第11話 ぼっちが見た火の玉
さらっと十話くらいで終わるかと思いきや、書き始めたら案外忘れていた事も思い出すものだなと思っています。もう少しお付き合いください。
小学校の修学旅行で、ナイトウォークラリーをした時の話です。
場所は日光某所。
自然豊かな場所で、水辺のほとりでした。詳細な場所は伏せさせていただきますが、今調べても心霊スポットとかでは無いようです。
ナイトウォークラリーと銘打っていましたが、実際の所肝試しです。
夜の闇の中、先生がその水辺にまつわる怖い話をして、それを皆で聞いてから、三十分程かけて歩いて宿場に戻る。
そういうレクリエーションでした。
小学校は都会から程近いベッド街でしたから、私達は自然の中の暗さというのに慣れていなくて、暗くて怖いときゃあきゃあしている子も居ました。
私と言えば、丁度その頃人生の暗黒時代でして、クラスに友達が居ない所か軽く無視されて虐められておりました。
五年生に上がった時に、仲の良い友達とクラスを離されてしまったのです。きっかけなんてそんなものです。
ぼっちの修学旅行というのはまあまあキツかったですが、何とかやり過ごしておりました。
なので、きゃあきゃあしている人達とは全く絡まず、先生の話をぼうっと聞いていました。
怖い話の内容は、
「そこに見える橋で、女の人が人生を悲観して身を投げてその後そこには夜な夜な云々」
みたいな感じでした。
一応今調べてみましたけどそんな話は出てきませんでしたので、やはりレクリエーションに向けて創作したものだったと思います。
子供達を引率していく訳ですから、やはり安全な場所なのです。
実際その場所自体そんなに怖いという感じはしなくて、ただ自然豊かな暗い場所でした。
水辺は増水対策でしょうか、少し遠くに擁壁があり、それを見上げると上には林がありました。
高いところにある林は結構広く鬱蒼としていて、私は何となくそこを見ていました。
奥に道路があるのか、たまに車のヘッドライトが通る明かりが見えます。
そこに急に火が灯りました。
オレンジ色の火の玉……遠くで大きさは分かりかねましたが、たぶん野球ボールより少し大きいくらいのものが、メラメラと明るく燃えて火を放っていました。
それがぐっと弧を描きながら右の下の方に落ち、そこからふわっと高度を上げながら更に右の方に流れて、ふと消えました。
私は、先生が皆を怖がらせる為にやってるんだと思いました。
でも生徒一同、誰も何も言いません。
怖い話も終わり、先生方が誘導しながら、水辺のほとりの暗い道を歩き始めます。
皆慣れない道が楽しいのか、怖いという感じもせずワクワクした雰囲気で歩いています。
一部の女の子は先程の先生の話できゃあきゃあしていましたが、やはり火の玉の話をしている人は居ません。
火の玉、誰も気が付いてないのかな。
私はもう一度見てみますが、高い所に真っ暗な林があるだけです。
ぼっちな私は「今火の玉見た?」と誰にも聞けず、そのまま皆に紛れて、とぼとぼと宿場に帰りました。
あれは一体何だったんだろう。
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