第27話 暴走と家庭崩壊

 今回は心霊ではなく大体愚痴回です。

 飛ばしちゃっても大丈夫です。

 結論だけ言うと、父親が元旦にほぼ孤独死しました。

(事故物件にはならなかったみたい)

 まあ……あの例の金縛りの気持ち悪い女の影響を感じなくも無い。という感じのお話です。


 次回は死んだ父親の回だな、と思っておいて下さればOKです。




 さてさて。いかにして父は独りで死んだのか。


 父は次女を溺愛しておりました。

 顔も性格も亡き母……(私にとっての祖母ですね)に良く似ており、美人ですが恐ろしく気が強い次女に対して、

「この子の味方になってやれるのは俺しか居ない」

と言っていたのを覚えています。

 ちなみに長女である私の評価は、

「ヨリは見た目もそこそこだし正確も穏やかだからほっといても貰い手があるだろう」

みたいな感じでした。

 一見褒めている様に聞こえますが、平たく言うと私には全く興味が無くて、いつも妹の事を心配して可愛がっていました。

 まあ良くある話ですが、姉妹で割と扱いが違ったのです。


 父は元々自営業を営んでおりまして、妹夫婦と弟を巻き込み、事業を展開しようと画策したらしいのです。

 ちなみに私は結婚して家を出ておりましたから、その辺の話は詳しく知りません。


 なので結果しかご説明できませんが、さらっと書くと、


 ●弟が何故か家を追い出された。

 ●父と妹夫婦で事業を巡って争いが起こり、弁護士さん挟まないと会話もできない状態に。

 ●母が父に愛想を尽かして出ていく→父がロミ夫(※)化。

(※「ロミ夫」は別れた彼女や愛想を尽かして出ていった妻に未練タラタラの変なメールを送ってくる男性の俗語)


 そんな感じの良くあるお家騒動が起きた様です。

「なんだ心霊現象じゃ無いじゃん!」

 と言われるとまあそうなんですが、父親の奇行がございまして。


 えっとですね。AVのストリーミングを見てたんです。


「……そんなん誰でも見るだろ!」


 わかりますみますよね大多数の男性は見ますし爺さんが見ててもおかしくないし何なら女の人も全然見ますね。わかる。


 まあアレです、昔から暇さえあれば書斎に篭って見てて慌てて消したりしてたんですよ。それくらいなら「しょうがねえエロジジイだな」で済むじゃないですか。

 家でなら全然良いんですよ。


 見てた場所、取引先での商談の最中。


 ……いやおかしいでしょ?と。

 妹の旦那さんと弟激怒。

「何やってんだ!?」

 父、それに対して何故かブチ切れ。

「弟は甘ったれてる」

 と言って追い出し、妹の旦那さんに対しては、

「あの男はヤクザだ!」

 と言って、妹夫婦ごと追い出し弁護士を付け、それかはらもうめちゃくちゃ。


 そして母に対しては、

「女は家具だろ?」

ととんでもないモラハラ発言を繰り出し、愛想をつかされ出て行かれるという……

 ちなみに「女は家具」というのは、生前の祖母が恐らく「家を守らなくては」という責任感で言っていた言葉でして、父はアホ子のなのでそれを言葉通りに受け取っていた様です……

(「お客様は神様だろ」と言うお客さんみたいな感じですかね)


 さてさてさて。

 ここまで読んでどう思われましたか?

 正直モラハラ夫が歳をとって悪化しておかしくなった感じですよね。または単に痴呆気味だったのか。ちなみに父はその頃七十前後。

 あるあるそういう事。

 しかしながらですね。


 私の父母、父がモラハラ気味でサイコパス気質だったにも関わらず、別居する少し前まではものすごく仲が良かったのです。

(母が「引っ張ってくれる人が好き!」なタイプであり、父が正直美形だった為)

 それが、ジェットコースターの如く離婚前提の別居。

(なお、この件に善意で口を出した人が宗教関係の方が三人、その年のうちにお引き上げに遭われて亡くなりました。第18話参照。三人亡くなった翌年の元旦に父も死にました)


