第44話 ドラゴン娘、領主の頼みを聞く。
俺らがソファーに座ると飲み物は何かと聞いてきて、俺とアンナは紅茶、ヨーコとアリアは林檎ジュースを頼み、領主と話し始めた。
「君達、姉妹とリュウカ君、今日来てもらったのはほかでもない。アルドの薬屋の一件での感謝とお詫びを伝えるためだ。」
「そっそんなお詫びだなんて!」
「いや、領主である我が部下に任せっきりで町をちゃんと隅々まで把握出来ていなかったから、アルドの悪事に気づけなかったのだ。領主として恥ずかしい限りだ。アンナ君、アリア君、申し訳ない。」
「あっ頭を上げてください!」
「そっそうです!」
「だが君達の両親はアルドに…」
「それはアルドの薬屋が悪いんです!領主様のせいだなんてこれっぽっちも思ってません!」
「私もお姉ちゃんと同じ気持ちです!」
「そうか…」
「よかったですわね…お父様。」
「ウム…君達のように悲しい思いをさせないように尽力すると、ミール・クラウン、誓おう。」
«よろしくお願いします。»
「そしてそのアルドが雇った殺し屋を倒し、さらに悪事を暴き町の治安を守ってくれたリュウカ君。君には心から感謝をしたい、ありがとう。」
「そんな!俺もお礼はいりません!俺はただ友達のアリアとアンナを苦しめたあのアルドのクズ親子が許せなかっただけですから。」
「リュウカ…」
「リュウカお姉さん…」
「見た目だけでなく。メグから聞いていた通りの清く正義感の強い素晴らしい人柄のようだ。」
「でしょう。お父様。リュウカ様は姿も美しくて心も美しい方なんです。」
「そっそんな…」
「わかりやすく褒められて照れてるべ。」
「君達のような者達に会えて実にいい気分だ。夕方に君達のために心ばかりのディナーを用意するつもりだ。それまでゆっくりとくつろいでくれたまえ。」
「私達みたいな庶民のためにそこまでして頂かなくても…?」
「おいおい、せっかくの領主様のご厚意だぞ?断ったら失礼だべ?」
「そっそれもそうよね…わかりました…ご厚意に感謝致します…」
「そうか、料理人達に腕によりをかけて作らせるから楽しみにしててくれたまえ。」
「楽しみだべ。」
「ヨーコ、豪華な食事が食べたかっただけだろう?」
「バレたか。」
「全くあんたって人は…」
「ハハハッ。ではディナーの時間までメグ、客人達をもてなして上げなさい。」
「そのつもりですわ。皆さん。ワタクシのお部屋に行きましょう。」
«はっはい!»
「お嬢様のお部屋か、面白そうだな。」
「ああ。」
「すまないが、リュウカ君だけは残ってもらえるかな?」
「ほえっ?どうしてですか?」
「少し話がしたい事があるんだ。」
「わかりました…?」
「え〜!リュウカお姉様が来ないなら私も残りますわ〜!」
「二人だけで話したいんだ。話が終わったらすぐにお部屋に向かわせるから。」
「はーい…」
リュウカを残して部屋を出た。
「それでお話しとは何ですか…?メグ…いや、あなたの娘さんや俺の連れを追い出すなんて、余程な話ですよね…?」
「君の噂が本当ならばその実力を見込んである仕事をお願いしたいんだ。」
「ある仕事のお願いですか…?」
「実はついさっきこんな手紙が送られてきたのだ。」
「手紙ですか…?」
"領主、クラウン男爵殿。日付が変わるまでにあなたのお屋敷の家宝、美人の涙を頂く。ビューティ・スターより"
「これって泥棒からの予告状ですか…?」
「そうなのだよ、まさか我が家宝が狙われるとは…」
「家宝の美人の涙って…?」
「先祖代々で受け継いできたダイアだよ。」
「この差し出し人のビューティ・スターって…?」
「聞いた話によると、我が町、トーチのあるホッカ王国の領土でここ最近、暗躍している泥棒三姉妹らしい。」
「泥棒三姉妹ですか…」
(はははっ…どっかの漫画のキャラみたいだ…)
「だが、分かっているのはそれだけ、素顔も年齢も謎だ。」
「なぜですか?」
「どうやら変装が得意らしい、声も真似出来て、大人にも子供にもなれるらしい。」
「すっすごいですね?大人にも子供にもなれるなんて?」
「君達のような客人は大歓迎なんだが、泥棒は歓迎出来んよ。」
「この事をほかの人には話したんですか…?」
「誰にも話していない。我が屋敷が泥棒に狙われてると知られたら、ここで働く使用人や町の者達を不安にさせるだけだ、それにあんなに娘が楽しそうにしているからな、言えなかった。」
「そうですか…」
(確かにメグがあんなに楽しそうだもんな…親としてはそう考えて当然か…)
「そこでだ!リュウカ君!泥棒から我が屋敷の家宝を守ってもらいたいのだ!」
「俺が泥棒から家宝を守る…」
「聞く所によると君は強いだけでなく勘も鋭いらしいじゃないか!アルドの悪事を暴いた君だ!これほど頼りになりそうな人物はそうはいないのだよ!お願いだ!報酬は望む額をいくらでも払う!」
「スゥゥ、ハァ。わかりました。引き受けましょう。」
「おぉ!そうか!」
「ただし報酬はいりません。」
「それはなぜだ?」
「俺は仕事して引き受けたんじゃありません。メグって友達の家の家宝を守るためにやろうと思っただけです。」
「つまり友達のためにと?」
「そうです。」
「ありがとう。君は本当に素晴らしい子だ。」
「いやいや。それでその狙われている家宝はどこに?」
「ディナー会場にするつもりの広間に置いてある女神の銅像の首にかけてあるんだ。」
「そんな大っぴらにしてたら簡単に盗まれるんじゃ…?」
「いちよう柵で囲ってあって、防犯装置として銅像に身内以外の者が至近離まで近づいたら催眠ガスが噴射される仕組みはされている、ホールには警備を数人配備しているし。」
「ちゃんとしてるんですね?それだったら盗まれる心配はないんじゃ…?」
「まぁ。そうなんだが。備えあれば憂いなしというだろう?」
「ですね。相手は泥棒だし。油断はしない方がいいか。」
「すでに泥棒が屋敷に侵入している可能性もある。君の鋭い勘と強さで泥棒から家宝を守ってくれ。」
「わかりました。期待に応えてみせます。」
「頼んだぞ。」
「はい。」
するとその様子を天井の隙間から覗いている人物が居た。
「フフフッ。計画通りね。後は私が変装して"あの子"と入れ替わるだけ。リア、ミア。そっちもしっかりね。」
《了解よ。お姉様。》
《はーい。頑張る。》
トランシーバーで連絡を取ると移動した。
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