冒険者少女ヨーコの冒険譚!③
ヨーコが戦っていた頃、パーティーを組んでいた臆病な新人冒険者少女のムーンは本人が唯一得意とする回復魔術で半人の子供達に倒された村人達を治療していた。
「ヒール!」
「おぉ、傷が癒えてゆくぞ!」
「流石はヒーラーだな!」
「そんなことないです、こんな簡単な回復魔術、誰でも唱えられますよ…」
そうは言いつつ、褒められて嬉しい顔をしていた。
「次にこっちの怪我人の治療も頼む!」
「こっちもだ!」
「はっはい!終わったら行きます!」
(ヨーコさんの方はどうなってるんだろう…?)
彼女の心配をよそに、ヨーコと畑泥棒の親玉の犬耳の少女の戦いはヨーコが優勢だった。
「ガルルッ!!」
「またそれか、せい。」
「ぎゃっ!」
噛みつこうと向かってくる犬耳の少女を危なげなく避けては後ろ背中に一撃を与えた。
«お姉ちゃん!»
「おめえさん、ワンパターンだな?噛みつくしか攻撃方法ないのか?」
「くっ、あんた、何者なの!今まで戦った冒険者は皆、私の動きについてこれなかったわ!」
「へっ、オラをそんじょそこらの冒険者と一緒にするな、こっちとらBランク冒険者だべ。」
「Bランクですって!なるほど、どおりで私の攻撃を躱せるはずだわ…冒険者ギルドも本気を出してきたわけね…」
「とても勝ち目はあるとは思えないべ?大人しく降参して、村の人達に盗んだ野菜を返して謝れ。おめえさん達、大体が子供だし、きっとそれで許してくれるはずだ。」
「謝れですって…?」
「悪いことしたら謝る、お母さんやお父さんにそう教わったろ?」
「私達の事を何も知らないくせに…」
犬耳の少女は涙目になった。
「おっおい、何も泣くことないべ?」
「くっ…」
「おい!」
「皆、逃げるわよ!」
«うん!»
犬耳の少女は怯えて動けない半人の子供を抱きかかえると、姿をくらませるために煙幕を投げた。
「ゴホッ、ゴホッ、しまった!こんな手段があったとはな!」
煙幕が消えると、犬耳の少女と半人の子供達の姿はなかった。
「ぐわぁ!やっちまったべ!くっちゃべってないで捕まえるべきだった!逃げられたら依頼が失敗になっちまう!後を追いかけるか、でもどっちに行きやがったかわからねぇ〜!」
「ヨーコさん!」
ムーンがちょうどよく戻ってきたので、状況を説明した!
「逃げられちゃったんですね…」
「完全にオラのミスだべ、すまねぇ。」
「謝らないでください!畑をあまり荒らされずに済んだんです!村の人達もわかってくれますよ!」
「チクショ、探知魔術が使えたら、後を追いかけて今度こそ捕まえるのに、オラ、そういう精神を細く使う術が苦手だからな〜!」
「探知魔術ですか…?私、いちよう使えますよ…?」
「ほっ本当か!」
「ただあまり精度はよくありませんが…?」
「構わないべ!」
ヨーコはムーンの探知魔術を頼りに夜の森で逃げた半人達の捜索を開始した。しかし、本人が言う通り精度があまりよくなく、半人達がいると思われる住処のボロ小屋を見つけるまで数時間かかった。
「すみません、こんなに時間がかかって…」
「はっはは…気にすんな…」
二人は気づかれないように気配を消してボロ小屋に近づくと窓から中を覗いた。するとさっきの犬耳のの少女と半人の子供達の姿があった。
「どうやら当たりだったみたいだな。」
「村にいた子達以外にもまだ半人が居たみたいですね?」
「みたいだ。」
「あの子達、子供達だけでこんなボロ小屋で暮らしてて畑泥棒をするぐらいですし…何か事情を抱えているんじゃ…?」
「聞いてみればわかるべ!」
「躊躇ない!」
ヨーコは扉をぶち破って小屋の中に入った!
«きゃぁー!»
「怖いお姉ちゃんだ!」
「ここまで追ってくるなんて!」
「そこまで怖がることないべ?」
「そりゃ扉をぶち破って入ってきたら怖がりますって…?」
「そうか?」
「あなた達!この子達に指一本でも触れてみなさい!絶対に許さないんだから!」
«お姉ちゃん!»
半人の子供達が犬耳の少女に怯えながら抱きついていた。
「これじゃあ、まるでオラ達の方が悪者みたいだな…?」
「ええ。」
「おっおい?」
ムーンは半人の子供達にゆっくり近づいた。
«うぐぐ…»
「ガルルッ!来るな!」
「ごめんね。」
「えっ?」
優しく微笑みながらムーンは犬耳の少女が抱きかかえる幼い半人の子供の頭を撫でた。
「怖がらせちゃったよね。」
「ムーン…」
「どっどういうつもり…?」
「聞かせてくれませんか?どうして畑泥棒をしたのか?」
「そっそんなこと聞いてどうするのよ…?」
「私にはあなた達が本当の悪い方達だとは思えません、何か事情があるんですよね?」
「あなた…」
「オラも聞きたい、聞かせてくれるか?」
「・・・・・わかった…」
「ありがとうございます。あっ自己紹介がまだでしたよね?私、Fランク冒険者のムーン・シャーベットです。」
「オラはBランク冒険者のヨーコ・ラズベリーだ。」
「私はハルよ…」
「ハルさんですね。」
お互い名前を教え合ったことで、少し緊張感がほぐれた。
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