冒険者少女ヨーコの冒険譚!②

半人の集団の畑泥棒を捕まえる依頼をすることになったヨーコは唯一パーティーに参加してくれた新人冒険者で職業ヒーラーの丸眼鏡をかけた少女、ムーン・シャーベットと一緒に依頼先のヒーダ村に向かった。


「わっ!毒蛇ですよ!噛まれないように気をつけてください!」


「言われなくてもわかってるべ…?」


「きゃっ!何っ!」


驚いて尻もちをついたが、茂みから出てきたのは小さな兎だった。


「何だぁ、兎さんか…」


「あのなぁ…」

(この子、新人で相当、ビビリだし、正直、役に立つとは思えないべ…?)


ヨーコはため息をついた。


「あはは、先程はお恥ずかしい所をお見せしました。」


「おめえさん、ムーンちゃんだっけ?新人だよな?何でパーティーに参加しようと思ったんだ?」


「理由は一つです!畑泥棒を捕まえるってランクがあまり高くなくても出来る依頼にBランク冒険者がやるなんて、これは安心安全は間違いないと思って参加しました!」


「あっあの、おめえさん…?もしかして依頼の内容ちゃんと見てないんじゃないんだべか…?」


「えっ?」


「オラ達が捕まえろって言われてるのはただの畑泥棒じゃなくて、半人の集団だぞ…?」


「はっはっ半人の集団ー!!?」


「やっぱり…?」


「半人って人間と魔物のハーフの事ですよね!?」


「ああ…?」


「大体は人間よりも強く生まれてくるっていう!?」


「だからそうだべ…?」


「しっ失礼します!私は帰ります!」


「なっ!ちょっと!」


帰ろうとする彼女の腕を掴んで止めた!


「もうすぐ着くのに帰るとか言われても流石に困るって!」


「だっだっだってぇー!相手は半人ですよー!新人の私が戦える相手じゃないですよー!」


泣いて駄々こねた。


「ヒーラーなんだから、戦わないで回復に専念してくれるだけでいいべ!」


「やだ、やだ、やだー!町に帰らせてー!」


「おめえさんはガキか!」


ヨーコは引っ張って村まで連れてった!