 先述しましたが、父は妹だけは溺愛しておりました。それこそ目に入れても痛くない程でした。それが、絶縁。

 死後弁護士から送られてきた書状には、

「あの夫婦の会社には一切の権利を渡すな」

と書いてありました。


 そして、ほんの数年前までは表面上まともであった父は、完全に訳の分からない人になってしまった様でした。

 様でした、と言うのも、亡くなるまで二年くらい会っておりませんで、母や弟妹から愚痴の電話を聴きながら、

「こりゃ将来は私が介護するしか無いかもな……」

等と思っていたら突然訃報があった、という感じだったのです。自宅での急死でした。


 元旦に亡くなって二日には親戚が見つけました。

 病死で、すぐに見つかり、救急車を呼んで何やかんやしたのもあり、事故物件にはならなかったそうです。


 ここまで自分で読み返して、「お化け要素は?」と聞かれると、「すんません無いっすね……」となってしまいます。


 宗教的に言うと父も、

「最早手に負えないし使い物にならないので引き上げられた」

という訳ですが、まあ客観的に見れば偶然元旦に急死したのかも知れない。

 

 強いて言うなら、こんな話がありました。

 私が母に、

「あの家絶対ヤバい女が居たよ。お姫様とかじゃなくて、もっと肉感的で、いやらしい感じの人だよ……なんていうか、ベタっとした雰囲気の……」

という話をしたのです。そうしたら母は首を傾げて、

「えーそんな事ないよ、だってあのお家、元々お琴の先生が住んでたって聞いてるよ?」

との事。

 ああ、なるほど。

 そうか、母は元々この辺の人じゃないし、専業主婦を長くやってたから、地域的な特性とか、歴史的な変遷は知らないのか……と思いました。

「……ママ、それたぶん元々お妾さんじゃないかな……」

 そうなのです。その地域、二昔くらい前は所謂お妾街で、囲われた愛人さんや芸者さんが、住まいを与えられて沢山住んでいたのです。

 なんで母が知らなくて私が知っているのかと言うと、その時の職場の同僚が民生委員や自治会長まで務めたという女性で、そういう地域の事情にとても詳しかったのです。

 やはり芸者さんとかですと、自宅でお琴や三味線を教えて居た人も多い。

 床の間が二つもある豪奢な家。

 一つは舟底天井の、恐ろしく凝った作りの和室。

 一見無駄な設備ですが、お教室をしていたと思うと合点がいきます。

 勿論、その辺の全てのお教室がそう、という訳ではありませんが、その家に関しては何となくしっくり来てしまいました。

 

 と言うのも、父の生家は当時日本でも有数の大きな料亭で、芸者さんも沢山出入りしており、やはり囲われる様な人も多かったそうで。

 料亭を経営していた曽祖父なんかは、愛人さんが十五人も居た、なんて話もあります。

 やはり当時ですと、一人一軒家を買い与えたので、莫大なお金が動いていたそうです。


 なんでおかしくなったのが父だったのか。

「気に入られてしまった」

「そういう家の生まれなので、波長が合ってしまった」

「彼女は父を独り占めしたかった?」

 そういう風に解釈すると、確証はなくても何となくしっくりきてしまう。

 何せ、父はモラハラサイコパス野郎でしたが、昭和の美形でございました。

 ボーイスカウトに所属していた頃は、ポスターに起用されたという話もあります。


 性が暴走した父と、囲われていたであろうお妾さん。

 父が言っていた、

「この家にはお姫様が居る」

という言葉。


 結果的に、神様としても「この男はこれ以上何をしてもダメだな」という事で「引き上げられてしまった」



 ここまで書いてみましたが、特にお妾さんのくだりは私の妄想であり、勝手な解釈です。

 善良な方が家を建てて自宅で琴を教えていただけかも知れませんし、例の気持ち悪い女のお化けは通りすがりのものが住み着いたのかも知れません。

 父は単に性格が悪いのが悪化しただけかも知れません。

 

 うーんオチとしては弱いかしら。

 すいませんね本当に。

 ここまで読んでくださってありがとうございます。


 次回は、死んだ父が色々やらかした話です。

 今度こそお化け(父)がでてきますので、どうかご勘弁くださいね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る