第15話 くたびれたOLの見たもの
社会人一年目の時の話です。ほぼ愚痴です。
最初に務めた会社は激務でした。
展示会なんかがあると、十三連勤(この程度ですと連勤ガチ勢に笑われてしまうかも知れない)、何より田舎の車通勤ですから、終電の時間に帰るというのも無いわけです。
「おたくは何時に電話かけても人が居るね」
と言われていましたし、夜六時定時で、そこから「よっしゃ気合い入れていくぞー!」が当たり前です。
夜十一時過ぎまで働き、車を運転してアパートに帰り、気力があれば何か口に入れて寝て、七時には起きて、八時半前には会社。
女性の上司は端的に言うと癇癪持ちで嫌な奴でした。
(人生の嫌なババアランキングTOP3にランクインです)
そして企画でペアになった営業さんはやる気が無くて有名な部長。
そうなると、企画立案デザイン資料作り全て一人でやって、とりあえず女性の上司に見せに行ってしこたま嫌味を言われ、なんとかOKが出たら非協力的な営業部長に時間を取ってもらって……となります。
小さな会社故、それに加えて日常業務もあります。
車に乗って職人さんの所に行って、注文したものやお客様から依頼のあったものをあれやこれやする訳です。
(ちなみに職人さんの所に行くのは完全に息抜きでした。皆良い人なんです)
大体愚痴でしたねすみません。このくらいにしましょう。
そんな訳で、私はいつも疲れ果てていました。
夜、十二時前にアパートに辿り着きます。
今日も辛かった、会社辞めたい。
そう思いながら車を停めて、空を見上げました。
故郷を遠く離れたその県は田舎でしたが、それ故に景色は美しく、夜は星空も綺麗です。
雲が所々にかかった、月の明るい星空。
そこに白い小さな光がスッーと通ります。
人工衛星かなあ。
人工衛星ってオレンジ色のイメージです。
子供の頃、何かのイベントで夜に見た記憶がありました。
その光がスーッと右に真っ直ぐ進んだ後、斜め上にヒュッと進んで一度雲に消え、また別の雲から出てきて、そしてまたヒュンと斜めに移動して、薄い雲に消えました。
UFOでした。
私は疲れた頭で苦笑いして、その後ほんの少し怒りが湧いてきました。
友達と一緒だったら良かったのに。
こんなもん一人で見たって言っても、絶対誰も信じてくれない。
疲れていると心も余裕がありません。
私はちょっとイライラしながら、部屋に戻って寝ました。
という話を後日お茶をした友達にしたら、
「……何でそんなに落ち着いてんの!? もっとびっくりしなよ! だってUFOだよ!?」
と言われました。
信じてくれるのか。君はなんて良い奴なんだ。
ちなみにその会社は一年も持たずに、肩たたきにあって退社となりました。
社長から見ても、
「お前このままだと死んじまうぞ」
という風体だったそうです。
なんと会社都合で辞めさせてくれました。
辞めた後の一ヶ月分のお給料も出してくれました。
こんなに良い人なのになんであのクソババアを重用してるんだ。
そして私はすごすごと地元に戻り、今に至ります。
都会にほど近い、ベッドタウンと言うなの片田舎。
それでも夜は明るいので、もうきっとUFOは見れません。
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