【新人】ダンジョン配信者【情報】






「ダンジョン配信、ですか……?」

「そうだよ。いま世界では、ダンジョンでの様子を配信するのが普通なんだ」



 俺が考えた案は単純明快だった。

 ダンジョンに挑むのなら、その様子を配信してしまえば一石二鳥、ということ。上手くバズらせれば、収益化も問題なくできるはずだった。

 基本的な機材を揃えるくらいなら、大学時代のバイトの積み立てを崩せばいい。

 あとは、自分たちをどう売り出すかという話だが……。



「…………うーん……?」

「どうなさいました? エイト様」



 なにかが、引っかかる。

 撮影はラストに任せるとして、前衛は俺でいいだろう。

 しかし何か問題があると、俺の直感がそのように告げていた。それこそ、重大な見落としをしているような。だが、



「まぁ、何とかなるだろう!」



 きっと考え過ぎだろう。

 そう思い直して、俺は準備を始めるのだった。







『なんか、新しいダンジョン配信者がでてきたらしい』

『でてきたというか、ビッグマウスで有名になってる奴がいるな』

『SSSランク全ダンジョンの踏破を目指すー……って奴?』



 ――エイトが配信準備を始め、公式アカウントを作成した頃。

 某掲示板の『ダンジョン配信者スレ』では、そんな話題が小さく取り上げられていた。それというのもエイトがSNSの『Z』で投稿した内容が、物議を醸しているのである。何故なら、



『SSSランクダンジョンなんて、一つでも最奥に到着した報告がないんだぞ』

『それな、無謀を通り越して笑える……というか』

『自己責任とはいえ、少しサムいよな』



 SSSランクダンジョン最奥は前人未踏。

 そこに何があるのかさえ、知る者はいない場所だったからだ。



『それ以前に、ボストンのアレとかどうすんの。国が管轄してるけど』

『あと国自体に入れない場所もなかった?』

『無理ゲーすぎる』



 そして下手をすれば、国際問題に繋がりかねない。

 エイトたちの行動は話題になっているというよりも、どちらかといえば悪目立ちをしている様子ではあった。それでも懐疑的な意見が多い中で、一部には期待するようなものも散見されていて……。



『俺は面白そうだって思うけどな』

『そうそう、ジャンルの活性化になると思うし』

『最近マンネリだったから、ちょうどいいよ』



 もっとも、それらも物珍しさに、という感じだったが。

 とにもかくにも、普通の配信者よりもデビュー前の雰囲気は完成していた。これなら、どう転んでもネタにはなるだろう。

 誰もがそう考えた。



 しかし、一人として考えなかったのだ。

 まさか二人が、あのような事態を引き起こすなど……。



 

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