「お主達が依頼を引き受けてくれた冒険者か…?」


「ああ、そうだべ。オラはヨーコ・ラズベリーだ。」


「グスンッ…ムーン・シャーベットです…」


村長にヨーコは堂々とムーンは嫌々に答えた。


「ヨーコ君にムーン君じゃな…?とても強そうには見えないが…?」


「安心するべ。オラはすごく強いぞ。」

「私は弱いです⋯」

「こら、余計な事を言うな。」

「じっ事実ですもん?」


「ちなみに冒険者ランクは何ランクじゃ…?」


「こいつはまだ新人でFランクだが、オラはBランクだ。」


「Bランクじゃと!」


「ああ。」


ヨーコは自分の冒険者カードを見せて、Bランクであると証明した。


「おぉ。どうやら本当にBランクのようじゃな?」


「だべ。」


「わかった。頼りにしておるぞ。」


「任せるべ。」


「君もよろしく頼む。」


「えっええ…?」


ヨーコとムーンは村長の家を出た。


「ハァ…」


「おめえさん、まだ覚悟が決まらないのか?」


「そう簡単に決まるわけないですよ…?」


「そんな臆病な性格でよく冒険者になろうなんて思ったな?全然、合ってないべ?」


「自由に生きたくて…冒険者になることを選んだんです…」


「自由に生きたくて?」


「あっいや、私の話なんかいいじゃないですか。」


「話したくないなら無理には聞かないけどな?」


「そうしてもらえたら助かります…」


そして畑泥棒が現れる問題の夜になり、戦えそうな村人達と一緒にヨーコ達は村の警備を開始した。


「あの二人、頼りになるのか…?」

「ポニーテールの子はBランクだって言ってたけど…女の子だからな…?」


「お嬢ちゃん達、あまり無茶はするなよ?相手は半人だ、怖くなったらいつでも逃げていいんだからな?」


腕まくりをして額に鉢巻を巻いたムキムキのおじさんが声をかけてきた。


「大丈夫だべ。怖くなんかこれっぽっちもない。」


「だはは、流石は冒険者だな。相当、肝の座ったお嬢ちゃんみたいだ。」


「わっわっ私は怖いです…」


「おいおい。こっちのお嬢ちゃんは正反対にビビリまくってるな?」


「すっすみません。」


「だはは、でもよ、正直、気持ちはわかるぜ?俺ですらまたあの半人達と戦う思うと怖いもんな。」


「半人達はそんなに強いんですか…?」


「強いぞ、奴らは色んな種族の半人の集まりで大体は子供なんだが、村の大人でも敵わない。現に俺もだ。」


「相手は子供の半人ですか…?」


「何だ、ガキが相手なのか。」


「だが、油断するな、その中に一人だけ君達と同い年ぐらいの半人の少女がいる、そいつは特に強い。」


「特に強い半人の少女ですか…?」


「実際見ればわかるが、犬の半人の少女でな、畑泥棒の親玉なんだろう、仲間に指示していた。」


「畑泥棒の親玉ですか…」


「犬の半人の少女と戦う時に注意した方が良いことがある。」


「注意した方が良いことですか…?」


「あまり近づきすぎるな?まんまの犬のように鋭い牙で噛みついてくるからな、腕や足に噛まれたら、めっちゃ痛いぞ?俺も味わった。」


「怖!」


「ようは噛みつかれなきゃいいだけだべ。」


「でもよ、不思議なんだよな?」


「何がです?」


「奴らと戦って怪我人は出ても死者は出ないんだよ、ほとんど気絶させられてるし。」


「相手が手加減してるってことですか…?」


「かもしれんな、だから俺はあまり奴らに怒りはないんだ、村長達は村の野菜を盗まれてキレてるがな。」


「そうなんですか?」


「ふーん。」


『半人達が現れたぞ!!』


すると次々に警備をしていた村人達の叫び声が聞こえた!


「あっちだ!」


「行くぞ!ムーン!」


「私はここでスタンバイしてますね…」


「あのなぁ?」


「わっ!」


「いいから、来るべ!」


「いっいやだぁ〜!」


駄々こねるムーンを連れて現場に着くと、倒されて気絶する村人達があちらこちらに転がっていて、そして畑から野菜を盗む半人の子供達の姿があった。


「ひぃっ!この子達が例の半人か!」


「そうだ!あいつらだ!」

「皆、やられちまっただ!」


「すまん、俺もだ…グエッ。」


さっき話してたムキムキおじさんも倒されていた。


「後はオラに任せて、倒された村人達の手当てをしてやれ!」


「わかっただ!」

「あとは頼んだぞ!」


「ムーン!おまえは回復ぐらいなら出来るんだよな?村人達の治療の手伝いをしてやれ!」


「はっはい!わかりました!」

(よかった、ここから離れられる…)


ムーンと村人達は怪我人を連れてその場を退散した。


「やい、畑泥棒共!悪いことしたら駄目だって、親に習わなかったのか!」


«くっ…»


「怒ったのか?だったらかかってくるべ!」


«このっ!»


挑発に乗って、半人の子供達が一斉に襲いかかってきた!


「遅いぞ!」


「いたっ!」

「いてぇ!」


ヨーコは全ての攻撃を躱し、一人ずつゲンコツしていった。


「お仕置きだべ!」


「うぐぐ、こいつ強いよ?」

「うん、とてもボク達じゃ敵わないぞ?」


「どうだ参ったか?参ったなら、畑から野菜を盗むのをやめて、大人しく…」


『皆!』


すると半人の子供達の前に犬耳と尻尾がある美少女が駆けつけた!


«お姉ちゃん!»


「大丈夫だった?」


«うん…»


「あなた!よくも皆を泣かせたわね、ただじゃおかない!」


「犬耳の少女、おめえさんがこの畑泥棒達の親玉だな?」


「ガルルッ!話す必要はない!」


鋭い牙を出し怒る犬耳の半人の少女は地面に手を着いて、四足歩行で向かってきた!


「望むところだべ!」



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