第43話 ドラゴン娘、初の領主に会う。
そして領主のお屋敷に行く当日の日、俺らは約束の時間より早く店の扉の前で待っていた。アリアとヨーコは俺が買ってあげたドレスを着て、俺は自分で選んだ赤のドレス、でもアンナはなぜか首にネクタイを結び黒のビジネススーツを着て、手土産だろうか紙袋を持っていた。
「何でアンナだけスーツなんだ?」
「領主様に会うんだから、店の主として、しっかりした格好するのは当然でしょう?」
「相変わらず真面目だな。」
「悪い?」
「いいや。俺のあげたイヤリングは付けてくれたみたいだし。」
「せっかく買ってもらったものだし…付けなきゃもったいないと思ったから…」
「似合ってる。」
「そんなはっきりと言わないでよ…」
«むぐぐぅ。»
アリアとヨーコが頬を膨らませて俺に迫ってきた。
「どうしたんだよ…?」
「私には何か言う事ないの!」
「オラだって!」
「二人もドレス似合ってる…」
«えへへ。»
望んだ答えが聞けたのか嬉しかったのか、二人はすぐに緩んだ顔になった。
「でも一番綺麗なのはリュウカお姉さんだと思う。」
「オラもそう思うぞ。」
「あんた容姿だけはいいものね?」
「ムフンッ。当然だな。」
「否定しない所があんたらしいわ。」
「おっ。どうやら迎えが来たみたいだぞ。」
二台の馬車が店先の前で停まると、先頭の馬車からメグが降りてきて、軽く挨拶した。
「皆さん。ご機嫌よう。お迎えに上がりましたわ。」
«ごっご機嫌よう…»
「おはよう。」
「ウッス。」
「ちょっとあんた達ってば!」
「フフッ。お気になさらないでください。」
「そうですか…?」
「それでは参りましょうか。」
「皆様、馬車の中へどうぞ。」
老人の執事が案内した。
「こんな高そうな馬車に乗るのオラ、初めてだべ。」
「私もだよ、緊張するな…」
「私はリュウカとヨーコが何か粗相しないかの方が心配だわ…」
「心配しすぎだって。」
「あっ!リュウカ様はワタクシのいる馬車に来てください!」
「なっ何で…?」
「もう♡わかってますくせに♡」
俺は言われるがままに馬車に乗ると、メグが隣に座り腕を組んできた。
「幸せですわ♡」
「あの…近くないか?」
「そんなことありませんよ♡馬車の中が狭いからそう感じるだけですわ♡」
「いやいや、腕組んできてるよな…?ねっ執事さん?」
「私、歳のせいか最近、目が悪うございまして。」
「あんたもグルなんかい、まぁいいけどさ…」
「ありがとうございます♡」
普段、アリアに腕を組まれてる俺が何を今さら緊張してんだって話だけど。この子、前にハグされた時にも思ったが胸が大きいんだ。いくら今は女だからって前世が思春期の男子だった俺には刺激が強すぎる。早く領主の家に着いてくれ〜!
‐もう一台の馬車では‐
「リュウカお姉さん、どうしてるんだろう…」
「あのお嬢様、すごく大胆だからな。今頃腕でも組まれて甘えられてるんじゃないか?」
「ありえるかも…」
「気持ちはわかるぞ。リュウカを取られた気分だよな。」
「うん…」
「アンナはどうだ?」
「ちょっと話しかけないで…領主様に会う、シュミレーションしてんだから…」
「おめえさんの姉ちゃんはそれどころじゃないくらい緊張してるみたいだな。」
「そうみたいだね…」
「まずは挨拶して…それから…」
それから数分後、お屋敷の門に到着した。
「すっすげえ…ここから見ても敷地は広いし…建物がでかい…マジで豪邸だな…?」
「それほどでもありませんよ。家より大きい貴族のお屋敷はいくらでもありますから。」
「はっはは…庶民の俺らからしたら十分、大きいって…」
(きっとアンナとアリアは俺以上に思ってるんだろうな…)
その読みはピタリと当たっていた。
「わっ私達、庶民が本当に入っていいのかな…?」
「ほっ本当よね、心拍数が上がってきたわ…」
「ふわぁぁ。あれが領主のお屋敷か。でけえな。」
「あんたの神経の図太さが羨ましいわ…」
二人の門番が門を開くと馬車は広い庭を通り、お屋敷の玄関前に停まって全員が降りると、メイド達がお出迎えしてくれた。
«お帰りなさいませ。お嬢様。»
「お出迎えご苦労様。」
「うおお。本物のメイドだ。」
「何でテンション上がってるんだ?」
「あっいや、気にしないでくれ。」
「さぁ皆さん。遠慮せずにお入りになって。」
お屋敷の中に入ると少し廊下を歩き、領主がいる執務室の扉の前に着いた。
「いよいよか…」
「リュウカ、ヨーコ、絶対に粗相しないでね…?」
「しないって。」
「オラだってわきまえてる。」
「本当でしょうね…?」
「お父様。リュウカ様達をお連れしましたわ。」
「そうか。来たか。入れていいぞ。」
扉が開くと、流石は貴族のお屋敷の執務室。広い上に豪華すぎる。ちょっとだけど俺も身が縮む思いがした。やっぱり俺は根っからの庶民ってわけだ。
「やぁ。君達、よく来てくれたな。」
わざわざ椅子から立ち上がりそばにやって来て笑顔を見せた、この爽やかで気さくな男がメグのお父さんでトーチの町の領主、ミール・クラウンって人みたいだ。
「はっ初めてお目にかかります!私、町でポーション屋を経営しています!アンナ・ホワイトでございます!」
「わっ私はその妹のアリアです!」
「君達がホワイトのポーション屋の姉妹か。」
「今日は私達のような庶民をお屋敷にご招待頂きましてありがとうございます!」
「ありがとうございます!」
「ハハハッ。そうかしこまらなくていい。」
どうやら領主は怖い人じゃなさそうだ。優しそうな大人って感じのオーラが出てる。
「それで君が例の半人の少女、リュウカ君だね?」
「はっはい…?そうですけど…?」
「フムフム。」
「なっ何ですか…?」
「確かにメグの言う通り、絶世の美少女のようだ。」
「どっどうも…?」
「ハハハッ。すまない。娘がリュウカ君は絶世の美少女だと言ってたからね、つい。」
「そっそうですか…」
(何かそんな感じじゃなかった気がするような…?)
「もう〜お父様ったら!恥ずかしいこと言わないでください!」
「いいじゃないか。もう一人の君は冒険者のヨーコ君で会ってるかな?」
「ウッス。合ってるべ。」
「こら!ヨーコ!敬語を使いなさい!」
「構わないよ。立ち話もあれだ。皆、ソファーに座りたまえ。」
「そうですわ。座ってください。」
«はっはい!»
「その前にお渡ししたいものがあるのですが!」
「これは?」
「私が作った中級ポーションの厳選したものをセットにしたものです!」
「おぉ。それは嬉しいな。君は腕のいいポーション職人らしいじゃないか。ありがたく使わせて頂こう。」
「よかったです…」
「喜んでもらえたみたいだね…」
「アハハハッ。本当に姉妹そっくりだよな。」
「ああ、そうだな…?」
(気のせいだったのか…)
俺らはソファーに座った。
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