第16話 夢の実害

 結婚前は定期的に顔がぐちゃぐちゃに崩れた女に追いかけられる夢を見たものです。

 でもそんなもんは所詮ただの怖い夢だし書いても面白く無いので、実害があったものをまとめて書いておこうかと思います。


 ●刺された夢

 日本家屋の様な場所、枯山水の様な白い砂利が敷いてありました。そこに立っていると、白い着物に袴を履いた、十才くらいの男の子とも女の子ともつかない子が走ってきて、脇差か小刀のようなもので脇腹を刺されました。

 にやりと笑うおかっぱの子供。

 先ず感じるのは刃の冷たさで、その後そこが熱くなり、痛みを感じます。


 そこで目覚めました。

 起きて、刺された所の痛みに顔を顰めました。

 刺された痛みとは違いますが、何か引きつった様な痛みが、そこに残っていました。



 ●追いかけられて捕まった夢

 暗い廃ビルの様な建物の中、足を引き摺った男性に追いかけられていました。

 地下まで逃げて、袋小路となり、追い詰められ覆い被さるような形で捕まりました。


 そこで目覚めました。

 右の足が痛い。

 つったと言うより捻挫したみたいな痛みです。

 何とか起き上がり、足を引きずり、歩きだしました。結局痛くなくなるまで一週間くらいかかりました。

 追いかけられる夢というのは疲れている時良く見ますが、捕まったのはこの時だけの様な気がします。



 ●女の子に問いかけられる夢

 青空、空中に立つように、小さな女の子と対峙していました。

 やはり十歳くらい、防災頭巾を被り、白いシャツにもんぺを履いていました。顔は見えませんでした。

 女の子は言います。

「××ちゃんの事嫌いでしょう?」

 ××ちゃんと言うのは中学の部活の後輩で、敬語を使えない、使う気もないというちょっと癖のある子でした。

 正直確かに嫌いでしたが、ここで「嫌い」といったらまずいな、というのは何となく分かります。

 なんというか、相手は「嫌い」と言って欲しそうなのです。

「嫌いじゃないよ」

「××ちゃんの事嫌いでしょう?」

「嫌いじゃないよ」

 この淡々とした押し問答を暫くやりました。


 そして目が覚めました。

 その女の子が見下ろしていました。

 やはり顔は分かりませんでした。

 当たり前のように身体は金縛り。

 そのまましばらく見下ろされていましたが、そのうち私が意識を失った様です。


 朝になり、全く疲れの取れない身体に溜息をつきました。ただの金縛り、されど金縛り。この頃はまだ不眠症ではなく、金縛りにも慣れていなくて、一日ぐったり疲れていた覚えがあります。



 さて、防災頭巾の女の子の件は除くとして、「痛み」の出る夢に対して疑問があります。

 それは「痛みが先か、夢が先か」という事です。

 自分の中の時系列で行くと、

「夢で被害に遭って、現実にもそれを引きずった」

 と思えますが、例えば、

「寝ている最中、寝違えたか何かして痛みを感じて、それが夢に影響を及ぼした」

 とも考えられます。

 むしろそう考える方が自然な気もします。


 読んでくださった皆さん、夢の中の事象が現実に響いた事はありますか?


 しかしながら、息の詰まる現代社会、せめて寝る時くらいはゆっくりしたいものです。

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