何があったんだべが!?」


「皆は無事なんでしょうか!?」


慌ててヨーコ達は水魔法で火を消しすぐに鎮火、中に入るも誰の姿もなかった!


「皆はどこに!」


「わからん…」


《助けてぇー!!》


「今の声は!」

「ミイちゃんです!」


ヨーコ達は外に出て声がする方に向かった!すると遠くで荷馬車が走り去るのが見えた!


「まさか!あの荷馬車で連れてかれたんじゃ!」


「どっどうしてだべ!あの子達に知り合いは居ないはずじゃ!」


「もしかして半人の誘拐団じゃ…?」


「半人の誘拐団だと…?」


「以前、父様が来客の方と話してたのを聞いたんです、全国で半人の誘拐が多発していると…」


「そいつらにハル達が誘拐されたってのか…」


「はい…恐らくは…」


「誘拐された半人達はその後、どうなるんだ…?」


「他国の売人を通じて、奴隷として売られると聞きました…」


「奴隷だと…」


ヨーコが強い魔力を纏った。


「うぐっ…うぐっ…ひどすぎます…」


「ムーン、泣いてる場合じゃないべ!」


「えっ…?」


「オラ達で助けに行くぞ!」


「ヨーコさん…」


「それにはおめえさんの探知魔術だけが頼りなんだ!」


「わかりました!任せてください!」


ムーンは涙を拭うと、顔をキリッとした。


「待ってろよ、ハル、皆…必ず助けてみせるからな…」




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