第5章 キャストスタッフを蔑ろにするプロデューサー
Nとは、これまで舞台イベントやお笑いイベントなど、幾度か続けて仕事を一緒にしてきました。ただ、回を重ねるごとに、Nの横暴な態度があからさまになりました。
第4章で書いたように、「こっちが金を払って、お前を使ってやってるんだ」と、常に上から目線なN。また、出演者や事務所側からギャラ交渉の話が来ると「そんな話をするほどの実力がお前にはまだない」と怒鳴りつけることも、日常茶飯事。
そもそもプロデューサー側が金を払う立場とはいえ、舞台公演にせよイベントやライブにせよ、出演者が揃わなければ形にすることはできません。
「お金ないから」と言って、出演者の予算を削り、何とか無理やり交渉して安いギャラで出演者を起用したり、あるいはノーギャラで出演するキャストもいました。
あるお笑いイベントの間に、少し休憩をはさむミニタイムを設け、ある楽器奏者をキャスティングしました。その方は当然、イベント出演のために練習を重ね、当日も幕裏でスタンバイをしていました。にもかかわらず、当日になって「この空気に楽器は合わない」と、土壇場で判断したN。結果、その楽器奏者の方は一切出番がなく、ただ裏方の無償スタッフとして使われて終わってしまいました。当然出演していないので、ギャラも出ません。
酷い話だと、今になっても思います。
かく言う私も、呆れる事件がありました。舞台脚本を担当したとき、Nから何度も指摘を受け、結果第十一稿まで書き直しを行いました。OKが出たものの、出演者が揃うのは当日のリハまでなく、それぞれに練習をしてくる状況でした。セリフの掛け合いもロクに練習する間もなく、本番当日を迎えました。
当然、リハの段階でグダグダになり、Nは判断します。
「軸はナレーションで軌道修正して、あとはアドリブでやろう」
私には意味が分かりませんでした。十一回も脚本を直させた挙句、アドリブにしようと言い出したN。しかも私は、受付スタッフとして現場にいなかったため、本番終了後に出演者経由でこの事実を知らされました。本来、こういう変更は助監督やアシスタントプロデューサーが伝えるべきだとは思いますが、この時にはそういう制作スタッフもいない現場だったので、結局本番終了後に知らされることになりました。
また、Nは出演を兼ねていたので、何かあるたびに「今日、私は出演者だから」と言って、プロデューサーとしての業務を遂行していませんでした。
当日の現場で、こういうことが平気でできてしまうN。「金を払っているのだから言うことを聞け」というスタイルなので、キャストやスタッフへのリスペクトなんぞ、微塵も感じられません。
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