【新人】ダンジョン配信者【情報】
「ダンジョン配信、ですか……?」
「そうだよ。いま世界では、ダンジョンでの様子を配信するのが普通なんだ」
俺が考えた案は単純明快だった。
ダンジョンに挑むのなら、その様子を配信してしまえば一石二鳥、ということ。上手くバズらせれば、収益化も問題なくできるはずだった。
基本的な機材を揃えるくらいなら、大学時代のバイトの積み立てを崩せばいい。
あとは、自分たちをどう売り出すかという話だが……。
「…………うーん……?」
「どうなさいました? エイト様」
なにかが、引っかかる。
撮影はラストに任せるとして、前衛は俺でいいだろう。
しかし何か問題があると、俺の直感がそのように告げていた。それこそ、重大な見落としをしているような。だが、
「まぁ、何とかなるだろう!」
きっと考え過ぎだろう。
そう思い直して、俺は準備を始めるのだった。
◆
『なんか、新しいダンジョン配信者がでてきたらしい』
『でてきたというか、ビッグマウスで有名になってる奴がいるな』
『SSSランク全ダンジョンの踏破を目指すー……って奴?』
――エイトが配信準備を始め、公式アカウントを作成した頃。
某掲示板の『ダンジョン配信者スレ』では、そんな話題が小さく取り上げられていた。それというのもエイトがSNSの『Z』で投稿した内容が、物議を醸しているのである。何故なら、
『SSSランクダンジョンなんて、一つでも最奥に到着した報告がないんだぞ』
『それな、無謀を通り越して笑える……というか』
『自己責任とはいえ、少しサムいよな』
SSSランクダンジョン最奥は前人未踏。
そこに何があるのかさえ、知る者はいない場所だったからだ。
『それ以前に、ボストンのアレとかどうすんの。国が管轄してるけど』
『あと国自体に入れない場所もなかった?』
『無理ゲーすぎる』
そして下手をすれば、国際問題に繋がりかねない。
エイトたちの行動は話題になっているというよりも、どちらかといえば悪目立ちをしている様子ではあった。それでも懐疑的な意見が多い中で、一部には期待するようなものも散見されていて……。
『俺は面白そうだって思うけどな』
『そうそう、ジャンルの活性化になると思うし』
『最近マンネリだったから、ちょうどいいよ』
もっとも、それらも物珍しさに、という感じだったが。
とにもかくにも、普通の配信者よりもデビュー前の雰囲気は完成していた。これなら、どう転んでもネタにはなるだろう。
誰もがそう考えた。
しかし、一人として考えなかったのだ。
まさか二人が、あのような事態を引き起こすなど……。
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